ベソン、サービスを有機的に結合。ライリー社長、買収戦略 推進

海運会社・用船者向け運航管理システム「IMOSプラットフォーム」を提供するベソン・ノーティカル(米ボストン)は16日、東京都内で海事メディア向けに会見を開いた。ショーン・ライリー社長兼COO(最高執行責任者)は、英ベッセルズ・バリューや英シップフィックスなど4社を買収したことに触れ、「各社の製品・サービスをIMOSに有機的に結び付け、ユーザーのデータに基づく意思決定を支援する」と語った。

会見にはライリー氏のほか、チーフプロダクトオフィサーのエリック・クリストファーソン氏、チーフコマーシャルオフィサーのラス・ハバード氏が出席。日本拠点の光田時雄氏、萩原芳廣氏も同席した。

ライリー氏は同社が開発・提供する運航管理システムについて、「年間1220億ドル、年60億トンの貨物取引をサポートしている」と説明。「海上商取引を推進する標準プラットフォームの提供を目指している」と同社のビジョンを紹介した。

同社の運航管理システムは、世界中の海運会社や荷主に広く利用されている。日本の主要な海運会社も導入している。ベソンは顧客ニーズに対応し、継続的に機能の拡充を図っている。

ベソンはサービスメニューのさらなる充実を図るため、ここ数年でベッセルズ・バリューやシップフィックス、ノルウェーのオーシャンボルト、米国のQ88の買収を決めた。

デジタル化や脱炭素化などを受け、海運業界は変革期にある。ハバード氏はオイルメジャーなどが船舶からのGHG(温室効果ガス)排出量を報告する仕組みの標準化を進めている事例を紹介し、「コラボレーションと標準化の重要性が増している」と指摘した。

EU―ETS(欧州連合の排出量取引制度)など新たな規制への対応に関して、クリストファーソン氏は「顧客とワーキンググループを設置し対応を検討している。ソリューションは開発後も使いながら改善を重ねる手法で対応している」と述べた。

 

引用至《日本海事報》2024年05月17日デイリー版1面

【人手不足 陸・海・空 荒波の先】 (4)造船の協力会社も危機。構造改革に翻弄

「まず耳を疑った。鋼材価格などは上がっているものの、造船会社は足元で上昇した船価で受注しているほか、円安効果も続いている。まさか建造を止めるとは思わなかった」

元請け造船所の協力会社で構成される造船協力事業者団体、住友重機械造船協同組合の河西良二理事相談役は、今年2月の住友重機械工業グループの新造船事業からの撤退発表を聞いた際の気持ちをこう語る。

造船会社は、自社の従業員だけで船舶を建造するわけではない。協力会社に多くの業務を委託することで、作業を効率化し、コスト競争力強化につなげている。

協力会社のうち構内下請けは、造船所構内に常駐し加工・組み立てや艤装などの業務を担う。足場架設、溶接、鋼板組み立て、塗装、配管工事、電気工事、装置・機器据え付け、保温工事、内装工事など仕事は多岐にわたる。造船の現場で働く人員の比率は、およそ造船会社の技能工が3に対し協力会社は7に達する。

この構内下請けのほか、自社工場で船体ブロック、舵や軸のパーツ、艤装品などを製造し造船会社に納品する構外下請けも協力会社の一種で、造船会社の業務を下支えする。

▼会員の人員2桁減

各造船協力事業者団体で構成される日本造船協力事業者団体連合会の会員は現在46団体(所属企業計1420社)で、2次、3次の下請け会社分なども含め人員は約4万人を抱える。日造協の野口雅史専務理事は「会員の所属企業人員は2019年度から23年度までに14%減少した。特に構内下請けは25%以上落ち込んだ」と説明する。

19―23年度の期間中、国内の造船会社が事業の構造改革を相次いで実施したことが造船業での協力会社の人員縮小にも大きく影響した。

旧三井造船グループは千葉工場(千葉県市原市)、玉野艦船工場(岡山県玉野市)での商船事業を休止(最終船引き渡しは千葉で21年3月、玉野では21年7月)し、国内での建造拠点をなくした。ジャパンマリンユナイテッド(JMU)は、舞鶴事業所(京都府舞鶴市)での商船建造を終了(21年5月)、修繕事業に特化させた。佐世保重工業と神田造船所(現神田ドック)の2社は新造船事業を休止(22年1月)。それぞれ修繕などに主力事業を移した。

造船会社の構造改革では、建造能力を削減する事例が多く、協力会社の仕事減少につながった。日造協の会長も務める河西氏は、「協力会社は抱えている職人に給料を払っていかなければならず、仕事が減ると、職種が重なる建設業などに移らなければならない」と業界の事情を説明する。新造船から修繕などにシフトした場合でも、「協力会社の人員が3分の1に減ったケースもある。他の造船会社の仕事と掛け持ちなどしていないとやっていけない」と語る。

