欧米国際物流大手、23年業績 大きく悪化。利益指標は高水準

欧米国際物流大手の2023年業績は、大幅な減収減益だった(表)。航空・海上フォワーディングの物量減少、運賃市況の正常化が通年で影響した。コントラクトロジスティクス(CL、物流一括受託)や陸送は一部で底堅さも見られた。業績が落ち込んだとはいえ各社の利益水準は高く、特にフォワーディング大手の利益指標は新型コロナウイルス禍前の19年を大きく上回った。

キューネ・アンド・ナーゲル(KN)など複数の推計によると、23年1―9月のフォワーディング市場の荷動きは海上貨物が3―5%、航空貨物が11%程度、前年同期からそれぞれ減少した。

年後半には海上貨物で回復傾向が見られたが、22年後半からの需要減が一巡したためとする企業もある。経済の減速と世界的な在庫調整が大きく響き、中でも航空貨物の需要が落ち込んだ。秋以降はEC(電子商取引)貨物の出荷増により、中国などアジア発の航空輸送が逼迫(ひっぱく)し運賃が上昇する現象も見られた。

CLや陸送も在庫調整などの影響で振るわなかったが、EC関連やヘルスケア関連は好調に推移した。

フォワーディング大手の利益(営業利益・EBIT〈金利・税引き前利益〉)金額は前年から30―60%落ち込んだのに対し、利益率の減少は緩やかで高い水準を維持した。各社コスト削減やキャパシティーの調整を進めた。

DHLグループの売上高利益率は7・8%(19年は6・5%)。グローバルフォワーディング・フレイト部門では7・4%(同3・4%)と2倍以上に伸長した。KNのコンバージョンレート(粗利益に占める利益の割合)は21・7%(同13・3%)、DSVでは40・4%(同28・0%)だった。DBシェンカーの売上高利益率は5・9%(同3・1%)となっている。

大手の23年決算を個別に見ると、DHLグループのフォワーディング・フレイトのEBITは前年比38%減だった。貨物取扱量は海上貨物が6%減の308・9万TEU、航空貨物が12%減の167・2万トン。

KNのEBITは半減したが、19年の1・8倍の水準。フォワーディングの取扱量は海上貨物が1%減の433・8万TEU、航空貨物が11%減の198・3万トン。海上貨物でアジア―欧州や太平洋航路のシェアを拡大したという。

DSVの特別項目前EBITは30%減。フォワーディングの取扱量は海上貨物が6%減の251・9万TEU、航空貨物が16%減の130・6万トンだった。

DBシェンカーの調整後EBITは39%減だったが、19年比では2倍以上となった。フォワーディングの取扱量は海上貨物が7%減の178・3万TEU、航空貨物が13%減の114・8万トンだった。

アジア発などの取り扱い減少などが響き、UPSではフォワーディングを含むサプライチェーンソリューションの営業利益が50%以上の減少を見せた。15年に買収した陸送仲介事業の不振も重荷になった。

一方で、マースクやシーバロジスティクスを傘下に置くCMA―CGMをはじめ、船社がM&A(合併・買収)により攻勢をかけている。CMA―CGMは今年に入って仏ボロレロジスティクスの買収を完了した。今後はドイツ鉄道がDBシェンカーを売却する予定で、売却先候補として事業会社ではDSV、UPSに加えてマースクが浮上している。

 

引用至《日本海事報》2024年04月16日デイリー版1面

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