マースク運航船 標的に。ミサイル攻撃、紅海の迂回加速か

デンマーク海運最大手のマースクが運航するコンテナ船が紅海航行中にミサイル攻撃の標的となった。米中央軍は15日、X(旧ツイッター)で同社が運航する「MAERSK GIBRALTAR」(1万100TEU型)がイエメンの親イラン武装組織フーシのミサイル攻撃対象となったと発表した。紅海を航行するコンテナ船が攻撃の標的となったことで、喜望峰経由への変更など航行を迂回(うかい)する動きが拡大しそうだ。

 フーシは9日にもイスラエル港湾に貨物を輸送する船舶を攻撃の標的に加えると宣言。船舶の航行リスクが高まっていた。

 こうした中、米軍の発表によると、14日正午ごろイエメンのフーシ支配地域から、紅海とアデン湾を隔てるバベルマンデブ海峡に向けて弾道ミサイルが発射された。

 同船は香港船籍。オマーンのサラーラからサウジアラビアのジッダに向けて航海していたとみられている。

 フーシはミサイル発射後も攻撃を続ける構えを見せたが、負傷者や船の損傷などは生じていないという。

 フーシの報道官は15日、X上で「イスラエルに向けて航行中の同コンテナ船に対する作戦を実行した」との声明を出した。

 中東情勢の悪化が続く中、コンテナ船社では安全を確保するため、紅海やアラビア海を迂回する動きも出ている。

 航海ルートについては状況に応じて判断しているようで、ある船社関係者は「イスラエルの港湾はオペレーションの遅れや受け入れ貨物制限はあるが稼働し続けている。紅海での航行をどうするかが目下の課題だ」と話す。

引用至《日本海事報》2023年12月18日 デイリー版1面
https://www.jmd.co.jp/article.php?no=292113

1・6万TEU型メタノール燃料の第1船は来年2月に就航する

マースク、1.6万TEUメタノール燃料船。アジア―欧州航路に投入へ

デンマーク海運最大手のマースクは7日、現在建造中のメタノール燃料に対応する大型コンテナ船のうち、第一船をアジア―欧州航路に就航させると発表した。本船の船型は1万6000TEU型で、韓国のHD現代重工業が建造。メタノールに対応した、デュアルフューエル(2元燃料)エンジンを搭載している。就航は来年2月を計画しており、MSCとのコンテナ船アライアンス「2M」で提供する「AE7/Condor」サービスに投入する。

 マースクでは9月、同社として初となるメタノール燃料対応コンテナ船「LAURA MAERSK」(2100TEU型)が竣工した。2月のメタノール燃料対応船の就航はこれに続き2隻目となる。

 新造船は来年1月末に造船所で命名される計画で、続く2隻の姉妹船についても来年前半に配船。年後半にもさらに4隻の引き渡しを受ける予定だという。

 第1船を投入する「AE7/Condor」では中国、東南アジア、中東、欧州に寄港する。

 マースクは2021年以降、グリーン燃料で運航できる新造船だけを発注する方針をとっている。このうち現在24隻のメタノール燃料対応船を発注。この内訳は1万6000TEU型が12隻、1万7000TEU型が6隻、9000TEU型が6隻となっている。

 マースクのカールステン・キルダールCCO(最高商務責任者)は「世界最大級のトレードレーンであるアジア―欧州航路に、当社の大型メタノール燃料船を初めて投入することは、ネット・ゼロ達成に向けた画期的な出来事だ」とコメントしている。

引用至《日本海事報》2023年12月11日 デイリー版3面
https://www.jmd.co.jp/article.php?no=291938

NXHD、海外ロジ堅調、GBHQ成果。単価下落続くも海運は回復基調

NIPPON EXPRESSホールディングス(NXHD)は22日、国際事業の7―9月期(第3四半期)業績に関するオンライン会見を開催した。海外事業は全4リージョンが減収減益。航空・海運ともに物量減、単価下落が響いたが、海運については荷動きが回復基調を見せているという。また、ロジスティクスは東アジアを除き堅調な実績を残した。昨年のグローバル事業本部(GBHQ)設置で、ロジもグローバルに横串を通したことが奏功。アパレル、消費財などで新規案件を取り込むなど成果が出ており、2024年からさらに収益に貢献する見通しだ。