▼離れたら戻らない

一回「造船」を離れた協力会社は公共工事などに参加し、なかなか戻ってこない中、足元では新造船需要が復活。河西会長は、造船会社から協力会社が人員増加要請を受けているという厳しい状況を明かす。

日造協では、人材確保対策としてPR活動など幅広い取り組みを進める。女性の活躍を紹介するパンフレット「ライフ アンド ワーク」、協力会社の職種を紹介する冊子「造船しごと紹介本」、船ができるまでのプロセスなどを分かりやすく説明するウェブ動画などを作成。日造協のホームページに掲載しているほか、冊子などを自治体、学校に配布している。

協力会社の求人活動を支援するため、自治体の協力を受けUターン・Iターン関連イベントに参加。さらに、社員が友人や知人を紹介するリファラル採用を導入する会員企業の冊子作成をサポートするほか、ポータルサイト「リクルートジャーナル」を開設している。

外国人材の受け入れも積極的に推進する。これまで大きなトラブルも発生せず、「もめたことがないと自信を持って言える」(河西会長)中、在留資格の特定技能1号は、技能実習を終えた外国人材による取得がほとんどで、いわゆる試験ルート経由は限定的となっている。この要因として、河西会長は日本語能力レベルの基準が高い点を指摘する。技能実習2号(3年)までの終了者は、特定技能1号に移行する場合、日本語能力試験が免除になっている現行の運用を新制度でも適用してほしいとの考えを示す。

▼技能工の研修必要

協力会社では、人材不足に加え、現存の人員でも造船技術を持った技能工がほとんどいないことも大きな課題の一つとなっている。初めて造船に携わる人員を多く運用しなければならず、品質や工程維持、安全面で問題が発生する可能性がある。河西会長は、その対応策として全国に6カ所開設されている「造船技能研修センター」の活用を挙げる。

同センターは1999年に因島(広島県尾道市)で設立後、04―07年度に横浜市、兵庫県相生市、愛媛県今治市、大分市、長崎市に相次いで設置された。地元の造船会社や自治体が協力し、日本中小型造船工業会や日本海事協会(NK)などの支援で運営される。一方、設立後すでに20年が経過しており、設備が老朽化。指導者や講師の高齢化による後継者不足などに直面している。河西会長はこの設備維持に向けた国の支援、協力会社技能者へのさらなる活用の重要性を強調する。

協力会社の人員確保・育成と並行して、元請けとなる造船会社の事業安定化にも気を配る。造船会社は商船の建造とともに、日本の安全保障・海上警備を支える艦艇・巡視船や官公庁船の建造も担う。この分野で、国による建造促進と安定した予算確保、物価上昇などを踏まえた適正価格での発注などに期待を寄せる。

新造船事業からの撤退を発表した住重グループは、24年以降新造船の受注をストップ。3月末時点の受注残6隻を26年1月までに全て引き渡し、その後は、洋上風力発電向けを中心とする海洋構造物と関連船舶建造などに事業をシフトする。

住友重機械造船協同組合に自身の会社が所属する河西氏は、住重グループの今回の決断について「営利企業が決めたことに対し、とやかく言うことはできない。その決定を受け入れるしかない」と語る。一方で、最終船を建造後、その次の仕事が生まれるまでのタイムラグを懸念する。「次の仕事は何になりそうで、いつから始まるのか、住重グループに示してほしいと要望している。最終船の建造が終わって事業が切り替わる際に次の仕事の開始までに時間がかかると、例えば神奈川県エリアで造船関連の仕事を掛け持ちしていない協力会社は転業せざるを得ない」

 

引用至《日本海事報》2024年05月09日デイリー版1面

自動車船社、欧州で再編の兆し。中国勢台頭 契機に

自動車船の需給逼迫(ひっぱく)が続く中で、欧州の自動車船オペレーター(運航会社)の間で再編の兆しが出てきた。イタリア船社グリマルディグループは、ノルウェー船社ホーグオートライナーズの発行済み株式の5・12%を取得した。中国勢が荷主として存在感を高め、オペとしても台頭してくると予想されることが、再編の一つの契機となる可能性がある。

自動車船事業は自動車メーカーの生産が回復し輸送需要が高まる中で、中国からの輸出が急拡大したため船腹需給がタイト化。運賃も上昇し、自動車船オペの収益も大幅に改善した。

それに伴い、自動車船オペの株価も上昇。自動車船を非中核事業とみなすデンマーク海運大手APモラー・マースクは昨年までに、保有していたホーグオートライナーズの全株式を手放した。

英ベッセルズ・バリュー(VV)は、マースクによるホーグオートライナーズ株式売却を受けてリポートを発表。その中で記録的な好業績の波に乗り、競合他社が買収に乗り出す可能性があるとの見方を示した。

VVは業容拡大の次のステージに向けて準備を進めるグリマルディを候補に挙げた。今回、その予想通りグリマルディがホーグオートライナーズの株式取得に動いた。

グリマルディの運航船隊は自動車船、RORO船、フェリーを合わせ130隻規模。サービス網は欧州域内を中心に、西アフリカ、北米・南米東岸をカバーしている。船舶投資も積極的で、9000台積み自動車船17隻の発注残がある。

