コンテナ運賃、急騰 南北航路にも波及。コロナ禍の混乱再来 懸念も

コンテナ運賃の急騰が続いている。アジア発欧米向けだけでなく、南米向けやアフリカ向けなど南北航路でもスペースが逼迫(ひっぱく)。先週末までの上海発南米東岸向けコンテナ運賃は20フィートコンテナ当たり7000ドルを超えた。これだけの高騰はコロナ禍の混乱が生じた2022年以来。アジア諸港での港湾混雑も深刻になっており、シンガポールでは常時3―4日の沖待ちを余儀なくされる状況という。物流関係者の間では「コロナ禍のサプライチェーン混乱の再来」という懸念が高まっており、予断を許さない状況だ。

「あるフォワーダーが船社に対し、日本発欧米向けで週当たり一定のスペースを確保できるなら、40フィート型でFAK(品目無差別)レートプラス4000ドルを支払うと言ったらしい」。こんな話が広まるほど、足元のスペース不足は深刻となっている。

既に多くの船社で、6月発アジア発欧米向けのスペースがフルブッキング状態となりつつあるようだ。船社は6月中旬以降、FAKレートの引き上げを予定しているが、「そもそも6月はもうスペースは取れないのでは」(フォワーダー)と諦めている声も出る。こうした航路環境のため、NVOCC(海上利用運送事業者)などは船社に対してFAKレートに上乗せした運賃を支払わざるを得ず、スペース確保に四苦八苦している。

こうした激しい値動きはアジア発では多いが、日本発でもここまで厳しいのは21―22年以来。「完全にコロナ禍の時の混乱の再来になりつつある」。あるフォワーダー関係者はこう嘆く。

では本当にコロナ禍の再来なのか。今後の見方は分かれる。

「欧州向けの混雑は、中国EV(電気自動車)の関税引き上げ前の駆け込み需要など、一過性の要因も強いのでは」との指摘は根強い。米国では8月から中国EVに100%関税が課せられるほか、今秋の米大統領選挙で対中強硬姿勢を見せるトランプ氏が当選すれば、中国製品への関税引き上げも予想されることも、前倒し出荷につながっているようだ。一定量が出荷されれば、輸送需要が平準化する可能性もある。

4月からのコンテナ市況の急上昇は、紅海情勢の悪化や荷主による安全在庫積み増しによる前倒し出荷など、コロナ禍の巣ごもり需要に基づいたものではない。また20―21年ごろは新造船竣工量が限定的だったが、24年は新造船だけで200万TEUも増えることが予想される。こうしたコロナ禍との違いもあり、一部では当時のような状況にはならないのではとの意見もある。

それではなぜ、コロナ禍と状況が似てきているのか。コンテナ輸送にとって不可欠なコンテナ機器の供給ができなくなっていることも大きいとの見方がある。

昨年末からの紅海での混乱により、欧州・北米東岸航路では喜望峰ルートへの迂回(うかい)にシフト。このためアジアとの輸送日数が2週間以上増加。アジア諸港、特に中国での空コンテナ在庫が減少した。またアジアから地中海地域はスエズ運河を通航できなくなったことで、各船社がアルヘシラスなど西地中海のハブ港経由でのルートに変更。そのため、地中海諸港やハブ港での混雑が発生。アジアへの空コンテナの回送が遅れていることも指摘されている。

港湾混雑は地中海諸港だけでなく、アジア諸港でも頻発している。世界最大のトランシップ(TS、積み替え)港であるシンガポールではバース接岸前に3―4日の沖待ちが常態化。上海、深圳など中国ハブ港で混雑も悪化し、TSに支障が生じていることが混乱に拍車をかけている。

こうした混乱の影響により、これまで基幹航路に限られていた需給逼迫が南北航路やアジア域内に波及。外的環境は必ずしも同じではないが、混雑に至るプロセスはコロナ禍の混乱と同じ状況になりつつある。

この状況はいつまで続くのか。いまの混雑状況を考慮すると、7―8月ごろまでという当初の予測から、最近では10月上旬の中国・国慶節まで続くという見方も出てきている。

 

引用至《日本海事報》2024年05月30日デイリー版1面

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