NXHDグローバル事業本部の名古屋輝明事業戦略部長、日本通運の金森祥之、安藤恒夫両執行役員が、グループの国際関連事業の業績を説明した。各事業の業績は表の通り。

名古屋事業戦略部長は第3四半期の海外事業について「昨年後半から続く欧米での金利上昇による設備投資縮小や、不動産問題を抱える中国の停滞などで、総じて荷動きは低調」と説明。海上フォワーディングの数量は対前年比で微増と回復の兆しを見せたが、航空は海運回帰の動きもあり前年同期比で17・5%減だった。

第4四半期(10―12月)の見通しは「景気悪化の影響から年末商戦に向けた市況の盛り上がりは想定しにくい。販売単価は欧米が現状維持、アジアは下落傾向が続く」と見通す。

一方、ロジ関連はアパレル、日用雑貨、モビリティー関連で堅調に推移している。名古屋氏は「GBHQ設立でロジスティクスも全世界的に強化を図っている。地域・産業ごとに強弱を付け、ビジネスを伸ばすポテンシャルを捉えながら取り組んできたことが、新規事業立ち上げなどにつながっている」と説明した。

■航空、10―12月は2割減も

日本通運の航空事業では第3四半期に前年の反動減に加え、海上輸送への回帰、運賃下落が響いた。輸出の混載重量は前年同期比20%減の4万8503トンだった。

地域別では、米州向けの取り扱いは33%減った。メキシコなど一部エリアで自動車関連のスポットがあったが、半導体関連の反動減が響いた。東アジアは20%減で、中国、台湾への半導体製造装置の需要が伸び悩んだ。南アジアは14%減で、インド、インドネシアへの自動車関連が前期に続き伸長したが、マレーシア、フィリピンの重量が低調に推移した。欧州は8%減となり、ベネルクス3国(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)や北欧向けの自動車関連のスポットがあり、マイナス幅は1桁にとどまった。

輸入件数は、10%減の9万1364件。景気減退に加え、米州、アジア発を中心に海上便へのシフトが定着したことなどが需要を押し下げた。生鮮品も出荷規模の縮小が続いた。

第4四半期の輸出は一部エリアで自動車関連が好調だが、全体では1―2割程度の減少を見込む。輸入は1割程度の減少になると予想。パナマ運河の通航制限やアマゾン川の水位低下で、海上から航空のスポットに回る貨物は発生しているが、物量増は一時的とみている。

■海運、運賃適正化への動き

海運事業の第3四半期売上高は31%減で、特に輸出が48・1%減となった。

日本発輸出NVOCC(海上利用運送事業)取扱量は前年同期比7・5%減の5万6415TEU。ただ、9月は1万9972TEUで微増と、14カ月ぶりに単月実績が前年同月を上回った。米州、東アジア向けが増加したという。前月(8月)比では17%増となった。エリア別では米州向けが5%減の9641TEU、欧州向けが8%減の5931TEU、東アジア向けが9%減の2万2444TEU、南アジア・豪州向けが7%減の1万8399TEU。

1―9月累計は11%減の17万1478TEU。第4四半期も傾向は変わらず、通年でも2桁減となる見通し。

安藤執行役員は「日本発では、適正水準への運賃修復を図るという動きが出てきている。パナマ運河の渇水問題などもあり、北米向けでは一部船社で運賃が上昇している。輸出売上高は減少しているが、粗利率は12ポイント改善しており、これは仕入れ強化に取り組んできた成果だ」と説明した。

日本着輸入NVOCC取扱量は4%減の5万3720TEUだった。

港湾運送事業の売上高は3%減の116億円。コンテナターミナルでは中国新規船社部の増収もあったが、日韓・東南アジア航路が減少した。

商船三井、SOV2隻目新造。台湾洋上風発向け、「アジア展開の布石」

商船三井は台湾合弁会社の大三商航運(TSSM社)を通じオランダ造船大手ダーメン・シップヤーズに、洋上風力発電のメンテナンス事業などに従事するサービス・オペレーション・ベッセル(SOV)を発注した。新造船はTSSM社にとって2隻目の台湾籍SOV。2025年末の竣工を予定し、台湾での洋上風力発電所の支援業務に投入される。商船三井は今回の新造プロジェクトをアジア地域でのSOV事業展開の布石とする考えだ。