中国の2023年の自動車輸出台数は前年比57%増の522万台となり、日本を抜き世界一の輸出国になった。自国の荷主の輸送ニーズに応えるため、中国船社は自動車船隊の構築を進めている。

日本の海運大手3社は世界トップクラスの自動車船隊を擁する。邦船関係者は「中国船社の台頭で船社間の競争が厳しくなるだろう」と語る。

自動車船にはコンテナ船社も関心を示している。昨年に仏CMA―CGMが参入したのに続き、最大手のMSCは自動車船18隻を保有するノルウェー船主グラム・カー・キャリアーズに対し公開買い付けを行う。

■オペの業績好調

海運会社の自動車船事業の業績は好調に推移している。商船三井は4月30日に25年3月期の業績予想を発表し、橋本剛社長は「今期は前期に続き自動車船の利益貢献度が高くなる」との見通しを示した。

自動車船の輸送台数はスエズ運河迂回(うかい)の影響で5%減の303・3万台にとどまる見通しだ。ただ、「期間契約が下支えし、配船効率を高めることで、増益を見込む」(濱崎和也専務執行役員)。

一方で、「世界的なEV(電気自動車)の販売減速による完成車海上荷動きへの影響を見極めていく必要がある」(橋本社長)。新造船の供給増加が需給緩和要因になることも懸念されている。

 

 

引用至《日本海事報》2024年05月07日デイリー版1面

IMO、複数の制度を融合へ。GHG減、技術・経済的手法

IMO(国際海事機関)で国際海運からのGHG(温室効果ガス)排出削減の技術的手法と経済的手法に関して、最終的には各国で妥結できる部分・要素を融合していくことになりそうだ。現時点では複数の制度が提案されている。MEPC81(第81回海洋環境保護委員会)では両手法で複数の制度が浮上し、各国間で燃料転換を図るため、燃料GHG強度を段階的に強化していくことにおおむね一致した。だが、「燃料製造過程の排出考慮」「課金の導入」「途上国支援の有無」などについては、国によって意見・立場が異なる。全ての国が賛同する制度が見られない中、来年中に有効な制度がまとまるか注目される。

IMOは昨年改定した「GHG削減戦略」で技術的手法と経済的手法から成る中期対策について、2025年の承認・採択、27年の発効を規定。各国はこのスケジュールに沿って、審議を進めている。

3月のMEPC81には技術的手法で欧州のGFSや、中国、ノルウェー、ブラジル、UAE(アラブ首長国連邦)、アルゼンチン、南アフリカ、ウルグアイなどによるIMSF&Fが提案された。経済的手法では、日本のフィーベートをはじめ5制度が挙がった(別表参照)。

加えて、各提案国が提案内容を反映した海洋汚染等防止条約(MARPOL条約)改正案を作成し、10月の次回会合(MEPC82)に提出することになった。

一方、「全ての国が納得・賛同している制度は現時点ではない。今後は各制度を構成する要素を精査し、合意できる部分を固めていく作業になるのではないか」

日本政府代表を務める国土交通省海事局海洋・環境政策課の塩入隆志環境渉外室長はこう予想する。

大別すると、技術的手法を構成する要素には「GFI(GHG燃料強度)の導入」「柔軟性メカニズム(規制値超過・未達の場合の船舶間の融通)の導入」や、対象となる燃料の範囲を「『WtW』(ウェル・ツー・ウェイク)」とするか「『TtW』(タンク・ツー・ウェイク)」にするか、などが挙げられる。

MEPC参加国の中で、GFIの導入に関しては明確な反対は見られないが、WtWについては一部の途上国が異を唱えている。TtWは欧州や島しょ国が反対姿勢だ。柔軟性メカニズムについては、要否やその内容で意見が分かれているという。

経済的手法を構成する要素では、「GHG排出量への課金」「課金によるゼロエミッション燃料船への支援」「途上国支援の是非やその範囲」などが挙げられる。各国間では、「課金の導入そのものの是非」「課金により集めたお金の使途を海事分野に限定するのか否か」で見解が異なる模様だ。

日本提案のフィーベート(化石燃料船に対して課金〈fee〉し、ゼロエミッション船に対して還付〈rebate〉を行う課金・還付のこと)では、GHG排出量に課金し、ゼロエミ燃料船を整備するファーストムーバー(先行者)への還付を規定している。

日本はMEPC82までに同制度の実現を担保するMARPOL条約改正案を練り上げていく。

並行して、各国で思惑が異なる技術的手法、経済的手法の構成要素について調整し、妥結点を見いだしていく方針。

塩入氏は「各論点について合意できるところを見極め、GHG削減戦略の目標(50年ごろのネットゼロ)の達成にかなう制度の構築を図りたい」と意気込みを語る。

 

 

