トヨフジ海運、初のメタノール焚き発注。内航自動車船、三菱造船に2隻

【中部】トヨフジ海運(本社・愛知県東海市、武市栄司社長)が初のメタノール燃料焚(た)き自動車船の新造発注を決めた。三菱重工グループの三菱造船と2300台積み2隻の建造契約を締結し、竣工後は国内航路に投入する。内航自動車船でメタノールを主燃料とする船は初めて。下関造船所江浦工場(山口県下関市)で建造し、竣工は2027年度を予定する。燃料供給は三菱ガス化学、国華産業と共同で行う。18日、各社が発表した。

1隻目はトヨフジ海運が保有、2隻目は同社と福寿船舶(本社・静岡市、 奥村恭史社長)が共同保有し、中部、関東、東北、九州、中四国のいずれかの航路へ投入を計画する。2隻は内航既存船隊のリプレースとなる。

本船は、メタノールとA重油を燃料として使用できるデュアルフューエル(二元燃料)エンジンを搭載する。

メタノールは従来の重油と比較して、発熱量当たりの燃焼時のCO2(二酸化炭素)排出量を10%以上削減する。トヨフジ海運によると、LNG(液化天然ガス)など他の次世代燃料に比べて燃料タンクの収納効率が高く、国内各港に寄港できる船型を維持しつつ、積載台数は既存船の2000台から2300台に増加できる。船型改良の効果も含めると、1台当たりのCO2排出量20%以上削減を見込む。

現在、トヨフジ海運が運航する内航自動車船6隻は全て2000台積みで、既存の「とよふじ丸」は全長165メートル、全幅27・6メートル、1万2687総トン。これに対し新造船は全長169・9メートル、全幅30・2メートル、1万5750総トンとなる。

将来、バイオマス由来や回収したCO2と再生可能エネルギーで生成した水素で製造するグリーンメタノールを使い、ライフサイクルを含めたCO2排出削減も見据える。

燃料供給ではメタノールで国内トップシェアの三菱ガス化学、同社グループの国華産業と連携する。三菱ガス化学がメタノール燃料を供給し、国華産業が既存のメタノール輸送船を使い、シップ・ツー・シップ方式でバンカリング(燃料供給)を行う計画だ。

トヨフジ海運は長期環境ビジョン「トヨフジ環境チャレンジ2050」を掲げて次世代燃料への転換を進めている。27年以降、内航船隊のリプレース時期となり、環境方針に基づいた脱炭素の方策としてメタノール燃料船2隻の発注を決めた。

鈴木省三常務取締役は、「内航RORO船全体でメタノールが主流となるかは分からない」としつつ、同社として「現状のオペレーションに最適で、将来のカーボンニュートラルへ有効な燃料という理由で、メタノール燃料が最適と総合的に判断した」と話す。

国内主要各港に寄港可能な船型かつ燃料タンクの容量増による船積み台数減少の影響が少ない上、燃料補給は既存インフラを使用でき、同社内航船の停泊時間内で補給可能な点などが決め手となった。

保有・運航にあたっては、環境対応コストについての各荷主との協議や、将来に向けたグリーンメタノールの確保が課題になるという。

 

引用至《日本海事報》2024年06月19日デイリー版1面

三菱ガス化学、メタノール燃料供給へ。船舶向け、24年度中に

三菱ガス化学は2024年度中にも日本国内で船舶用メタノール燃料の供給を開始する。メタノールは従来型船舶用燃料の重油に比べて環境負荷の低い代替燃料として関心が高まっている。4月にはメタノール燃料コンテナ船が横浜港に寄港したほか、年内に内航のメタノール燃料船も就航する予定だ。三菱ガス化学は船舶用メタノール燃料の需要に対応し、供給体制の整備を進める。

ノルウェー船級協会DNVによると、過去12カ月間に新造発注された代替燃料船のうち、メタノール燃料船がLNG(液化天然ガス)燃料船を上回り最も多かった。

メタノールで国内シェアトップの三菱ガス化学は、船舶用メタノール燃料の需要の高まりを見越して、国内で供給するための準備を進めている。船舶向けの供給は初の試みになるため、関係官庁と安全ルールなどに関する検討を行っている。

三菱ガス化学はパートナーと共に、中東など世界4カ所でメタノールプラントを運営。生産能力は年750万トン規模を誇る。日本国内には輸入基地が4カ所ある。それら調達力や既存インフラを生かし、船舶用燃料としての需要に応える。

