24年コンテナ運賃交渉、2次入札額上昇も。スエズ情勢で市況急変
コンテナ運賃交渉の先行きが不透明だ。2024年は大型コンテナ船の連続竣工などで需給が緩み、荷主優位の交渉となるとみられていたが、昨年末からスエズ運河などの情勢で運賃市場は大きく変化している。製造業など大手実荷主(BCO)は昨年11―12月に、船社やNVOCC(海上利用運送事業者)を招き、1次入札を実施。船社へのフィードバックが順次戻ってきているが、船社側は「1次の応札時とは状況が変わった。航路にもよるが、2次入札では(上方修正した)『出し直し』のような数字を提示せざるを得ない」(アライアンス加盟船社の日本法人)との姿勢を見せる。荷主と船社で市場に対する見方が分かれれば、交渉が長期化する可能性も高い。
コロナ禍で暴騰したコンテナ運賃は22年半ばから徐々に軟化し、23年半ばまでにはコロナ禍以前の水準に収束した。
主要航路である北米航路のサービスコントラクト(SC)更改では、23年は40フィート当たり2000ドル台前半で決着したが、24年は大型船の竣工などで、供給が需要を3%程度上回るという予想が多く、船社関係者は23年を下回る水準での妥結も覚悟していたようだ。
しかし、昨年11月中旬からイエメンの武装勢力フーシ派が紅海・アデン湾を航行する船舶への攻撃を開始したことから事態は急変。12月にはコンテナ船での被害が相次ぎ、主要コンテナ船社がスエズ運河の航行を回避。アジア―欧州・地中海航路の多くが喜望峰経由に変更された。これにより、輸送日数が長期化。さらにスケジュール維持のために追加船腹も投入されることから、世界全体のコンテナ船供給量の5―6%が吸収され、需給引き締めにつながっている。
実際、コンテナ運賃は昨年12月から上昇傾向にある。喜望峰経由の影響を直接受けた欧州航路だけでなく、アジア発北米向けも1月に入り急騰。スポットでは40フィート型では大手荷主のSC運賃の2―3倍の数字が出ている。
一部スエズ経由欧州航路とのペンデュラム(振り子配船)サービスが影響を受けていることに加え、パナマ運河の渇水による通航制限から、北米東岸・内陸向けでも北米西岸からの鉄道輸送を選択するケースもあり、急速に需給が引き締まっている。船社はPSS(繁忙期割増料金)などを導入しているが、あまりにSC運賃とスポット運賃の差が開けば、SC貨物の積み残しなども出てくる可能性もある。
紅海では15日に米国船籍のバルカー、16日にはギリシャ船籍のバルカーが相次ぎ被弾するなど、一般商船への攻撃は収まっていない。
ある船社関係者は「スエズ運河の情勢が不透明なだけでなく、パナマ運河の渇水や、豪州での港湾ストなどの問題もある。さらに、今年は北米東岸労使交渉も控えており、不確定要素が多い。少なくともPSSなどの外出しは荷主に受け入れてもらわなければならないし、オールインにこだわる荷主に対しては、あらかじめピークを見越したような数字で対応せざるを得ない」と語る。
引用至《日本海事報》2024年01月18日 デイリー版1面