引用至《日本海事報》2024年05月02日デイリー版1面

中古船市場1―3月、日本船主41隻売却。1300億円、円安・船価高 追い風

米国の運航管理システム大手ベソン・ノーティカルが集計した日本船主の1―3月の中古船売却実績は41隻、8億6313万ドル(約1300億円)となり、アジアの船主国でトップとなった。中古船価高騰と円安ドル高による売船益の拡大を追い風に、日本船主が保有船の売却を積極的に進めたとみられる。一方、バイヤー(購入者)側は中国船主が74隻、23億3167万ドルを購入し、アジア最大の買船国となった。

「昨年まで多くの日本船主は船価高騰で新造リプレースが難しいことから、保有船の売却を手控えていた。しかし、今年に入り『もう待てない』という雰囲気が高まり、売船に踏み切る船主が増えている」

中古船市場関係者は船主の傾向をそう指摘する。

1―3月売買実績はベソン・グループで船価鑑定を手掛ける英ベッセルズ・バリュー(VV)のデータを基に集計された。

アジア船主の1―3月売船実績は計162隻、36億5300万ドル。前年同期に比べて隻数ベースでは65%減少したが、船価高と高付加価値船の増加により資産価値ベースでは17%増加した。

主な船種別の売却実績はバルカー103隻▽コンテナ船11隻▽LPG(液化石油ガス)船6隻▽タンカー28隻。

アジア船主国の売船実績上位5カ国は、トップの日本に続いて中国40隻、8億2577万ドル▽韓国23隻、7億2660万ドル▽シンガポール21隻、5億4960万ドル▽香港18隻、4億5802万ドル。

■貨物の裏付け

バイヤー側を見ると、1―3月の主なアジア船主国別の買船実績は、首位の中国に続いて韓国16隻、8億4399万ドル▽シンガポール15隻、3億9604万ドル▽インドネシア14隻、2億3180万ドル▽台湾1隻、1億3216万ドル▽ベトナム9隻、1億2140万ドル―となっている。

首位の中国船主の中でも、特に香港やシンガポールに営業拠点を有し、ボーキサイトなどの貨物を潤沢に確保している船主が活発に買船に動いている。このほか、「一部の韓国船主などは中古船価のさらなる先高観を見据えた投機的な狙いもあるようだ」(市場関係者)。

企業別の買船トップ5社(資産価値ベース)は韓国船主シノコー8隻、4億4490万ドル▽韓国船社パンオーシャン4隻、2億6150万ドル▽中国リース大手ICBCファイナンシャルリーシング1隻、2億3257万ドル▽シンガポール船主ウイニング・シッピング6隻、2億612万ドル▽中国エネルギー企業Jovoエナジー2隻、1億8000万ドル。

 

引用至《日本海事報》 2024年04月30日デイリー版1面

SMTB・政投銀・SBI新生銀、商船三井に移行ローン。海運初、国が利子補給。地銀など11行参加、成果連動型

三井住友信託銀行(SMTB)と日本政策投資銀行(政投銀)、SBI新生銀行は25日、共同アレンジャーとして商船三井向けにシンジケーション方式の「トランジション(移行)リンクローン融資契約」を組成したと発表した。同3社に加えてりそな銀行と住友生命保険、地銀9行が協調融資に参画。経済産業省の「トランジション推進のための成果連動型利子補給制度」を活用し、GHG(温室効果ガス)削減目標の達成度に応じて国が利子を補給し、金利を最大0・2%引き下げる。

経産省の利子補給制度を活用したトランジションリンクローンは海運業界で初めて。今回の融資額は明らかにされていない。

同制度は産業競争力強化法(産強法)に基づき、利下げ原資として、国が日本政策金融公庫を通じ、指定金融機関に対して最長10年間にわたり利子を補給する。

具体的には事業所管大臣の計画認定を受けた事業者に対し、0・1%幅の利下げを実施した上で、計画期間中に目標を達成できた場合、最大0・2%幅まで利下げを行う。

商船三井は3月28日、国土交通相から産強法に基づく事業適応計画の認定を取得している。

今回の融資契約は、商船三井のトランジション戦略と整合したKPI(重要業績評価指標)とサステナビリティ・パフォーマンスターゲット(SPT)を設定し、達成度に応じて金利を引き下げる。第三者評価機関はDNVビジネス・アシュアランス・ジャパン。

SMTB、政投銀、SBI新生銀、りそな銀、住友生命保険とともに協調融資に参加する地銀9行は、池田泉州銀行▽十八親和銀行▽常陽銀行▽東邦銀行▽八十二銀行▽北洋銀行▽北陸銀行▽北海道銀行▽武蔵野銀行。

今回の融資について、政投銀企業金融第4部の山口祐一郎課長は「融資先の商船三井に直接的な経済的メリットを提供でき、海運の脱炭素を後押しする上で大きな一歩となる。SMTB、SBI新生銀の協力なしには実現できなかった」と語る。

SMTB法人企画部の中井敬企画チーム審議役(船舶融資担当)は「われわれファイナンサーと商船三井、経産省が三位一体となり、限られた期間の中で力を合わせて実現できた。船舶ファイナンス市場での金融機関の連携拡大の意義を感じている」と述べる。

