コンテナ市況、9月以降軟化、危険水域に。供給増に需要追い付かず
主要航路のコンテナ運賃が、コンテナ船社にとって採算割れの水準まで落ち込みつつある。22日付の北欧州向けコンテナ運賃は20フィートコンテナ当たり623ドルと、今年の最安値を更新した。北欧州向けが700ドルを割り込むのは2019年以来。新造船竣工に伴う供給量の増加で需給が緩んでいるのが原因。当初、市況軟化時にコンテナ船社は過去の経験を踏まえて船腹削減を進めることで大崩れはしないと見られてきた。しかし、今年は新造船竣工量が過去10年間の平均に比べて倍以上と大きいため、船腹削減が追い付かない模様。運賃市況はコンテナ船社にとって危険水域に近づいている。
グラフは、上海航運交易所(SSE)がまとめている上海発北欧州向けコンテナ運賃を、17、18、19、23年の4年間で比較したもの。期間は1月第1週(W1)から9月末(W39)まで。
23年の北欧州向けは年初から緩やかに軟化が進んで700ドル台前半まで落ち込んだものの、8月の船社による値上げで900ドル超まで反発。ただ、値上げ効果も持続せず、9月22日付では年初来の最安値を更新した。
市況が厳しかった19年以前も同様の傾向を示しており、8月までに何度か値上げで上向くものの持続せず、9月末までに大きく値を下げるのが顕著となっている。
アジア発欧州向け(欧州西航)の荷動きは好調に推移しており、7月は前年同月比6%増の約150万TEU。前年割れが続く北米向けとは対照的に好調に推移するなど航路環境は悪くない。
荷動き好調でも市況が下落傾向にある原因について日本海事センターでは、「新造船竣工による供給量増が大きすぎ、需要(荷動き)が追い付いていない」(同センターの松田琢磨客員研究員)と説明する。
各調査機関のリポートによると、23年4月以降のコンテナ運航船腹量は月平均19万TEU以上のハイペースで増加。過去1カ月間では実に21万TEUの新造船が竣工した。
過去10年間で世界のコンテナ船隊増加量は年平均で100万TEU。23年は平均の2倍となる220万TEUの竣工が予想されるという。単年の竣工量が最も多かったのは15年の170万TEUだった。また24年の竣工量は300万TEUという試算もある。
英クラークソンがまとめた23年1月時点の世界のコンテナ船腹量は2575万TEU。23―24年の2年間で2割近い船腹量の増加が見込まれることになる。
10月からの中国国慶節休みに備えてコンテナ船各社は欠便などの船腹削減計画を実施する予定だ。当初予定よりも削減幅を上積みしているが、現状ではそれで間に合うか疑問の声もある。
北欧州以外の運賃動向(9月22日付)をみると、北米西岸向けが40フィートコンテナ当たり1790ドル。西岸向けは2000ドルを割り込むと採算が厳しいとみられており、船社にとっては正念場となっている。
引用至《日本海事報》2023年09月28日 デイリー版1面