OA、提携5年延長。2032年まで、4社協調を維持

仏CMA―CGM、中国COSCO、台湾エバーグリーン、香港OOCLの4社で構成する定航アライアンス「オーシャンアライアンス(OA)」は27日、提携期間を5年間延長して2032年までとすると発表した。現行の契約では27年までとなっていた。コンテナ船社のアライアンスを巡っては25年1月末で2Mが解体する一方、独ハパックロイドがザ・アライアンス(TA)を抜けてマースクと新アライアンス「ジェミニ」を結成することが決まっている。動向が注目されていたOAは発足当初のメンバーで32年まで続くことになる。

OAは16年4月に現行の4社で結成を発表。17年4月からアジア―北米、欧州、大西洋など主要7航路を提携範囲としてサービスを開始した。発足時点での契約期間は17年からの5年間に、オプションとして5年延長可というものだったが、19年に5年延長を決定。27年までの契約延長が確認されていた。

OAメンバーの一社であるCMA―CGMのルドルフ・サーデCEO(最高経営責任者)は、「今回の5年延長の決定は、われわれが顧客ニーズに応え、信頼性の高いサプライチェーンを提供していくということを約束するものである」とコメントしている。

ハパックロイドの25年1月末でのTA離脱が決まったことで、業界内ではOAメンバー船社とTAによる提携も一時、うわさされていた。しかし、今回の延長決定でOAの4社体制は継続することとなり、25年以降も3大アライアンスの中で発足当時の構成メンバーが変わらない唯一のグループとなる。

一方、ハパックロイド離脱後のTAについては、英海事調査機関ドゥルーリーは「北米航路ではワンハイラインズが、欧州航路ではMSCがTAの提携相手になるのでは」との見方を示している。その一方、ハパックロイド離脱後のTAについては、北米西岸航路では引き続き豊富なネットワークを維持できるものの、大西洋航路の維持が厳しくなると指摘している。

 

引用至《日本海事報》2024年02月29日デイリー版1面

三光汽船、海運業90年の歴史に幕。後任確保・新規投資 難しく

三光汽船(本社・東京都港区、田端仁一社長)が海運業の歴史に幕を下ろす。年内に最後の保有船「Sanko Hawking」(8万2500重量トン、2021年に常石造船で竣工)を売却する。同社は14年に2回目となる更生手続きを終了し、通常会社として復帰していた。近年は黒字転換していたが、社長の後任人事が難航。後継者不足や新規投資が難しくなり事業の継続が困難になった。「海運業界の風雲児」として波乱の歴史をたどった三光汽船は創業から90年で海運業から撤退する。

 

三光汽船は1934年に大阪で創業。ほどなく元衆議院議員の故河本敏夫氏が社長に就任すると、戦後の復興に合わせ船隊規模を増加させた。

同社は63年の海運集約に参加せず、「一匹狼」「自主独立」を標榜(ひょうぼう)する。

71年に時価発行増資と第三者割当増資で資金調達を拡大。これを新造船の大量発注の資金に回すと同時に72年にはジャパンライン(当時)株を買い占め、「三光商法」ともいわれた。

一方、石油ショックで不況に直面すると大量の新造船が不採算船となり85年に当時として戦後最大の5200億円の負債を抱え倒産、1回目の会社更生法適用を申請した。

98年に1回目の更生手続きの終結に伴い、00年には同社生え抜きの松井毅氏が社長に就任した。

リーマン・ショック前の07―08年には売上高2293億円、経常利益797億円の過去最高の業績を記録。売上高経常利益率は35%と当時の日本の海運業界でもトップの利益率を誇った。

三光汽船はリーマン・ショック前の好景気に大量の中型バルカーを発注。保有船35隻に対し用船150隻という「過度なレバレッジ経営」(他人資本=船主に頼る経営)に傾注していく。