SBI新生銀スペシャルティファイナンス部営業推進役の井上みな子氏(船舶ファイナンス担当)は「協調融資の組成に当たり、全国規模の金融機関に声をかけ、海運初の意義のある案件であることを理解してもらった。国の制度を使い、お客さまに経済的メリットを提供できるウィンウィンの案件を実現できた」と話す。

 

引用至《日本海事報》2024年04月26日デイリー版1面

パワーエックス、海上送電加速へ新会社。電気運搬船・バージ併用、26年後半商業運航

パワーエックス、海上送電加速へ新会社。電気運搬船・バージ併用、26年後半商業運航

世界初の電気運搬船の実現などに取り組むスタートアップ企業、パワーエックス(伊藤正裕社長)は23日、電気運搬船を開発・販売する新会社「海上パワーグリッド」を設立したと発表した。初号船「X」(100TEU型)の2026年後半の商業運航開始に向け、同社を通じ海上送電事業を加速させる。同時に電気運搬船よりコストを抑えられ、平水海域に適した電気運搬バージのデザインを新たに公表。船とバージを戦略的に併用し、運用効率と経済性の向上を図る。船舶用蓄電池の量産体制構築もこのほど完了し、電気運搬船の実現をいよいよ射程に捉えた。

海上パワーグリッドは2月9日、パワーエックスが展開してきた船舶・風力発電事業とその専門技術の移管を受け、同社の100%子会社として発足。電気運搬船の開発・保有・販売や同船を用いた海上電力輸送、電力販売、船舶用蓄電池の販売などを手掛ける。代表取締役は伊藤氏が兼務する。

新会社は今後、海運・造船や電力・エネルギー企業などを対象とした第三者割当増資を2段階で実施。初号船の建造費用や設計開発費用、新会社の運転資金を含め「100億円以上の資金を調達する計画」(伊藤社長)だ。

海上パワーグリッドは現在、100TEU型の電気運搬船「Power Ark 100」の初号船「X」の完成に向け、詳細仕様書を作成中。今夏をめどに詳細設計を終え、型式承認や試験運航などを経て、25年前半に受注・建造を開始し、26年後半の竣工・商業運航を目指す。

同船は全長147メートル、幅18・6メートル、喫水6メートルの電気推進船で、船倉にパワーエックス製の20フィートコンテナ型の船舶用蓄電池96本を搭載する。バッテリー容量は240メガワット時と、一般的なEV(電動)内航船が3・5メガワット時であるのに対し超大容量。21年末にパワーエックスへの出資をいち早く決め、電気運搬船の共同開発に乗り出した今治造船が建造する。

海上パワーグリッドはこの「Power Ark」の派生モデルとして23日、短距離で穏やかな平水海域での運用に最適なバージ型電気運搬船「Power Barge」のコンセプトを明らかにした。

「Power Barge」は全長約81メートル、幅30メートル、載貨重量約6000トンの大型バージ。「Power Ark」と同じく20フィートコンテナ型の船舶用蓄電池96本を搭載し、一度に最大240メガワット時の電力を輸送できる。

船体はいかだ形状で瀬戸内海などの波高が低い海域での使用に最適化。「Power Ark」と比べてコスト低減が可能なモデルとして設計された。

同バージは船体の仕様から電気運搬船より建造費用が安く済む。また推進機関を持たずタグボートが曳航するため、配乗が必要な船員はタグボートに5人程度で済み、船員15人で運航する「Power Ark」に比べて運航コストを抑制できる。

海上パワーグリッドは、電気運搬船を水深2000メートルまでの遠距離で波の荒いエリア、電気運搬バージを有義波高1メートル以下の近距離で波の穏やかなエリアと、需要家の用途に応じて併用していく。

「Power Barge」についても「需要家との協議次第だが、26年後半には商業運航を始めたい」(同)考えだ。同船の建造ヤードは「今治造船と協議を進めている」(同)。

またパワーエックスは岡山県玉野市に建設した日本最大級の蓄電池工場「Power Base」でこのほど、船舶用蓄電池の量産体制の構築を終えた。具体的には、コバルト不使用で発火しないLFP電池(リン酸鉄リチウムイオン電池)を使用した船舶用蓄電池モジュールの自動化生産ラインを完成した。

同モジュールは150個を20フィートコンテナ型の船舶用蓄電池に仕立てるため、96本搭載する電気運搬船・バージ1隻当たり1万4400個が必要。これを「年間15―16隻分生産できる体制が整い、25年7月から量産を開始する計画」(同)だ。

伊藤社長は日本海事新聞の取材に対し「船級協会の認証を前提とした生産ラインが完成し、世界でも前例がない舶用LFP蓄電池の量産体制が整ったことは大きな節目だ」と強調。荷主との商談も複数進んでいるといい、「いよいよ電気運搬船を建造・実現するフェーズに入る」と語った。

 

