520前夜に「経済制裁」発動──中国、台湾産POMに反ダンピング税を課すと発表
【北京発】台湾の頼清徳総統の就任1周年を目前に控えた本日(5月18日)、中国当局は突如、2025年5月19日より台湾、米国、EU、日本から輸入される共重合ポリオキシメチレン(POM)に対して反ダンピング税を正式に課すと発表した。この措置は、台湾に対する「経済的威圧」の一環と見なされており、新政権の就任記念日を前にして中国が対台経済圧力を意図的に強めた動きと捉えられている。
中国商務部の公告によると、1年間にわたる調査の結果、台湾を含む各地域からのPOM輸入に「ダンピング行為」が認められ、中国本土の同産業に実質的な損害を与えていると判断。さらに、ダンピングと損害の間には「因果関係」があると結論づけた。税の適用期間は5年間で、2025年5月19日から正式に施行される。
今回対象となった台湾企業には、台灣寶理塑膠股份有限公司(Polyplastics Taiwan Co., Ltd.)が3.8%、台灣塑膠工業股份有限公司(Formosa Plastics Corporation)は4%の税率が課され、その他の台湾企業には最大32.6%という懲罰的な税率が適用される見込みで、中国側が特定企業に対して選別的な対応を取っていることが浮き彫りとなった。
共重合ポリオキシメチレン(POM)は高性能エンジニアリングプラスチックの一種であり、高い機械的強度、疲労耐性、クリープ耐性を備え、自動車部品、産業機械、電子・電機、建材、医療機器など広範な分野で使用されている。一部の金属材料に代わる中間素材としても注目されており、台湾はこの分野で高い市場シェアと技術優位性を有している。
経緯を振り返ると、中国は2023年5月19日──すなわち頼清徳氏が副総統として初めて迎える「520」前夜──に台湾・米・日・欧州からのPOM輸入に対する反ダンピング調査を開始し、2024年1月16日からは保証金方式による暫定的な措置を導入していた。そして今回、「520」前日に正式決定を下したことで、その政治的タイミングに注目が集まり、台湾の産業界および政界に警戒感が広がっている。
この措置に関して経済専門家は、「特定素材・特定企業」を標的とした懲罰関税は戦略的な意味合いが強く、台湾の中間製造業者に打撃を与えるだけでなく、国際顧客からの信頼や受注の安定性を損なわせることで、台湾のサプライチェーン全体に圧力をかける「グレーゾーン経済戦」の一手段だと指摘している。
台湾のみならず、米国のTicona Polymers, Inc.および他の米企業には74.9%、欧州のCelanese Production Germany GmbH & Co. KGおよびその他企業には34.5%、日本では宝理塑料株式会社に35.5%、旭化成株式会社には24.5%の反ダンピング税が課されることとなった。
近年、中国は台湾に対する言論戦・軍事的威嚇を強める中で、今回のような経済的圧力を追加することで、対台湾政策における「政治・経済の協調的な戦略モデル」を推し進めている。専門家は、今後も中国が台湾の「技術依存度の高い重要産業」に対する反ダンピングや非関税障壁をさらに拡大し、台湾の経済的強靭性および国際供給網における役割を弱体化させようとする可能性があると見ている。