当初はメタノールの国内輸送に従事しているメタノール輸送船を燃料供給船として転用することを想定。需要に応じて、メタノールバンカリング(燃料供給)船を新造することも視野に入れる。

船舶用メタノール燃料は、天然ガスから生産されたグレーメタノールだけでなく、海運会社の需要に応じてバイオメタノールやグリーンメタノールなど非化石燃料由来のメタノールも供給する。

バイオや特に初期のグリーンメタノールは供給量が限られる。価格も高くなることが予想される。そのため、「グレーメタノールにブレンドして供給することが多くなるのではないか」(三菱ガス化学関係者)。

メタノールは従来型の船舶用燃料に比べて環境負荷が低いことが特長だ。

SOx(硫黄酸化物)の排出量は従来型の燃料に比べ最大99%、PM(粒子状物質)は最大95%、NOx(窒素酸化物)は最大80%、グレーメタノールでもCO2(二酸化炭素)の排出を最大15%削減できる。

メタノールは常温常圧で液体のためLNGやアンモニアなどに比べて取り扱いが容易、エンジンなどの技術も確立されている、燃料供給インフラも既存設備を活用できる―といった利点もある。

バイオガス由来のバイオメタノールや工場などから回収したCO2と再生可能エネルギー由来の水素で製造されるグリーンメタノールを活用すれば、GHG(温室効果ガス)排出量のさらなる削減も見込まれる。

一方、「カーボンクレジットの扱いなどが課題になる」(同)。海外で排出されたCO2を利用して製造されたメタノールを国内で使用した場合、カーボンニュートラルと見なされるのかどうかなど、認証体制の整備はこれからになる。

DNVの統計では、世界で就航済みのメタノール燃料船は35隻。発注残は269隻まで増加した。船種はタンカーやコンテナ船のほか、バルカー、自動車船、クルーズ船などに多様化している。

メタノールの世界の需要は年9200万トン規模。発注済みのメタノール燃料船が就航すれば、800万―1000万トンの燃料需要が創出されるとの試算もある。

船舶用メタノール燃料は、当初はメタノールを貨物として輸送するケミカルタンカーでの利用が主だった。ケミカルタンカー以外では、コンテナ船大手のマースクが初めて採用。他船社での採用も急激に増加した。

マースクは4月には、1万6000TEU型のメタノール2元燃料船を横浜港に寄港させた。同社は横浜市、三菱ガス化学とメタノールバンカリングに関する覚書も結んでいる。

環境対応を積極的に進める日系海運会社でも、メタノール燃料を採用する動きが活発化している。

今年1月には海運大手3社が出資するオーシャンネットワークエクスプレス(ONE)がメタノール2元燃料1万3000TEU型12隻の発注に踏み切った。

商船三井ドライバルクは神原汽船からメタノール2元燃料中型バルカーを定期用船することを決めた。NSユナイテッド海運も主に鉄鋼原料を運ぶ大型バルカーでメタノール燃料を採用する。

三菱ガス化学は用船者の立場では、同社が輸入するメタノールを運ぶタンカーにメタノール2元燃料エンジンを搭載する。商船三井から長期用船し、25年から運航を開始する予定だ。三菱ガス化学は運航船をメタノール燃料船に順次切り替えていく方針だ。

 

引用至《日本海事報》2024年06月17日デイリー版1面

北米東航5月、中国筆頭に高い伸び。9カ月連続プラス、14%増167万TEU

笛卡爾數據礦5月14日發佈公告,亞洲10個國家和地區對北美(北美東航)集裝箱出貨量同比增長14%至167萬標準箱,連續第九個月超過上年同月。 以中國為首的前四大國家和地區均錄得兩位數高增長。 結果顯示,北美東部航線表現強勁。

統計數據涵蓋母船和集裝箱運輸,不包括FROB(經美國運往第三國的貨物)。

按國家和地區劃分,中國的銷售額增長了12%,達到965,000標準箱,韓國的出口增長了28%,達到198,000標準箱,越南增長了16%,達到160,000標準箱,新加坡增長了24%,達到78,000標準箱。 日本以 36,000 個標準箱排名第八,增長了 29%。