■【解説】洋上風力新市場に照準。海上電力インフラ会社へ

日本近海の洋上風力発電所でつくられた電気を、大型蓄電池を搭載する電気運搬船で陸上に輸送する―。このビジョンを掲げて創業したパワーエックスの電気運搬船事業に強力な追い風が吹いている。

政府が先月12日、洋上風力発電の設置場所を現行の領海内から排他的経済水域(EEZ)に拡大する「再生可能エネルギー海域利用法」の改正案を閣議決定したからだ。

洋上風車を設置可能なエリアが領海内に限られていた日本の洋上風力はこれまで、浮体式で水深300メートルまでの海域への設置を前提に発電量を算出。この結果、国内の洋上風力のポテンシャルは現状、着床式と浮体式を合わせて約550ギガ(ギガは10億)ワットとされている。

法改正に伴い、洋上風車の設置可能な場所がEEZまで拡大。パワーエックスはこれにより、水深300―2000メートルの海域で約2000ギガワットの洋上風力の新市場が生まれると試算する。

しかも、その市場にアクセスできるのは現状、電気運搬船だけだ。

洋上風力と本土を接続する海底ケーブルの敷設は、水深300メートルまでは日本でも一部実績がある。しかし、300メートルより深い海域でのケーブル敷設は現行技術では不可能とされ、実績がない。

洋上風車の設置範囲が水深2000メートルの海域まで広がると、電力需要が特に大きい関東沖と北海道沖、中部沖の風況・風力が特に強い。パワーエックスはここから電気を電気運搬船で陸上に輸送することで、「関東を洋上風力の一大拠点とすることが可能だ」(伊藤正裕社長)とみている。

実際に洋上風力の新市場が立ち上がり、電気運搬船で輸送可能となった場合、陸側の受け入れ体制はどうなるのか。

パワーエックスが想定するのが、廃炉となった火力発電所の活用だ。2030年までに廃炉を決定済みの火力発電所は全国に17カ所あり、廃炉予定を含めるとその数はさらに増える。

廃止された火力発電所はいずれも港湾に隣接しており、石炭船バースなど電気運搬船が寄港できる岸壁が既にある。その上、電気を送る系統線が最大の需要地である市街地に直結されており、ほぼ使われていない。

このため、例えば関東沖に立ち上がる洋上風力から、三浦半島(神奈川県)の火力発電所に電気運搬船で電気を輸送すれば、「東京と首都圏に膨大な電力を低コストで流し込める」(同)。

政府が莫大(ばくだい)な予算を投じて計画している、国内電力各社の管轄エリアをまたぐ「系統間送電」向けケーブル新設の大部分が不要になるというわけだ。

日本では環境対策として、火力発電所を段階的に廃止する計画が進行中。その一方、30年までに太陽光や風力などの再生可能エネルギーが全電源の30%以上を占めると予測されている。

加えて原子力発電所の再稼働が進む中、再エネ由来の電力の過剰供給による出力制限の回数は今後、九州や中国地方を中心にさらに増加する見通しだ。

これらの課題を解決するには、電力需要地と再エネが豊富な地域間の系統接続の強化が不可欠。だが、地域間連系線の整備には莫大な費用と時間が必要になる。

海上パワーグリッドはこうした状況に対し、電気運搬船を水深2000メートルまでの遠距離で波の荒いエリア向け、電気運搬バージを有義波高1メートル以下の近距離で波の穏やかなエリア向けに併用。系統を機動的に補完する新しい送電手段を提供し、「日本の電力インフラの改善に寄与する公共性が高い海上送電会社」(同)を目指す。

 

引用至《日本海事報》2024年04月24日デイリー版1面

欧米国際物流大手、23年業績 大きく悪化。利益指標は高水準

欧米国際物流大手の2023年業績は、大幅な減収減益だった(表)。航空・海上フォワーディングの物量減少、運賃市況の正常化が通年で影響した。コントラクトロジスティクス(CL、物流一括受託)や陸送は一部で底堅さも見られた。業績が落ち込んだとはいえ各社の利益水準は高く、特にフォワーディング大手の利益指標は新型コロナウイルス禍前の19年を大きく上回った。

キューネ・アンド・ナーゲル(KN)など複数の推計によると、23年1―9月のフォワーディング市場の荷動きは海上貨物が3―5%、航空貨物が11%程度、前年同期からそれぞれ減少した。

年後半には海上貨物で回復傾向が見られたが、22年後半からの需要減が一巡したためとする企業もある。経済の減速と世界的な在庫調整が大きく響き、中でも航空貨物の需要が落ち込んだ。秋以降はEC(電子商取引)貨物の出荷増により、中国などアジア発の航空輸送が逼迫(ひっぱく)し運賃が上昇する現象も見られた。

CLや陸送も在庫調整などの影響で振るわなかったが、EC関連やヘルスケア関連は好調に推移した。

フォワーディング大手の利益(営業利益・EBIT〈金利・税引き前利益〉)金額は前年から30―60%落ち込んだのに対し、利益率の減少は緩やかで高い水準を維持した。各社コスト削減やキャパシティーの調整を進めた。