くしくも85年の倒産と同様に、過度な投資後の不況が同社を直撃する。

中型バルカーだけでなく、オフショア支援船を数十隻規模で発注したことも経営悪化に拍車を掛けた。

12年7月に負債1558億円、用船料の支払い債務4056億円を抱え東京地裁に2回目となる会社更生法適用を申請、13年10月に更生計画の認可を受けた。

再建に向けスポンサー探しに難航するが、13年に米投資金融のエリオットが投融資枠の設定を含め50億円の支援でスポンサー契約を締結。

同社から田端氏が管財人兼社長として就任すると更生計画時点で44隻だった船隊を28隻までスリム化した。海運市況の上昇もあり、わずか1年後の14年12月に更生手続きを終結させ通常会社に戻った。

更生手続き終了後、バルカー、LPG(液化石油ガス)船、アフラマックス、オフショア船、ケミカル(石油化学製品)船などを運航していたが、15―16年にかけ円高で業績が不振に陥る。

段階的に保有船を縮小してきたが、ここにきて11年間、社長を務めた田端氏の健康問題に伴う後継者不足、新造船への投資が難しくなった。

現在、最後の保有船1隻について売却先の選定に入っている。数々の時代の荒波を乗り越えた三光汽船の海運業の歴史に幕が下りることになる。

 

引用至《日本海事報》2024年02月26日デイリー版1面

WSC、従来燃料にフィー課徴を。MEPCに提案、新燃料と価格差埋める

主要コンテナ船社などによる国際海運団体世界海運評議会(WSC)は15日、クリーン燃料の利用促進のための新たな仕組み「グリーンバランスメカニズム」(GBM)を3月に開催される国際海事機関(IMO)・海洋環境保護委員会(MEPC81)に提案すると発表した。MEPCで議論されてきたフィーベート・メカニズムの一種で、化石燃料に対して料金(フィー)を課徴し、クリーン燃料に配分することで、両者の価格差を埋め、コストの平均化を目指す。ウェル・ツー・ウェイク(生産から船上使用までの全工程)でGHG(温室効果ガス)削減量が大きければ大きいほど、割り当てられる分配金も増加する仕組みだという。

IMOでは2050年ごろまでに海運からの排出量ネットゼロを達成するという目標を掲げる。この目標達成へ、一部のコンテナ船社、自動車船社は環境負荷の低い新燃料に対応する船舶を建造・運航しているが、これら新燃料の価格は従来型燃料の3―4倍と高いことに加え、供給量が少ないため、燃料転換が進んでいない。

WSCでは、クリーン燃料での運航や、燃料供給業者の生産への投資を促進するために、グローバルな規制が必要と説明。GBMでは、化石由来燃料とクリーン燃料の価格を、最低限のコストで埋めるためのGHG価格設定に新たなアプローチで取り組むとしている。

GBMにより、就航済みおよび今後竣工する二元燃料船は、新燃料が経済的に利用可能な段階を待つことなく、(割当金により)クリーン燃料を利用することができる。WSCでは、規模の経済によりクリーン燃料の生産拡大にもつながり、経済効率の高い方法で、クリーン燃料のコストを低減できるとしている。

WSCのジョン・バトラー議長兼CEO(最高経営責任者)は今回の新提案の狙いについて「世界貿易の原動力を化石燃料からグリーンエネルギーに切り替えるには時間がかかり、民間・公共の巨額投資が必要となる。世界経済に対するコストを最小限に抑え、気候変動のニーズに確実に対応することがわれわれの共通の責任だ」と説明する。

 

引用至《日本海事報》024年02月20日デイリー版1面

ONE、北米西岸 新サービス。1.3万TEU型7隻、ワンハイと協調

オーシャンネットワークエクスプレス(ONE)は15日、アジアと北米西岸を結ぶ新サービス「AP1」を開始すると発表した。台湾船社ワンハイラインズと共同で運航し、1万3000TEU型のコンテナ船計7隻を投入。開始時期は規制当局の承認を経て、4月末から5月ごろを予定している。アジア―米国西岸航路ではパナマ運河の通航制限や紅海情勢の悪化に加え、北米東岸労使交渉も控えており、今後需要の増加が見込まれている。こうした中、ONEは加盟する「ザ・アライアンス(TA)」外のワンハイと新サービスで手を組むことを決めた。

