自動車船社、欧州で再編の兆し。中国勢台頭 契機に
自動車船の需給逼迫(ひっぱく)が続く中で、欧州の自動車船オペレーター(運航会社)の間で再編の兆しが出てきた。イタリア船社グリマルディグループは、ノルウェー船社ホーグオートライナーズの発行済み株式の5・12%を取得した。中国勢が荷主として存在感を高め、オペとしても台頭してくると予想されることが、再編の一つの契機となる可能性がある。
自動車船事業は自動車メーカーの生産が回復し輸送需要が高まる中で、中国からの輸出が急拡大したため船腹需給がタイト化。運賃も上昇し、自動車船オペの収益も大幅に改善した。
それに伴い、自動車船オペの株価も上昇。自動車船を非中核事業とみなすデンマーク海運大手APモラー・マースクは昨年までに、保有していたホーグオートライナーズの全株式を手放した。
英ベッセルズ・バリュー(VV)は、マースクによるホーグオートライナーズ株式売却を受けてリポートを発表。その中で記録的な好業績の波に乗り、競合他社が買収に乗り出す可能性があるとの見方を示した。
VVは業容拡大の次のステージに向けて準備を進めるグリマルディを候補に挙げた。今回、その予想通りグリマルディがホーグオートライナーズの株式取得に動いた。
グリマルディの運航船隊は自動車船、RORO船、フェリーを合わせ130隻規模。サービス網は欧州域内を中心に、西アフリカ、北米・南米東岸をカバーしている。船舶投資も積極的で、9000台積み自動車船17隻の発注残がある。
中国の2023年の自動車輸出台数は前年比57%増の522万台となり、日本を抜き世界一の輸出国になった。自国の荷主の輸送ニーズに応えるため、中国船社は自動車船隊の構築を進めている。
日本の海運大手3社は世界トップクラスの自動車船隊を擁する。邦船関係者は「中国船社の台頭で船社間の競争が厳しくなるだろう」と語る。
自動車船にはコンテナ船社も関心を示している。昨年に仏CMA―CGMが参入したのに続き、最大手のMSCは自動車船18隻を保有するノルウェー船主グラム・カー・キャリアーズに対し公開買い付けを行う。
■オペの業績好調
海運会社の自動車船事業の業績は好調に推移している。商船三井は4月30日に25年3月期の業績予想を発表し、橋本剛社長は「今期は前期に続き自動車船の利益貢献度が高くなる」との見通しを示した。
自動車船の輸送台数はスエズ運河迂回(うかい)の影響で5%減の303・3万台にとどまる見通しだ。ただ、「期間契約が下支えし、配船効率を高めることで、増益を見込む」(濱崎和也専務執行役員)。
一方で、「世界的なEV(電気自動車)の販売減速による完成車海上荷動きへの影響を見極めていく必要がある」(橋本社長)。新造船の供給増加が需給緩和要因になることも懸念されている。
引用至《日本海事報》2024年05月07日 デイリー版1面