三菱重工機械システム、完成車を自動搬送。三河港で実証実験

【中部】三菱重工業(MHI)グループの三菱重工機械システム(MHI―MS)は2月5日から今月1日まで、愛知県の三河港蒲郡地区で、屋外で自律走行する電動の車両搬送ロボットを使った完成車自動搬送の実証実験を行った。港湾における完成車輸送の効率化やデジタル化を図る取り組みで、労働環境の改善や人手不足への対応、カーボンニュートラルポート(CNP)への貢献を目指す。

MHIとMHI―MSは2021年、仏ベンチャー企業スタンレーロボティクス(SR)と、自動車の自動バレーパーキング(駐車スペースまでの往復と駐車を自動で行うサービス)や完成車自動搬送を実現する自動搬送ロボット事業を共同展開することで合意。SRの自動搬送ロボットと、MHIグループの無人システム監視・管理などの技術を組み合わせたサービスの展開を目指している。

自動搬送ロボットは制御用のGPS(衛星利用測位システム)と高性能センサーLiDAR、監視用のカメラを備え、Wi―Fi通信により管理する。伸縮・昇降プラットフォームを車両下部に差し入れた後、プライヤーが四輪をつかんで持ち上げ、ヘッド側の360度回転するタイヤをモーターで駆動して搬送する。最大時速10キロメートル、最大搬送可能重量2・6トンで、充電ドックで自動充電し、夜間や雨天時も使用できる。

実証実験では、自動搬送ロボット2台を用いて、車両2台を並行して入庫・出庫した。ドライバーからロボットへの車両受け渡しエリア、車両保管エリア、仮置きエリアに分け、事前にデジタルマップで作成した入出庫の経路データを読み込ませて搬送した。

制御スペースはパソコンやサーバー類、アンテナを設置し、モニターで監視するほか、ロケーション管理やロボットへの指示を行う。システムは既設の詰め所などにも設置でき、サーバー1台でロボット10台まで制御が可能。現時点で車両情報を管理するRFID(無線タグ)の読み取り作業が必要だが、将来的には受け渡しの自動化も視野に入れる。

具体的な用途はモータープールやターミナルでの完成車の搬送・並び替え、船積み準備、キャリアカー積載準備などを想定する。勾配・段差の走行や通信環境、マッピングの課題があり船積みは想定していない。

実証実験は愛知県の「2023年度新あいち創造研究開発補助金」を活用し、完成車の取り扱いが多い三河港蒲郡地区で行った。期間中には国や自治体、海運・港運事業者、自動車メーカーなどが見学に訪れ、大きな注目を集めたという。

電動ロボットによる自動搬送についてMHI―MSの担当者は「カーボンニュートラルや人手不足などの課題解決に向けた手段になる」と意義を強調。「ドイツの完成車一時保管用モータープールで1年以上前から実際のオペレーションに導入されている。来年度は日本でも完成車用モータープールで、実際のオペレーションを想定した実証実験を進めたい」と話す。

 

 

引用至《日本海事報》2024年03月06日デイリー版1面

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