 「AP1」は台北や蛇口と米国西海岸を直航で結ぶ太平洋横断サービス。寄港ローテーションは、ハイフォン▽カイメップ▽蛇口▽厦門▽台北▽寧波▽上海▽ロサンゼルス▽オークランド▽蛇口▽ハイフォン。運航船はONEが2隻、ワンハイが5隻投入する。

 米国西岸港からベトナム・ハイフォンまでは19日、カイメップまでは22日で接続し、競争力のあるトランジットタイムを提供する。

 ワンハイは既存の北米西岸サービス「AA3」を改編し、「AP1」にアップグレード。ONEはアジアから米国西岸への貨物量の持続的な増加を背景に需要に対応する新サービスの開設を決めた。

 ONEの栗本裕マネージングディレクターは「AP1の導入は、この重要な貿易レーンに対するONEの揺るぎないコミットメントを強調するものだ」とコメントしている。

 マースクとハパックロイドによる「ジェミニ」結成の発表を受け、TAの今後の動向が注目を集めている。船腹量では最大のハパックロイドが離脱することで、別の船社やアライアンスと提携するのではとの見方も出ており、海外報道ではその候補としてワンハイラインズも挙げられていた。新サービスの開設はTAの今後の戦略においてさらなる憶測を呼びそうだ。

引用至《日本海事報》2024/02/19 每日版

オリックス、三徳船舶を買収。保有67隻・船舶管理事業を承継。

オリックスは15日、船主大手の三徳船舶(本社・大阪市、多賀純一社長)の発行済み株式を全て取得すると発表した。三徳船舶の保有船67隻や、船舶管理事業をはじめ全事業を承継する。

 オリックスは三徳船舶の現株主の創業者一族と株式譲渡契約を締結。3月中をめどに全株式を取得する。

 三徳船舶はバルカーや自動車船、コンテナ船などを67隻保有し、第三者保有船の船舶管理事業も手掛けている。

 オリックスは三徳船舶の買収により、包括的な船舶管理を自社で行うことが可能になり、さらに第三者保有船のアセットマネジメントサービスも手掛けていく方針。

 三徳船舶は1972年に前社長の多賀征志氏が設立。昨年4月に多賀征志氏が亡くなったことで、多賀純一氏が二代目の社長に就任した。

 オリックスは買収にあたり「グループの国内外の営業ネットワークや企業経営ノウハウ、強固な財務基盤などを生かし、三徳船舶と共に収益性向上と事業成長を図る」としている。

引用至《日本海事報》【速報】2024年02月19日

LNG船、船腹需要に影響か。米国輸出許可停止、1億トン分 計画遅延も

米国のバイデン政権が打ち出したLNG(液化天然ガス)輸出許可の一時停止の影響が注目されている。輸出許可済みのLNGプロジェクトは影響を受けず、中東のカタールからの供給拡大も見込まれるため、市場への影響は限定的とみられる。だが、新規プロジェクトの稼働が遅れれば、船腹需要に影響する可能性がある。

 日本エネルギー経済研究所は5日、米国のLNG輸出許可一時停止の影響などをテーマにウェビナーを開催した。

 その中で資源・燃料・エネルギー安全保障ユニットガスグループの柳沢崇文主任研究員は「2026年以降に立ち上がる予定の約1億トン分のLNGプロジェクトが影響を受ける可能性がある」と指摘した。

 影響を受ける可能性があるプロジェクトには、「コモンウェルスLNG」「CP2LNG第1期」など10件(表の 1.、 2.)を挙げた。供給能力は合計で年間1億1300万トン規模に上る。