按專案(HS編碼)劃分,傢俱(HS94)同比增長16%至2850萬標準箱,機械(HS84)同比增長12%至190,000標準箱,塑膠(HS39)同比增長13%至1680萬標準箱,電子和電氣機械(HS85)同比增長8%至1540萬標準箱,汽車相關商品(HS87)同比增長20%至1040萬標準箱。 前10個專案中有8個實現了兩位數的增長。

因此,1-5月期間來自亞洲10個國家和地區的銷售額同比增長17%,達到780萬標準箱。 與2019年同期相比,增長了20%,遠高於疫情前的水準,按國家和地區劃分,除臺灣、日本和香港外,所有國家都出現了兩位數的增長。

5月全球對美國出口234萬標準箱,同比增長12%,1-5月累計出口13%至1106萬標準箱。

 

Quote 至《日本海事新聞》2024/06/17 Daily Edition Page 1

日本―アジア航路、1カ月先まで満船。中国など高運賃貨物を優先、減便の動きも

日本―アジア航路で、スペース不足が深刻化している。船社、航路にもよるが、関係者によるとおおむね1カ月先の7月中旬まで、ブッキングが取れない状況だという。中国発など高運賃貨物が優先され、日本貨物のアロケーション(割り当て)削減が響いているようだ。中国発着航路や、同じく高収益が期待できる基幹航路などに船舶を回すため、日本発着の域内航路の減便を検討する船社も出ているようだ。スペース逼迫(ひっぱく)は10月の中国・国慶節まで長期化するという見方もある。

状況は航路によって異なる。日韓航路、日中航路などのシャトル航路では現時点で大きなスペース問題は起きていない。一方で、中国貨物、韓国貨物などとスペースを取り合う海峡地航路、ベトナム航路などは値上がりが激しく、スペースが取りづらい状況だ。マレーシアやインド向けでは、3000―4000ドル台まで運賃が上昇しているという。

要因はさまざまだが、世界的なコンテナ輸送の混乱に伴う、運賃の上昇がアジア域内航路にも影響を及ぼしていることが大きい。また、アジア域内のハブであるシンガポールの混雑が悪化していることで、インドやミャンマーなど日本から直航便のない航路のスペース確保が困難になっている。

マレーシア・ポートクランなど他港での積み替えの動きもあるが、この結果、混雑は他のアジア港にも波及している。

また、これまでアライアンス船社などが基幹航路の一部で域内貨物を集荷する「ウエイポート輸送」を行っていたが、高運賃の遠洋航路貨物にスペースを当てるために、同輸送を中止。域内専業社のサービスのスペース不足に拍車を掛けているようだ、

運賃上昇傾向は、多くの関係者が秋口まで続くとみており、アジア航路の状況も短期的な改善は難しいと予想される。

台湾船社ワンハイラインズの日本法人は先週、顧客に出した通知で「多岐にわたる要因が同時進行しており、従来のようなサービス提供が非常に難しくなってきている」と説明し、「従来通りの形でのブッキング対応が難しい」ことに対する理解を求めた。

運賃の高い基幹航路や中国発着航路に船舶、コンテナが流れ、日本―アジア航路で船積みが難しくなるという、コロナ禍の初期と同じ様相を呈してきたが、ある近海船社日本代理店担当者は「スペース逼迫のスピード感はそれ以上」と語る。

需給逼迫時、スペースを確保するために中国荷主はマーケット価格プラスアルファで対応するが、安定的な運賃を重視する日本の荷主は極端な値上がりを嫌う。

アジア船社などは「交渉に時間がかかるなら、日本のアロケーションは他のアジアに回す」と、コロナ禍より思い切った判断で、スペース組み替えに動いているようだ。日本の営業担当者は「本社の方針に沿って提示した運賃に怒り出す荷主もいる。正直板挟みだ」と頭を抱える。

特に東南アジア直航便がほとんどない地方港荷主は、釜山や中国・上海などで中韓発着サービスに接続せざるを得ないが、中韓貨物の運賃に対抗できず、船積みが難しくなるケースも出ている。また、一部船社は、日本発貨物を無理に集荷せず、中国・韓国へのコンテナ回送を優先しているという。

一方、地方港サービスを手掛ける船社の日本代理店にとっては、売り上げが立たなければ死活問題にもなる。「日々レートが上がる中、実際に荷主にとってどの程度の水準まで許容可能か、丁寧に聞き取りを行い、少しでも受け入れ可能な運賃提示をするべく努力している」(韓国船社日本総代理店)という。

 