DHLグループの売上高利益率は7・8%(19年は6・5%)。グローバルフォワーディング・フレイト部門では7・4%(同3・4%)と2倍以上に伸長した。KNのコンバージョンレート(粗利益に占める利益の割合)は21・7%(同13・3%)、DSVでは40・4%(同28・0%)だった。DBシェンカーの売上高利益率は5・9%(同3・1%)となっている。

大手の23年決算を個別に見ると、DHLグループのフォワーディング・フレイトのEBITは前年比38%減だった。貨物取扱量は海上貨物が6%減の308・9万TEU、航空貨物が12%減の167・2万トン。

KNのEBITは半減したが、19年の1・8倍の水準。フォワーディングの取扱量は海上貨物が1%減の433・8万TEU、航空貨物が11%減の198・3万トン。海上貨物でアジア―欧州や太平洋航路のシェアを拡大したという。

DSVの特別項目前EBITは30%減。フォワーディングの取扱量は海上貨物が6%減の251・9万TEU、航空貨物が16%減の130・6万トンだった。

DBシェンカーの調整後EBITは39%減だったが、19年比では2倍以上となった。フォワーディングの取扱量は海上貨物が7%減の178・3万TEU、航空貨物が13%減の114・8万トンだった。

アジア発などの取り扱い減少などが響き、UPSではフォワーディングを含むサプライチェーンソリューションの営業利益が50%以上の減少を見せた。15年に買収した陸送仲介事業の不振も重荷になった。

一方で、マースクやシーバロジスティクスを傘下に置くCMA―CGMをはじめ、船社がM&A(合併・買収)により攻勢をかけている。CMA―CGMは今年に入って仏ボロレロジスティクスの買収を完了した。今後はドイツ鉄道がDBシェンカーを売却する予定で、売却先候補として事業会社ではDSV、UPSに加えてマースクが浮上している。

 

引用至《日本海事報》2024年04月16日デイリー版1面

EPS、2元燃料船108隻に。環境投資を積極化

シンガポール船主イースタン・パシフィック・シッピング(EPS)が、LNG(液化天然ガス)燃料などに対応した2元燃料船への投資を積極化している。2元燃料船の発注実績は108隻に到達した。従来型燃料に比べて環境負荷の低い新燃料が使用できる2元燃料船を積極的に導入し、顧客の環境ニーズに対応する。

EPSは4日、2024年版のESG(環境・社会・企業統治)リポートを発行した。その中で同社の環境関連の投資実績などを公表した。

EPSは18年に、重油燃料とLNG燃料が使用できる世界初の2元燃料コンテナ船を発注。これを皮切りに、2元燃料船への投資を進め、発注実績を108隻まで積み上げた。

108隻の内訳はコンテナ船30隻、ドライバルク船27隻、ガス船22隻、タンカー11隻、自動車船18隻。

コンテナ船とタンカー、自動車船はいずれもLNG2元燃料船だ。ドライ船はLNG燃料のほか、アンモニア燃料に対応したニューカッスルマックス14隻が含まれる。

ガス船はLPG(液化石油ガス)、エタン、アンモニアの各燃料が焚(た)ける2元燃料船。アンモニア燃料大型アンモニア輸送船(VLAC)8隻を含む。

3月までにLNG燃料に対応した1万5000TEU型コンテナ船23隻や自動車船3隻、エタン2元燃料VLEC(大型エタン船)6隻など2元燃料船57隻が就航した。これらが寄与し、25年のGHG(温室効果ガス)排出削減目標を2年前倒しで達成した。

残り51隻は28年までに順次引き渡しを受ける。アンモニア2元燃料船の第1船は26年の就航を予定する。現在のEPSの保有船は253隻。80隻の発注残がある。

EPSは18年以降、海運の環境負荷を抑制するために15のグリーンプロジェクトへ総額26億ドル(約3930億円)を投資した。投資分野は2元燃料船、バイオ燃料、風力推進技術、炭素回収技術、航海最適化など多岐にわたる。

 

引用至《日本海事報》2024年04月08日デイリー版2面

2024年問題、規制的措置で変わるか。物流関連2法 改正案注目

物流危機が懸念される「2024年問題」に対応し、今国会で審議中の物流関連2法の改正案が注目を集めている。企業に広く物流効率化への努力義務を課し、特に大手の発着荷主と物流事業者を「特定事業者」として取り組みを義務付ける。荷主の生産や販売とコスト削減を支えるため、物流への負荷は増すばかりだった。しわ寄せを受けたのが現場のドライバーだ。法改正により、物流業界に変革は訪れるのか。

改正案を目にした大手メーカーの物流担当者は顔をしかめた。「トラック業界の過当競争は規制緩和が大きな要因だろう。そのツケが回ってきただけだ。商慣習がなかなか変わらないのは理解できるが、政府が市場原理を曲げようとしているようで釈然としない」