 「CP2LNG第1期」は、米ベンチャーグローバルLNGが主導するプロジェクト。日本の発電大手のJERAやINPEXが長期購入契約を結んでいる。同プロジェクトについて、柳沢氏は「審査が遅延する可能性が大きい。FID(最終投資決定)が遅れるリスクもある」と述べた。

 JERAとINPEXは同プロジェクトから、それぞれ年100万トンのLNGをFOB(本船渡し)契約で購入する。LNG船の確保も進めているとみられる。引き取り開始時期が遅れれば、海運会社との調整が必要になる可能性もある。

 バイデン大統領は1月26日、エネルギー省(DOE)によるLNG輸出許可の判断を一時停止すると発表した。停止期間は審査基準の見直しが完了するまでとしている。

 米国から自由貿易協定(FTA)を結んでいない国にLNGを輸出する際は、連邦エネルギー規制委員会(FERC)の承認を得た上で、DOEの審査を受ける必要がある。

 今回のDOEによる輸出許可の一時停止は、現行の審査基準は策定から5年近くが経過し、LNG輸出に伴う米国内のエネルギー費用上昇の可能性やGHG(温室効果ガス)排出の影響を十分に考慮できていないことが理由だ。

 DOEも声明を発表。輸出許可済みの年間3・5億トン分のLNGプロジェクトは影響を受けず、欧州やアジアの同盟国への供給能力にも影響はないと説明した。

 輸出許可済みの3・5億トンは、稼働済みの事業が約1億トン、表の 3. 4. 5.の18件のプロジェクトの計約2億トン、メキシコLNG設備経由の輸出が約0・5億トン。

 米国は現在、年間約1億トンのLNG輸出能力を持つ。23年は豪州やカタールを抜き世界最大のLNG輸出国になったとみられる。さらに、建設中のプロジェクトが稼働すると30年までに輸出能力はほぼ2倍になる。

 柳沢氏は今回の輸出許可一時停止を受けて「国内向け政治メッセージの意味合いが強い印象だ」とした上で、「米国のLNGプロジェクト開発の不透明感が増す」と言及。米国産LNG購入の消極化、新規プロジェクトへの投資の停滞などの影響が考えられるとした。

 米国以外のLNGプロジェクトへの影響については、「カナダの案件にアジアの買い主からの需要が増す可能性がある。その他地域のプロジェクト開発にも追い風になる可能性がある」(柳沢氏)。

 LNG市場への影響に関しては、「カタールのLNG増産計画もあり、現時点で市場への影響は限定的」と予測。ただ、「輸出許可の一時停止の期間によって影響は変わってくる」との見方を示した。

エバーグリーン、欧州域内でXプレスと提携。メタノール燃料で環境負荷軽減

台湾船社エバーグリーンマリンと、シンガポールに本社を置くフィーダー輸送大手Xプレスフィーダーズは1日、Xプレスが欧州域内で運航するメタノール燃料対応二元燃料船でエバーグリーンのコンテナを輸送することについて、基本合意書(MOA)を締結したと発表した。代替燃料のメタノールを利用することで、欧州域内での環境負荷を軽減する。

 両社は欧州初となる、グリーンメタノールを燃料とするフィーダーネットワークを構築していく考えだ。

 Xプレスは2024年4―6月期から26年半ばにかけて、二元燃料船14隻の引き渡しを受ける予定で、これらを欧州・地中海エリアで運航する予定だ。温室効果ガス(GHG)排出量を、基準年(08年)比で35年までに20%削減、40年までに50%削減、50年までにネットゼロとするという目標に沿った船隊整備となる。

 Xプレスはエバーグリーンとの提携に先立ち、蘭燃料供給企業OCIグローバルとグリーンメタノールの供給に関して契約を締結。廃棄物・残渣(ざんさ)物など有機物から生成される再生可能エネルギーで、欧州市場でのバイオ燃料を対象とした国際持続可能性カーボン認証(ISCC―EU)も取得しているという。