引用至《日本海事報》2024年06月12日 デイリー版1面

ドライ船、航海距離31%増加。パナマ運河、通航隻数は7割減

国際海運団体BIMCO(ボルチック国海海運協議会)のリポートによると、パナマ運河の通航制限を受けて、2024年1―4月に同運河を通航したドライバルク船の隻数は前年同期比74%減少した。同期間にパナマ運河を通航したドライ船の航海距離は31%増加した。ドライ貨物の通航量は減ったが、航海距離が増えたことで、トンマイル(輸送重量距離)では1%減となった。

フィリペ・グベイア海運アナリストは「航海距離が伸びていなければ、荷動き減少でケープサイズ以下の中小型バルカーのトンマイル需要は2%減少していた可能性がある。市況が前年同期を20―30%上回ることもなかっただろう」との見方を示した。

ドライ貨物の通航量が減少した主因は、米国から東アジアに向かう穀物の鈍化だ。中国は米国に代わりブラジルからの穀物輸入を増やした。それらはアフリカ大陸南端の喜望峰経由で運ばれる。

パナマ運河を通航する貨物の34%を、米国産を中心とする穀物が占める。石炭、鋼材、肥料、ペトコークなどのドライ貨物も輸送されるが、通航制限導入後もそれら貨物の荷動きは安定している。

ドライ船はコンテナ船のようにスケジュールが決まっていないため、パナマ運河の通航枠を予約することが難しい。ドライ船社の多くが喜望峰回りかホーン岬回りを選択した結果、輸送距離が伸びた。

 

引用至《日本海事報》 2024年05月30日デイリー版2面

コンテナ運賃、急騰 南北航路にも波及。コロナ禍の混乱再来 懸念も

コンテナ運賃の急騰が続いている。アジア発欧米向けだけでなく、南米向けやアフリカ向けなど南北航路でもスペースが逼迫(ひっぱく)。先週末までの上海発南米東岸向けコンテナ運賃は20フィートコンテナ当たり7000ドルを超えた。これだけの高騰はコロナ禍の混乱が生じた2022年以来。アジア諸港での港湾混雑も深刻になっており、シンガポールでは常時3―4日の沖待ちを余儀なくされる状況という。物流関係者の間では「コロナ禍のサプライチェーン混乱の再来」という懸念が高まっており、予断を許さない状況だ。

「あるフォワーダーが船社に対し、日本発欧米向けで週当たり一定のスペースを確保できるなら、40フィート型でFAK(品目無差別)レートプラス4000ドルを支払うと言ったらしい」。こんな話が広まるほど、足元のスペース不足は深刻となっている。

既に多くの船社で、6月発アジア発欧米向けのスペースがフルブッキング状態となりつつあるようだ。船社は6月中旬以降、FAKレートの引き上げを予定しているが、「そもそも6月はもうスペースは取れないのでは」(フォワーダー)と諦めている声も出る。こうした航路環境のため、NVOCC(海上利用運送事業者)などは船社に対してFAKレートに上乗せした運賃を支払わざるを得ず、スペース確保に四苦八苦している。

こうした激しい値動きはアジア発では多いが、日本発でもここまで厳しいのは21―22年以来。「完全にコロナ禍の時の混乱の再来になりつつある」。あるフォワーダー関係者はこう嘆く。

では本当にコロナ禍の再来なのか。今後の見方は分かれる。

「欧州向けの混雑は、中国EV(電気自動車)の関税引き上げ前の駆け込み需要など、一過性の要因も強いのでは」との指摘は根強い。米国では8月から中国EVに100%関税が課せられるほか、今秋の米大統領選挙で対中強硬姿勢を見せるトランプ氏が当選すれば、中国製品への関税引き上げも予想されることも、前倒し出荷につながっているようだ。一定量が出荷されれば、輸送需要が平準化する可能性もある。

4月からのコンテナ市況の急上昇は、紅海情勢の悪化や荷主による安全在庫積み増しによる前倒し出荷など、コロナ禍の巣ごもり需要に基づいたものではない。また20―21年ごろは新造船竣工量が限定的だったが、24年は新造船だけで200万TEUも増えることが予想される。こうしたコロナ禍との違いもあり、一部では当時のような状況にはならないのではとの意見もある。

