ドライ船、航海距離31%増加。パナマ運河、通航隻数は7割減
国際海運団体BIMCO(ボルチック国海海運協議会)のリポートによると、パナマ運河の通航制限を受けて、2024年1―4月に同運河を通航したドライバルク船の隻数は前年同期比74%減少した。同期間にパナマ運河を通航したドライ船の航海距離は31%増加した。ドライ貨物の通航量は減ったが、航海距離が増えたことで、トンマイル(輸送重量距離)では1%減となった。
フィリペ・グベイア海運アナリストは「航海距離が伸びていなければ、荷動き減少でケープサイズ以下の中小型バルカーのトンマイル需要は2%減少していた可能性がある。市況が前年同期を20―30%上回ることもなかっただろう」との見方を示した。
ドライ貨物の通航量が減少した主因は、米国から東アジアに向かう穀物の鈍化だ。中国は米国に代わりブラジルからの穀物輸入を増やした。それらはアフリカ大陸南端の喜望峰経由で運ばれる。
パナマ運河を通航する貨物の34%を、米国産を中心とする穀物が占める。石炭、鋼材、肥料、ペトコークなどのドライ貨物も輸送されるが、通航制限導入後もそれら貨物の荷動きは安定している。
ドライ船はコンテナ船のようにスケジュールが決まっていないため、パナマ運河の通航枠を予約することが難しい。ドライ船社の多くが喜望峰回りかホーン岬回りを選択した結果、輸送距離が伸びた。
引用至《日本海事報》 2024年05月30日 デイリー版2面