 Xプレスのフランシス・ゴーCOO(最高執行責任者)は「われわれは二元燃料船運航の先駆者として、GHG排出削減目標達成へ必要な措置を講じていく。今後2社で連携し、港湾、燃料供給企業、物流会社、BCO(実荷主)などに対して、持続可能な輸送に参加するよう呼び掛けていく」とコメントした。

引用至《日本海事報》2024年02月07日 デイリー版3面

商船港運、神戸KICTに重量物上屋。保税施設も移設、構内輸送で大幅効率化

【関西】商船港運(神戸市)は2月、神戸港・ポートアイランドの神戸国際コンテナターミナル(KICT)内に梱包もできる重量物上屋を新設し、供用開始する。併せて同じ敷地内に保税上屋の神戸フレートセンター(KFC)も移設、貨物の梱包からコンテナへのバンニング、ヤード搬入までを一気通貫で行う体制を構築する。未梱包の貨物を搬入すれば、あとは同一敷地内の構内輸送だけとなり、作業の大幅な効率化が実現する。同社によると、オンドックでのこうした仕組みは全国でも珍しいという。

 KICT内に阪神国際港湾会社が建物を新設、親会社の商船三井が借り受けた上で、商船港運が運営する。KICT西側の敷地約2万4970平方メートルに重量物上屋と保税上屋を建設、1月に完工した。うち重量物上屋は延べ床面積2100平方メートル、軒下面積1200平方メートルで、天井クレーン30トン、15トン各1基と、5トン2基を備える。

 一方、KICT内での移設となる新KFCは延べ床面積4200平方メートル、軒下面積2000平方メートル、接車バース16バースで、大小フォークリフトやリーチスタッカー、ベール&ロールクランプ、構内用低床シャーシを取りそろえる。

 梱包もできる重量物上屋とKFCを同じ敷地内に併設する大きなメリットに、貨物の横持ちが不要となる点がある。荷主が未梱包の貨物を搬入後、重量物上屋で梱包し、そのまま構内のKFCでバンニングしてKICTのヤード内に搬入する流れだ。

 敷地がKICT内となることから、ヤード搬入時にターミナルゲートを通る必要はなく、積み付け済みのコンテナを構内ヘッドで本付け場所に直接運ぶことができる。これにより、港湾の効率化や機能強化に貢献する。

 横持ちをなくすことは、とりわけ大型の貨物にメリットが大きいという。オーバーゲージサイズの貨物などは神戸エリア内での横持ちだけでもコストがかさむが、今後同社は自前の低床シャーシを用いた構内輸送だけで対応が可能となる。

 バンニング後のコンテナは輸出通関を経てKICTのヤード内に保管でき、円滑に施設を稼働させて効率を高められるのも特徴だ。輸出貨物がメインとなるが、輸入も対応する。

 同社はKICTでの重量物上屋と新KFCの稼働で、特にプラント関連で潜在的なニーズがあるとみている。プラント物は貨物量が数千トンにも達するため、一気通貫サービスへの親和性が高い。

 新設の重量物上屋の天井クレーンを30トン対応にしたのも、重量物やプラント物への対応力を高める狙いがある。オープントップ、フラットラックといったスペシャルコンテナへの積み込みで用いる。

 これまで顧客層の大半が物流企業からの依頼で、実荷主の割合は約2割だった。KICTでの梱包・積み付け機能集約に伴い、同社はメーカーなど実荷主へのアプローチも強化する方針。

 また、同社は環境戦略の一環として、コンテナターミナルを含むGHG(温室効果ガス)排出量削減を図るため、保税上屋、重量物上屋および今後新設されるバンプールゲート屋上に、メガワット級(1210キロワット)の太陽光発電施設を設置する方針で調整を進めている。

 神戸港KICTは2025年、既存のPC15―17の3バースに同14を新たに加えて連続4バース化するとともに、共同運営体制も商船三井など4社に加え、六甲アイランドでターミナルを運営してきた川崎汽船も新たに参画することが決定済み。