それではなぜ、コロナ禍と状況が似てきているのか。コンテナ輸送にとって不可欠なコンテナ機器の供給ができなくなっていることも大きいとの見方がある。

昨年末からの紅海での混乱により、欧州・北米東岸航路では喜望峰ルートへの迂回(うかい)にシフト。このためアジアとの輸送日数が2週間以上増加。アジア諸港、特に中国での空コンテナ在庫が減少した。またアジアから地中海地域はスエズ運河を通航できなくなったことで、各船社がアルヘシラスなど西地中海のハブ港経由でのルートに変更。そのため、地中海諸港やハブ港での混雑が発生。アジアへの空コンテナの回送が遅れていることも指摘されている。

港湾混雑は地中海諸港だけでなく、アジア諸港でも頻発している。世界最大のトランシップ(TS、積み替え)港であるシンガポールではバース接岸前に3―4日の沖待ちが常態化。上海、深圳など中国ハブ港で混雑も悪化し、TSに支障が生じていることが混乱に拍車をかけている。

こうした混乱の影響により、これまで基幹航路に限られていた需給逼迫が南北航路やアジア域内に波及。外的環境は必ずしも同じではないが、混雑に至るプロセスはコロナ禍の混乱と同じ状況になりつつある。

この状況はいつまで続くのか。いまの混雑状況を考慮すると、7―8月ごろまでという当初の予測から、最近では10月上旬の中国・国慶節まで続くという見方も出てきている。

 

引用至《日本海事報》2024年05月30日デイリー版1面

自動車船、発注残200隻に。需給緩和か均衡か

完成車などを運ぶ自動車船の新造発注残が約200隻まで積み上がった。自動車船の世界の船腹量は約700隻で、発注残は輸送能力換算で既存船の4割近くに上る。そのため、新造船の竣工が集中する2025―26年に船腹需給が緩む可能性が懸念されている。一方で、自動車船のスペース不足でコンテナ船などに流れた貨物が自動車船に回帰することで需給がバランスした状態が続くとの見方もある。

欧州の自動車船大手ワレニウス・ウィルヘルムセンによると、今年3月末時点の世界の自動車船(2000台積み以上)の船腹量は707隻。標準車換算の輸送能力は約420万台。

それに対し、自動車船の新造船発注残(2000台積み以上)は199隻。輸送能力換算で発注残は既存船の約38%に当たる。

新造船の竣工時期は24年が35隻、25年が71隻、26年が58隻、27年が30隻、28年が7隻。

自動車船の発注残は、20年ごろに20隻を割り込むほどまで落ち込んだ。船舶の供給過多で運賃競争が激化し、オペレーター(運航会社)が再投資できない状況が続いたことが主因だ。

その後、荷動き回復と運賃改善を受け、オペは船舶投資を再開。オペに船腹を拠出する船主も投資に踏み切った。それにより新造発注残は4年ほどで10倍に拡大した。

自動車船を巡っては、中国発の荷動き急増が需給逼迫(ひっぱく)の一因となっている。中国船社が自国の荷主の輸送ニーズに応えるため、自前の船隊構築に乗り出したことも発注残を押し上げた。

自動車船の発注残がリーマン・ショック前の過去最高水準近くにまで積み上がったことに対し、海運関係者は需給バランスが崩れる要因になり得ると危惧している。

「船舶の供給の伸びを上回るほどに完成車の海上荷動きが伸びるとは考えにくい」(海運関係者)ためだ。

自動車メーカーの生産回復を背景に、足元では輸送需要は旺盛で船腹需給はタイトな状況が続く。ただ、輸送需要を左右する自動車販売市場にやや陰りが見られるという。

中国の今年1―3月の自動車輸出は前年同期比33%増の132万台だった。順調に伸びてはいるが、伸び率は鈍化し、欧州向けEV(電気自動車)輸出が規制される可能性もある。

市場関係者は「スエズ運河の迂回(うかい)がなければ、自動車船の船腹需給は緩和していたかもしれない」と、事業環境に変化の兆しが見られるとの認識を示す。

一方で、新造船の供給増加により自動車船の需給逼迫は解消するものの、需給がバランスした状況は25年まで続くとの見方もある。

仮に船腹余剰になれば高齢船のスクラップ処分が進み、減速運航も広がるとみられるためだ。他の船種で運ばれている自動車が自動車船に回帰する可能性もある。

中国の23年の自動車輸出台数は、前年比57%増の約522万台に拡大し、日本を抜いて世界最大の自動車輸出国となった。

中国から輸出される完成車のうち、4割程度がコンテナ船やオープンハッチ型バルカーなど他の船種で運ばれているとの情報もある。

輸送品質や効率に関しては、自動車を運ぶために設計された自動車船に分がある。自動車船の供給が増えれば、他の船種で運ばれている完成車が回帰する可能性が高い。

 

