住友商事、船舶海洋に積極投資。洋上風力 重点強化。重量物船保有へ
住友商事は船舶海洋事業への投資を積極化する方針だ。現在の船舶事業部を4月1日付で「船舶海洋SBU(ストラテジック・ビジネス・ユニット)」に改編。昨秋新設した「海洋事業開発チーム」を推進役に、洋上風力発電分野を重点的に強化する。保有船事業ではその一環で、重量物船など洋上風力関連船を船種のポートフォリオに加えていく。中小型バルカーへの投資も再開し、近年の売船でスリム化した保有船隊の拡大を狙う。
4月1日付で船舶海洋SBU長に就く豊田高徳船舶事業部長が日本海事新聞の取材に応じ、新体制での事業戦略について「船舶トレード事業と造船事業、保有船事業が柱であることは今の船舶事業部と変わらないが、今後は組織名に冠された通り、洋上風力分野を軸に海洋事業も強化していく」との方針を明らかにした。
その背景に関し、「足元では0・4%に過ぎない世界の発電量に占める洋上風力の割合は、2050年ごろに10%程度まで拡大する可能性があるとも言われている」と、急成長市場の潜在性に言及。
その上で「船舶用の新燃料についても今後、運航時のCO2(二酸化炭素)排出削減のみならず、製造時にCO2を排出しない再生可能エネルギー由来のグリーン燃料でいかにつくれるか、に焦点が当たるだろう。洋上風力は中長期的に、舶用グリーン燃料を製造するためのグリーン電力としても需要が相当高まるとみており、周辺事業の開発に注力する」と語った。
船舶事業部は新規事業開発の一環で昨年8月、部内に「海洋事業開発チーム」を新たに設置。着床式洋上風車の基礎部分であるモノパイルや風車を構成するブレード・ナセルなど、洋上風力関連貨物の輸送に対応する重量物船や風力建設支援船などの保有・参画に加えて、浮体式洋上風力の浮体基礎構造物の製造販売および関連サプライチェーンの構築も視野に入れ、洋上風力分野の事業開発を重点的に進めている。
豊田事業部長は保有船事業については「船種のポートフォリオにマーケット船とは性質の異なる洋上風力関連船を組み入れていくとともに、中小型バルカーの代替新造も再開し、投資拡大に舵を切る」と明言した。
保有船隊の規模に関しては「隻数の目標は設けないが、市況を見ながら全社の投資基準をクリアする良質なアセットを積み上げていき、短中期的に現在の倍程度にはしたい」との考えを示した。
住商はここ数年、高齢船の売却を進めた結果、ピーク時に30隻規模を擁していた保有船隊が現在では半数程度にスリム化している。新造船価が高止まりする中、新たな船の仕込みは簡単ではないが、今後は長期的な視点に基づき、中小型バルカーなどマーケット船隊の入れ替えも進める。「保有船事業は今後、再拡大モードに入るということだ」(豊田事業部長)
住商は4月1日付で、従来の「事業部門」と傘下の「本部」「部」を廃止し、新たに九つの「グループ」と「SBU」「ユニット」を設置する機構改正を実施。従来の「リース・船舶・航空宇宙事業本部」の「船舶事業部」は、「輸送機・建機グループ」の「船舶海洋SBU」となる。
同社は各SBUについて、「注力事業」「シーディング」「バリューアップ事業」「バリュー実現」の4象限に分類。高い収益性が見込める「注力事業」に重点投資し、アセットの積み増しなどを行う計画。
住商は21年4月、トレーディング(新造船、中古船、用船の仲介)事業を100%子会社の住商マリン(東井直彦社長)に移管。本体の船舶事業部は新規事業の開発に集中するとともに、トレーディングと並ぶ船舶部門の中核である保有船事業を、子会社の主管業務を通じて手掛けている。
引用至《日本海事報》2024年03月11日 デイリー版1面