高齢タンカー、船価下落続く。「影の船団」需要減退。「もしトラ」も影響

中古船市場で高齢タンカーの価格下落が続いている。船齢20歳のVLCC(大型原油タンカー)価格は昨春の4800万ドル(約72億円)強をピークに足元は3割安の3550万ドル(約53億円)に低下した。経済制裁対象のロシア原油を輸送する高齢タンカー船腹、通称「影の船団」に対する規制強化で高齢船の投入先が縮小しているのが主因だ。さらに今秋の米大統領選挙でドナルド・トランプ前大統領が当選した場合、ロシア制裁の行方が不透明になる可能性も見据えて、ギリシャ船主らは投資の重点を新造タンカーにシフトしている。

「ギリシャ船主が高齢タンカーに興味を失い、新造発注に力を入れている。〝もしトラ〟(もしかしたらトランプ)も見据えているようだ」

タンカーブローカー関係者は最近の船舶投資トレンドについてそう指摘する。

米国の運航管理システム大手ベソン・ノーティカル傘下の船価鑑定会社ベッセルズ・バリューによると、船齢20歳のVLCC価格は2021年まで2200万―2500万ドルで推移していたが、22年2月のロシアのウクライナ侵攻後に急騰。欧米の経済制裁に伴う「影の船団」需要により、昨年4月のピーク時には約2倍の4821万ドルに達した。

「影の船団」はロシア原油のインドやトルコ、中国向け輸送を担い、通常トレードでは使われにくい船齢15歳以上の高齢船が投入され、制裁リスクと引き換えに高運賃を稼いだ。

しかし昨年半ば以降、欧米諸国は「影の船団」に対する調査強化や制裁の厳格化を推進。米ブルームバーグによると、「ギリシャのタンカー船主の多くはロシア産原油の取引から手を引いた」という。

一方、新鋭タンカーについては世界の新造発注残が依然として低水準なことから、中長期的にタイトな船腹需給が期待できる。

紅海などでの地政学リスクの高まりによるトレード変化で市況高騰が続いていることもあり、今年に入りギリシャ船主などが「タンカーの新造発注に力を入れている」(ブローカー関係者)。

ベソン・ノーティカルの集計によると、1―4月の世界のタンカー新造発注隻数は前年同期比32%増の104隻となった。船型構成はMR(ミディアムレンジ)型プロダクト船が37%を占め、次いでVLCC31%、スエズマックス19%、LR(ラージレンジ)2型プロダクト船12%、アフラマックス1%となっている。

 

引用至《日本海事報》2024年05月24日デイリー版1面

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