 25年以降のKICTは神戸港の外貿コンテナの約4割を扱う西日本最大規模のCTに進化する。同時にターミナルを再編し、PC14の日新が隣の同13に移転、KICTとも連携し背後地の共通ゲートを共同利用する。

引用至《日本海事報》2024年02月07日 デイリー版1面

24年コンテナ運賃交渉、2次入札額上昇も。スエズ情勢で市況急変

コンテナ運賃交渉の先行きが不透明だ。2024年は大型コンテナ船の連続竣工などで需給が緩み、荷主優位の交渉となるとみられていたが、昨年末からスエズ運河などの情勢で運賃市場は大きく変化している。製造業など大手実荷主(BCO)は昨年11―12月に、船社やNVOCC(海上利用運送事業者)を招き、1次入札を実施。船社へのフィードバックが順次戻ってきているが、船社側は「1次の応札時とは状況が変わった。航路にもよるが、2次入札では(上方修正した)『出し直し』のような数字を提示せざるを得ない」(アライアンス加盟船社の日本法人)との姿勢を見せる。荷主と船社で市場に対する見方が分かれれば、交渉が長期化する可能性も高い。

 コロナ禍で暴騰したコンテナ運賃は22年半ばから徐々に軟化し、23年半ばまでにはコロナ禍以前の水準に収束した。

 主要航路である北米航路のサービスコントラクト(SC)更改では、23年は40フィート当たり2000ドル台前半で決着したが、24年は大型船の竣工などで、供給が需要を3%程度上回るという予想が多く、船社関係者は23年を下回る水準での妥結も覚悟していたようだ。

 しかし、昨年11月中旬からイエメンの武装勢力フーシ派が紅海・アデン湾を航行する船舶への攻撃を開始したことから事態は急変。12月にはコンテナ船での被害が相次ぎ、主要コンテナ船社がスエズ運河の航行を回避。アジア―欧州・地中海航路の多くが喜望峰経由に変更された。これにより、輸送日数が長期化。さらにスケジュール維持のために追加船腹も投入されることから、世界全体のコンテナ船供給量の5―6%が吸収され、需給引き締めにつながっている。

 実際、コンテナ運賃は昨年12月から上昇傾向にある。喜望峰経由の影響を直接受けた欧州航路だけでなく、アジア発北米向けも1月に入り急騰。スポットでは40フィート型では大手荷主のSC運賃の2―3倍の数字が出ている。

 一部スエズ経由欧州航路とのペンデュラム(振り子配船)サービスが影響を受けていることに加え、パナマ運河の渇水による通航制限から、北米東岸・内陸向けでも北米西岸からの鉄道輸送を選択するケースもあり、急速に需給が引き締まっている。船社はPSS(繁忙期割増料金)などを導入しているが、あまりにSC運賃とスポット運賃の差が開けば、SC貨物の積み残しなども出てくる可能性もある。

 紅海では15日に米国船籍のバルカー、16日にはギリシャ船籍のバルカーが相次ぎ被弾するなど、一般商船への攻撃は収まっていない。

 ある船社関係者は「スエズ運河の情勢が不透明なだけでなく、パナマ運河の渇水や、豪州での港湾ストなどの問題もある。さらに、今年は北米東岸労使交渉も控えており、不確定要素が多い。少なくともPSSなどの外出しは荷主に受け入れてもらわなければならないし、オールインにこだわる荷主に対しては、あらかじめピークを見越したような数字で対応せざるを得ない」と語る。

引用至《日本海事報》2024年01月18日 デイリー版1面

伊予銀行シップファイナンス部長・佐藤浩一氏。星港と連携、バランス重視

伊予銀行(本店・松山市)は、船舶融資の専門部署であるシップファイナンス部を愛媛県今治市内に置く。同社の船舶融資残高は2023年9月末時点で1兆円強まで伸びた。「瀬戸内を中心に東京、シンガポールに拠点を持つ強みを生かして日本の海事産業に貢献していきたい」と話す、シップファイナンス部長の佐藤浩一氏に同行の現状と展望を聞いた。(聞き手 山本裕史)

