EU―ETS、サーチャージで転嫁。主要コンテナ船社、推定値を公表
欧州の排出量取引制度EU―ETSの海運への適用を来年に控える中、主要コンテナ船社は新たに導入するサーチャージの推定値を公表した。極東発北欧州向けの場合、MSCはドライコンテナ1TEU当たり22ユーロ(1ユーロ=約157円)の追加チャージが発生すると試算。同条件でハパックロイドは12ユーロ、マースクは1FEU当たり70ユーロとしている。算定の基準となる排出枠(EUA)の価格に変動性があることから推定値には差があるが、荷主にとってコスト増は避けられない状況だ。
EU―ETSは来年から海運分野にも適用される。これにより船会社は排出量に応じた排出枠を購入する必要がある。
同制度の対象となるのは5000総トン以上の船舶がEU(欧州連合)・EEA(欧州経済領域)域内の港湾間の航海、停泊で実際に排出したGHG(温室効果ガス)の全て。域外港湾との航海では排出量の50%が対象で、いずれも段階的に適用していく。
新制度の適用を控える中、欧州の主要コンテナ船社は新たなサーチャージの導入で価格転嫁を進めることを明らかにしている。
マースクは顧客向けの案内で「EU―ETS順守のためのコストは莫大(ばくだい)なものとなり、増加の一途をたどることが予想される」と説明。同コストの対象となるサービスのブッキング時「エミッションズ・サーチャージ」を適用するとしている。
このほど示したチャージの推定値では極東発北欧州向けがドライコンテナ1FEU当たり70ユーロ(リーファーコンテナの場合105ユーロ)、同南欧州向けが20ユーロ(30ユーロ)、北欧州発極東向けが46ユーロ(69ユーロ)などとした。同社は遅くとも適用の30日前に正確な料率を公表するとしている。
MSCも同様に新たにサーチャージを導入する方針で、極東発北欧州向けが1TEU当たり22ユーロ(33ユーロ)、同地中海向けが18ユーロ(27ユーロ)、北欧州発極東向けが13ユーロ(20ユーロ)、地中海発極東向け14ユーロ(21ユーロ)との目安を示した。既存・新規を問わず、全てのスポット・長期契約に適用する。
CMA―CGMはアジア発北欧州向けのサーチャージが1TEU当たり25ユーロ(40ユーロ)、同地中海向けで20ユーロ(30ユーロ)となると試算。正式な金額は来月中旬に発表するとしている。
このほかにもハパックロイドは東アジア発北欧州向けで1TEU当たり12ユーロ(31ユーロ)、同南欧州向けで7ユーロ(16ユーロ)との推定値を公表。金額はEUAの価格に合わせて四半期ごとに更新される見通しだ。
引用至《日本海事報》2023年10月17日 デイリー版1面
https://www.jmd.co.jp/article.php?no=290626