引用至《日本海事報》2024年05月27日デイリー版1面

高齢タンカー、船価下落続く。「影の船団」需要減退。「もしトラ」も影響

中古船市場で高齢タンカーの価格下落が続いている。船齢20歳のVLCC(大型原油タンカー)価格は昨春の4800万ドル(約72億円)強をピークに足元は3割安の3550万ドル(約53億円)に低下した。経済制裁対象のロシア原油を輸送する高齢タンカー船腹、通称「影の船団」に対する規制強化で高齢船の投入先が縮小しているのが主因だ。さらに今秋の米大統領選挙でドナルド・トランプ前大統領が当選した場合、ロシア制裁の行方が不透明になる可能性も見据えて、ギリシャ船主らは投資の重点を新造タンカーにシフトしている。

「ギリシャ船主が高齢タンカーに興味を失い、新造発注に力を入れている。〝もしトラ〟(もしかしたらトランプ)も見据えているようだ」

タンカーブローカー関係者は最近の船舶投資トレンドについてそう指摘する。

米国の運航管理システム大手ベソン・ノーティカル傘下の船価鑑定会社ベッセルズ・バリューによると、船齢20歳のVLCC価格は2021年まで2200万―2500万ドルで推移していたが、22年2月のロシアのウクライナ侵攻後に急騰。欧米の経済制裁に伴う「影の船団」需要により、昨年4月のピーク時には約2倍の4821万ドルに達した。

「影の船団」はロシア原油のインドやトルコ、中国向け輸送を担い、通常トレードでは使われにくい船齢15歳以上の高齢船が投入され、制裁リスクと引き換えに高運賃を稼いだ。

しかし昨年半ば以降、欧米諸国は「影の船団」に対する調査強化や制裁の厳格化を推進。米ブルームバーグによると、「ギリシャのタンカー船主の多くはロシア産原油の取引から手を引いた」という。

一方、新鋭タンカーについては世界の新造発注残が依然として低水準なことから、中長期的にタイトな船腹需給が期待できる。

紅海などでの地政学リスクの高まりによるトレード変化で市況高騰が続いていることもあり、今年に入りギリシャ船主などが「タンカーの新造発注に力を入れている」(ブローカー関係者)。

ベソン・ノーティカルの集計によると、1―4月の世界のタンカー新造発注隻数は前年同期比32%増の104隻となった。船型構成はMR(ミディアムレンジ)型プロダクト船が37%を占め、次いでVLCC31%、スエズマックス19%、LR(ラージレンジ)2型プロダクト船12%、アフラマックス1%となっている。

 

引用至《日本海事報》2024年05月24日デイリー版1面

コンテナ運賃、想定外の急騰。年初来高値、長期化は懐疑的

アジア発北米西岸向けコンテナ運賃が17日付までに40フィートコンテナ当たり5000ドル超となり、年初来の最高値を更新した。欧米諸国向けを中心にコンテナ運賃は4月末から急上昇したが、5月1日付の北米向けサービスコントラクト(SC)更改時期を挟んでの急騰は異例。アジア積みではすでに先週から、SC契約運賃でのブッキングが取りにくくなっているほか、急な需給引き締まりでスペースが足りずかなりのロールオーバー(積み残し)も出ているようだ。荷主に加え、船社側もこれだけの需給逼迫(ひっぱく)は「想定外」のようで対応に追われている。想定外の盛り上がりだが、「経済状況とリンクしていない可能性もあり、長期化はしないのでは」との意見もある。

 

「北米向けSC締結直後にこれだけ(市況が)高騰した例は例がないのでは。5月に入ってブッキングが取りづらい状況が続いていたが、ここまでになるとは」

荷主企業の関係者は急な状況変化に驚きを隠せない。

17日付の上海航運交易所(SSE)によれば、北米西岸向けは5025ドル、北米東岸向け6026ドルとなり、いずれも3週間連続の値上がり。4月中旬からだと実に両岸向けとも2000ドル以上も上昇している。