■新燃料船にも対応
 ――最近の船舶融資の特徴は。

 「脱炭素の潮流が強まっていることに伴い環境対応船が増えている。新燃料と併用のデュアル(2元)燃料船は船価が高いが、そうした船舶にはオペレーター(運航船社)の中長期用船が付いているケースが多い。当行では必ずしも用船契約の内容だけをもって審査を行っているわけではないが、高価格船では信用力のある用船者による定期用船契約の有無は審査判断の大きなポイントになる」

 ――用船先の海外と日本の比率はどうか。

 「最近、持ち込まれている案件では、おおよそ海外が8割、日本が2割というところだ。海外船社の用船案件が引き続き多いが、今後は邦船オペレーターの用船案件も増えてくるのではないかと期待している」

 ――新造船価格が高騰している。日本船主の新造船発注にはどう対応しているか。

 「新造船の発注については、日本船主の中にもばらつきがあると思う。企業与信の高い日本船主は26―27年の先物新造船、用船先未定で発注するケースもある。そういうケースでも、自己資金を一定程度まで引き上げてもらえば、融資対象になる。われわれの取引先の日本船主は数隻しか保有しない船主もいれば、相当数の隻数を保有する船主もいる。コーポレート(船主の企業与信)を見る場合も、こうした総合的なバランスを重視することが必要だと思っている」

 ――伊予銀行はS&LB(セール&リースバック、売買後の再用船)案件が少ない印象だ。

 「S&LB案件も数は少ないが融資実績はある。船主がBBC(裸用船)でオペに船舶を貸し出す場合、本船の船舶管理はほとんど全てオペが行うのが通常である。例えば危険地域への配船など、BBCにはリスクがあるというのが一般的な認識だ」

 「しかし、当行はS&LBだからやらない、BBCだからやらない、という考えではない。オペに依拠した契約なので、オペの与信、そして船主の与信、そうしたことを総合的に判断して融資の審査を行っている。大事なのは総合的なバランスではないか」

■星港支店を活用
 ――バランスとは、具体的にどういう意味か。

 「われわれは地域金融なので、まずは地元の産業育成という点から出発している。これは何も地元の船主にしか融資しないというわけではない。シンガポール支店では実際、海外の案件を複数手掛け、現在の融資残高は17億ドルまで積み上がっている」

 「当行が重視するのは、案件が『顧客のためになっているかどうか』という点にある。用船契約内容、自己資金投入率、投資目的など融資審査の要素は多岐にわたるが、必ずしも全ての要素が低リスクに仕上がっていなければならないというものではない。総合的に見て取引先船主の将来にとって有益な投資だと判断できれば融資は可能であるし、逆に顧客にとっての投資妥当性が見いだせなければ融資も難しくなるということだ」

 ――シンガポール支店との連携はどうか。

 「シンガポール支店は16年の開設以来、順調に進んでいるが、課題も多い。今治に拠点を置くシップファイナンス部としては、このシンガポール支店とどう有機的に連携していくかがポイントとなる」

 ――具体的には。

 「人材交流を含め、海外で得た知見をどう日本の船主に還元していくか、という点になる。シンガポール支店で得たノウハウを日本船主の船舶融資へのアドバイス、融資判断にプラスになるように活用していきたい。シンガポール支店で蓄積している経験は当行にとって貴重な財産だ。今後、この財産をどう日本に還元していくか。その点が今後の課題だろう」

 さとう・こういち 93(平成5)年、伊予銀行入行。波止浜支店次長、審査部課長、シップファイナンス部課長、次長を経て21年から現職。52歳。

引用至《日本海事報》2024年01月17日 デイリー版1面

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