液化CO2船 55隻必要。30年末までに。9000万トン輸送需要創出
ノルウェーのエネルギー調査会社ライスタッド・エナジー(本社・オスロ)は2030年までに液化CO2(二酸化炭素)輸送船が55隻必要になるとの見通しを公表した。同社によると、計画中のCO2回収プロジェクトを前提とした場合、10年後に9000万トンの輸送需要が創出されるとしている。ガスの輸出入を処理するためのターミナルは48カ所が必要になる。
ライスタッドは4日、液化CO2輸送見通しについてのリポートを発表した。
世界的にCO2の削減、処理が喫緊の課題となっている。
具体的には50年のカーボンニュートラルを目指すため、「CCS(CO2回収・貯留)」や「CCUS(CO2回収・再利用・貯留)」の導入が検討されている。
工場などで排出されたCO2は分離・回収地で再利用および圧入して貯留され、陸上や洋上の適地まで船で輸送し地中へ貯留される。
海運業界では大量輸送可能な大型の液化CO2輸送船が注目されている。
ライスタッドによると、世界的にCCUS市場が拡大する中、重要な点はインフラと説明。「(課題は)プロジェクトに利用可能な輸送、貯留ネットワークの不足である」と指摘している。
その上で、30年までに330のパイプラインが稼働する予定であり、「パイプラインを通じ陸上の貯蔵場所や沿岸ターミナルに大量のCO2を輸送することが理想」とした。
液化CO2輸送は、「低コストで二酸化炭素を長距離輸送するための最も柔軟なソリューション」との見解を示している。
地域的には北海が液化CO2輸送の急増の中心的な地域になる。
ノルウェーは既に発表済みのプロジェクトなどを前提に30年までに年間2600万トンの輸送需要が発生する。「世界全体のCO2輸送量の約30%を占めることになる」。次いでオランダが年間2300万トン、英国が同2000万トンと予想する。
日本企業も参画するノルウェーのノーザンライツ・プロジェクトについては、「25年初頭には最初の液化CO2輸送、貯蔵ネットワークになる。同プロジェクトは国内輸送されたCO2と北西ヨーロッパからの輸送量をターミナルで受け入れ、その後、海底にガスを配管し貯蔵する」と説明した。
ノーザンライツは、ノルウェーのエネルギー大手エクイノール、石油・ガスメジャーの英シェル、仏トタルエナジーズの3社が出資するCCS事業会社。
同社は21年10月、液化CO2輸送船2隻を24年半ばの納期で発注。川崎汽船が長期の裸用船契約と定期用船契約を結んでいる。
これ以外でノーザンライツは1日、中国船舶集団(CSSC)傘下の大連船舶重工(DSIC)と、液化CO2輸送船1隻の建造契約を締結したと発表。同社の液化CO2輸送船発注は3隻目で、建造中の姉妹船と同じく、7500立方メートル型、LNG(液化天然ガス)燃料対応となる。
ライスタッドは液化CO2輸送船の他の地域の需要としては、太平洋地域では豪州について言及。「国内プロジェクトや日本を含む近隣アジア太平洋諸国からCO2を輸送、貯蔵する世界市場の重要なプレーヤーになる」と指摘した。
引用至《日本海事報》2023年09月07日 デイリー版1面
液化CO2船 55隻必要。30年末までに。9000万トン輸送需要創出|日本海事新聞 電子版 (jmd.co.jp)