モザンビーク、LNG船商談 再開。海運大手、事業拡大に弾み
モザンビークのLNG(液化天然ガス)プロジェクト向けのLNG船商談が再開された模様だ。同プロジェクトの事業主体は新造LNG船17隻を調達する計画で、それらの保有会社に日本の海運大手などを起用することが内定している。プロジェクトの稼働が大幅に後ろ倒しとなり、船価などが変更になったため、それに応じた契約条件の再交渉を進めている。プロジェクト再開が決まれば、海運大手が成長分野に位置付けるLNG船事業の拡大に弾みがつく。
関係筋によると、モザンビークLNGプロジェクトの再開をにらみ、事業主体は造船所と新造LNG船の納期や船価などを再交渉。新たな船価を基に海運会社と用船料などの交渉を始めた。
海運会社との交渉期限は1月末に設定されている模様。ただ、期限までに交渉がまとまるかどうかは不透明なようだ。
モザンビークLNGプロジェクトは、同国北部沖合のエリア1鉱区と呼ばれるガス田を対象とした年産1300万トン規模の大型プロジェクト。2019年6月に最終投資決定し、24年の生産・輸出開始を計画していた。
事業主体にはプロジェクトを主導する仏トタルエナジーズが26・5%を出資。日本からも三井物産とエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)との合弁会社が20%を出資している。
生産されるLNGの3割は日本が引き取るほか、欧州、中国、台湾、タイ、インドネシア、インドの電力・ガス会社や英シェルが長期契約で引き取ることになっている。
ところが、LNGプラントが立地するカーボデルガド州の町がイスラム武装勢力に襲撃されるなど現地の治安が悪化。トタルは21年4月にフォースマジュール(不可抗力)を宣言し、建設作業を中断した。
モザンビーク政府などの尽力により、現地の治安は改善。23年11月にはモザンビークの外相が来日し、日本の政府関係者やパートナーに治安の改善・維持に注力する意向を伝えた。
プロジェクトの事業主体は20年末までに、LNG船17隻を建造する韓国の二つの造船所を選定。17隻を保有する海運会社4グループも選定したが、最終契約を結ぶ前にプロジェクトが中断されていた。
17万立方メートル級の新造船の建造ヤードには、HD現代重工とサムスン重工業を起用。保有・管理会社は日本郵船、商船三井、川崎汽船、ギリシャ船社マランガス・マリタイムが起用されるとみられる。
海運大手は1社当たり4―5隻の長期用船契約を事業主体と結ぶ予定とされる。海運大手の中にはパートナーとコンソーシアムを組み、商談に参加したところもある。
日本の海運大手はLNG船事業を重点投資分野の一つに位置付けている。長期安定収益が見込まれるLNG船事業の拡大を通じて、全社的な収益の安定化を図る狙いだ。
商船三井のLNG船の関与船(23年9月末時点)は97隻で、150隻規模への拡大を視野に入れる。日本郵船は86隻から120隻超へ、川崎汽船も45隻から75隻超へそれぞれ拡大させる計画だ。
引用至《日本海事報》2024年01月12日 デイリー版1面