日本―アジア航路、1カ月先まで満船。中国など高運賃貨物を優先、減便の動きも

日本―アジア航路で、スペース不足が深刻化している。船社、航路にもよるが、関係者によるとおおむね1カ月先の7月中旬まで、ブッキングが取れない状況だという。中国発など高運賃貨物が優先され、日本貨物のアロケーション(割り当て)削減が響いているようだ。中国発着航路や、同じく高収益が期待できる基幹航路などに船舶を回すため、日本発着の域内航路の減便を検討する船社も出ているようだ。スペース逼迫(ひっぱく)は10月の中国・国慶節まで長期化するという見方もある。

状況は航路によって異なる。日韓航路、日中航路などのシャトル航路では現時点で大きなスペース問題は起きていない。一方で、中国貨物、韓国貨物などとスペースを取り合う海峡地航路、ベトナム航路などは値上がりが激しく、スペースが取りづらい状況だ。マレーシアやインド向けでは、3000―4000ドル台まで運賃が上昇しているという。

要因はさまざまだが、世界的なコンテナ輸送の混乱に伴う、運賃の上昇がアジア域内航路にも影響を及ぼしていることが大きい。また、アジア域内のハブであるシンガポールの混雑が悪化していることで、インドやミャンマーなど日本から直航便のない航路のスペース確保が困難になっている。

マレーシア・ポートクランなど他港での積み替えの動きもあるが、この結果、混雑は他のアジア港にも波及している。

また、これまでアライアンス船社などが基幹航路の一部で域内貨物を集荷する「ウエイポート輸送」を行っていたが、高運賃の遠洋航路貨物にスペースを当てるために、同輸送を中止。域内専業社のサービスのスペース不足に拍車を掛けているようだ、

運賃上昇傾向は、多くの関係者が秋口まで続くとみており、アジア航路の状況も短期的な改善は難しいと予想される。

台湾船社ワンハイラインズの日本法人は先週、顧客に出した通知で「多岐にわたる要因が同時進行しており、従来のようなサービス提供が非常に難しくなってきている」と説明し、「従来通りの形でのブッキング対応が難しい」ことに対する理解を求めた。

運賃の高い基幹航路や中国発着航路に船舶、コンテナが流れ、日本―アジア航路で船積みが難しくなるという、コロナ禍の初期と同じ様相を呈してきたが、ある近海船社日本代理店担当者は「スペース逼迫のスピード感はそれ以上」と語る。

需給逼迫時、スペースを確保するために中国荷主はマーケット価格プラスアルファで対応するが、安定的な運賃を重視する日本の荷主は極端な値上がりを嫌う。

アジア船社などは「交渉に時間がかかるなら、日本のアロケーションは他のアジアに回す」と、コロナ禍より思い切った判断で、スペース組み替えに動いているようだ。日本の営業担当者は「本社の方針に沿って提示した運賃に怒り出す荷主もいる。正直板挟みだ」と頭を抱える。

特に東南アジア直航便がほとんどない地方港荷主は、釜山や中国・上海などで中韓発着サービスに接続せざるを得ないが、中韓貨物の運賃に対抗できず、船積みが難しくなるケースも出ている。また、一部船社は、日本発貨物を無理に集荷せず、中国・韓国へのコンテナ回送を優先しているという。

一方、地方港サービスを手掛ける船社の日本代理店にとっては、売り上げが立たなければ死活問題にもなる。「日々レートが上がる中、実際に荷主にとってどの程度の水準まで許容可能か、丁寧に聞き取りを行い、少しでも受け入れ可能な運賃提示をするべく努力している」(韓国船社日本総代理店)という。

 

引用至《日本海事報》2024年06月12日 デイリー版1面

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