紅海での攻撃に伴って昨年末から急騰したコンテナ運賃市況だったが、喜望峰への迂回(うかい)ルートの定着に伴って3月以降、徐々に軟化。

もともと今年は大量竣工に伴う需給悪化が想定されていたこともあり、5月の北米SCを含めて船社と荷主の運賃交渉は2023年度に比べて若干、値下がりした金額で決着したようだ。

米大手小売業向けなどのSC契約は、北米西岸向けが1400ドル台、北米東岸向けが2200―2400ドル前後。3月時点では北米西岸向けFAK(品目無差別運賃)で1400ドルが出ているなど、軟調基調だった。

ところがBCO(大手荷主)向けの北米SC交渉が決着した4月中旬以降、スペース不足が強まって市況が上昇。5月を挟んで一気に高騰するなど異例の展開となった。この状況には荷主やNVOCCだけでなく船社側も想定外だったようで、ハパックロイドのロルフ・ヤンセンCEO(最高経営責任者)も4月からの市況急騰には「どこからきたのか分かりにくい」とコメント。船社側にとってもこの急騰は想定外との認識をにじませている。

今回の市況急騰の背景には、米国経済の堅調や地政学リスクに対応した発注前倒し、小売事業者による在庫補充などに加え、喜望峰など迂回ルート定着による過剰船腹の吸収、紅海迂回で空コンテナ回送遅延によるアジア側でのコンテナ不足、中国諸港(上海、青島、寧波)、地中海諸港での混雑などが遠因とも指摘されている。

■安全在庫水準高まる

拓殖大学・松田琢磨教授 北米経済が堅調のため輸入者が在庫補充に転じたことに加え、欧米諸国でも紅海情勢を受けたリードタイムの延びや物流停滞のリスクを懸念して安全在庫水準を高める動きが荷主の需要を強める働きをしている。一方でインバランスの拡大や各地港湾での混雑がサービスの供給をする上で制約となっており、新造船の供給も追加的な船腹需要を下回っている。この結果、船腹需要が供給を上回る状態となってスポット運賃の上昇につながっているものと考えられる。

ただし、欧州では需要が基礎的な経済状況とリンクしていないとの話もあることから、この状況が長続きするかどうかについて懐疑的な見方もあり、下半期以降に供給過剰に戻るとの見通しを示す一部船社もある。

 

引用至《日本海事報》2024年05月21日デイリー版1面

ベソン、サービスを有機的に結合。ライリー社長、買収戦略 推進

海運会社・用船者向け運航管理システム「IMOSプラットフォーム」を提供するベソン・ノーティカル(米ボストン)は16日、東京都内で海事メディア向けに会見を開いた。ショーン・ライリー社長兼COO(最高執行責任者)は、英ベッセルズ・バリューや英シップフィックスなど4社を買収したことに触れ、「各社の製品・サービスをIMOSに有機的に結び付け、ユーザーのデータに基づく意思決定を支援する」と語った。

会見にはライリー氏のほか、チーフプロダクトオフィサーのエリック・クリストファーソン氏、チーフコマーシャルオフィサーのラス・ハバード氏が出席。日本拠点の光田時雄氏、萩原芳廣氏も同席した。

ライリー氏は同社が開発・提供する運航管理システムについて、「年間1220億ドル、年60億トンの貨物取引をサポートしている」と説明。「海上商取引を推進する標準プラットフォームの提供を目指している」と同社のビジョンを紹介した。

同社の運航管理システムは、世界中の海運会社や荷主に広く利用されている。日本の主要な海運会社も導入している。ベソンは顧客ニーズに対応し、継続的に機能の拡充を図っている。

ベソンはサービスメニューのさらなる充実を図るため、ここ数年でベッセルズ・バリューやシップフィックス、ノルウェーのオーシャンボルト、米国のQ88の買収を決めた。

デジタル化や脱炭素化などを受け、海運業界は変革期にある。ハバード氏はオイルメジャーなどが船舶からのGHG(温室効果ガス)排出量を報告する仕組みの標準化を進めている事例を紹介し、「コラボレーションと標準化の重要性が増している」と指摘した。

EU―ETS(欧州連合の排出量取引制度)など新たな規制への対応に関して、クリストファーソン氏は「顧客とワーキンググループを設置し対応を検討している。ソリューションは開発後も使いながら改善を重ねる手法で対応している」と述べた。

 

引用至《日本海事報》2024年05月17日デイリー版1面

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