トラック運送の規制緩和は1990年に始まり、それ以前に4万社ほどだった運送事業者は6万数千社に増加した。供給過剰で値崩れが起こり、社会保険の未加入といった違反行為も横行した。一方で多品種・小ロット・短納期の取引が広がり、物流負荷が増していった。

現場のドライバーの労働条件は悪化し、労働時間は全産業平均より約2割長く、年間賃金は約1割低い状態になっている。倉庫などでの荷待ちも増え、荷役などのサービスも商慣習化した。

その構図の限界が見えてきた。4月からドライバーの時間外労働時間や拘束時間の上限が引き下げられる24年問題により、ドライバー不足が顕在化。NX総合研究所によると、対策を打たなければ24年には14・2%、30年には34・1%の輸送力が不足する可能性がある。

そこで政府がドライバーの待遇改善、物流生産性の向上と輸送力の引き上げに向けて打ち出したのが、物効法(流通業務総合効率化法)と貨物自動車運送事業法の改正だ。

物効法改正案のポイントは荷主の責任を明確化し、規制的措置を導入することにある。政府はこれまで社会的規制を強化し、法令や数々のガイドラインで改善を促したが、効果は限定的だった。物流事業者の立場は弱く、荷主の承諾がなければ商慣習を含めた抜本的な改善は難しい。識者は「荷主を動かすには強制的な力が必要だ」と解説する。

改正案では発荷主ばかりでなく、物流事業者と直接取引関係にない着荷主への規制的措置に踏み込んだ。特に貨物取扱量が一定規模以上の発着荷主を特定荷主として、物流効率化への中長期計画の作成や定期報告などを義務付け、ドライバーの荷待ち・荷役の削減、トラックの積載率向上などを促す。責任者として役員クラスの「物流統括管理者」(CLO)の選任も義務化する。違反すれば最高100万円の罰金を科すこともあり得る。

特定荷主としては、3000社程度の指定を想定。国内トラック運送貨物の半分程度に網をかけることになるという。

改正案に対して、物流事業者はおおむね歓迎するが、懸念されるのは改善のための負担が物流事業者側に偏ることだ。例えば、政府がガイドラインで定めたドライバーの荷待ち・荷役時間の合計を原則2時間以内に抑えるルール。ドライバーがサービスとして行っている荷役作業を倉庫側が引き受けても、対価を収受できる保証はない。また、荷主が荷待ち・荷役の実態把握のために運行データを収集しようにも、アナログな管理が主体の中小・零細事業者の負担は大きい。

■荷主に危機意識

物効法改正案の規制的措置は物流事業者も対象になる。保有車両台数200台以上の大手トラック事業者約400社、倉庫業界でシェア5割を占める100社程度が特定事業者の指定を受ける見通しで、CLOの選任を除いて荷主と同様の取り組みが義務付けられる。

加えて、政府は事業法の改正案にトラック事業者の取引に対する規制的措置を盛り込んだ。運送契約の締結には契約条件の明確化と書面交付を義務付ける。実運送事業者の適正運賃・料金の確保に向けて多重下請け構造を是正するため、元請け事業者には実運送事業者の名称などを記載した実運送体制管理簿の作成を義務化。一定規模以上の事業者150社程度へ下請けに出す行為の適正化に関する管理規定の作成、責任者の選任も義務付ける。一般事業者には適正化への努力義務を課す。

第一報を聞いた大手トラック会社の管理者は「直接取引のある下請けは管理できているが、その先は把握していない。今後の作業を思うと頭が痛い」と話し、「そのコストは誰が負担するのか。また、運賃を上げるにもドライバーの待機料や付帯作業料を払うにも荷主からの原資が必要だ」とつぶやいた。

業界全体で健全な価格転嫁の進展が期待されるが、別の大手の関係者は「大手から中堅は別として、時間外労働規制が強化されてもより多くの仕事を受けようと、ドライバーの労働時間をごまかす事業者がいてもおかしくない。荷主を含め、皆がルールを守らなければ法改正の意味がなくなる」と憂慮する。

これに対して、国土交通省は運送事業者への監査を強化する構えを見せる。「トラックGメン」も悪質な荷主や元請けに監視の目を光らせる。価格転嫁に関しては、政府挙げての対策も進む。

経済産業省の中野剛志物流企画室長は2月、政官民の会合で「(特定)荷主が(物効法に基づく)勧告などを受ければ、役員クラスのCLOの首が飛ぶことになる。これまでとは事情が異なり、各社危機感を持っていると聞いている」と発言した。

実際、大手メーカーの物流子会社関係者は「法令で定められるからには協力会社を含めてしっかり取り組む。本社と各工場の関連部門で連携し、対策を講じる」と話す。

別のメーカー関係者は「既に長距離トラックを中心に需給バランスが変わる兆しもある。『運べなくなる時代』に備え、『選ばれる荷主』を目指したい」と先を見据える。

 

 

引用至《日本海事報》2024年04月03日デイリー版1面

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