商船三井とダーメンが22日までに発表した。SOV1隻の造船契約を21日、商船三井と台湾・大統海運の合弁会社TSSM社とダーメンが締結。ベトナム工場で建造する。

新造船「CSOV9020」は全長87・7メートル、全幅19・7メートル、計画喫水 5・3メートルで、最大120人を収容できる居住施設を持つ。洋上で安全に作業するため、自動船位保持装置(DPS)や船体動揺を吸収する機能を備えたギャングウエーも搭載。メタノール燃料船に改造可能なメタノールレディー仕様とする。

商船三井は昨年3月、アジア初の新造SOVとなる「TSS PIONEER」をベトナムの造船所で竣工。同船もTSSM社を通じて発注しており、デンマークの洋上風力発電大手オーステッドとの長期契約に基づき、台湾最大規模の洋上風力発電プロジェクトの保守・点検支援に投入した。

商船三井は今回の新造船で、「TSS PIONEER」で培ったSOVの操業経験を生かし、発電事業者や風車メーカー、建設事業者などに対して洋上での快適な宿泊設備を提供するとともに、本船から洋上風力発電所へ人員や物資の安全な移送を行う。

商船三井で風力発電事業などを担当する杉山正幸執行役員は「『TSS PIONEER』に加え、今回の新造SOVの操業を通じ、TSSM社の台湾でのSOVプレーヤーとしての地位を確固たるものにする。同時に、日本を含むアジア地域での商船三井のSOV事業展開の布石としたいと考えている」とコメントした。

TSSM社の林宏年董事長は「アジア初の専用SOVでの操業経験を踏まえ、グリーンエネルギー分野への貢献をさらに深めたい」とコメント。

ダーメンのアルノー・ダーメンCEO(最高経営責任者)は「数あるSOVビルダーの中から今回、商船三井・TSSM社に採用いただき光栄だ」と述べた。

邦船オペ向け長期用船満了でケープサイズの退役が本格化

マースク、7―9月期 EBITDA83%減。業績悪化で1万人削減

デンマーク海運最大手マースクの2023年7―9月期業績は、EBITDA(金利・税引き・償却前利益)が前年同期比83%減の18億7800万ドル(約2800億円)となった。主力のコンテナ輸送での需要の低迷や運賃下落が響いた。業績悪化に対応するため、同社は全従業員の1割程度に当たる1万人の人員を削減する方針を明らかにした。

7―9月期の売上高は47%減121億2900万ドル、EBIT(金利・税引き前利益)は94%減の5億3800万ドル、最終利益は94%減の5億5400万ドルと大幅な減収減益となった。

事業セグメントのうち、コンテナ船部門などで構成する「オーシャン」の売上高は56%減の78億9700万ドル、EBITDAは89%減の11億3300万ドル。取扱量は前年同期から5%増えたが、アジア―欧州、北米、中南米航路を中心に運賃が下落し、EBITは2700万ドルの赤字(前年同期は87億ドルの黒字)に転落した。

売上高に占めるEBITDA率は14・3%と、前年同期の55・1%に比べて40・8ポイント下落した。

ロジスティクス部門の「ロジスティクス&サービス(L&S)」の売上高は16%減の35億1700万ドル、EBITDAは14%減の3億3900万ドル、EBITが47%減の1億3600万ドル。物量はほぼ前年並みだったが航空運賃下落などが響いた。

ターミナル事業は売上高が11%減の9億9900万ドル、EBITDAが10%減の3億5300万ドル、EBITが24%減の2億7000万ドルだった。

■人員削減で6億ドル

通期予想については前回公表値のEBITDA95億―110億ドル、EBIT35億―50億ドルを据え置く一方、予想の下限に近い業績を見込むとした。

コロナ禍以降市況が低迷する中、同社はコスト削減を推進。年初から既に約6500人のリストラに着手しているという。

今後数カ月で最大2500人、24年にかけて3500人を削減する計画で、これにより同年までに6億ドルのコストカットを見込む。

マースクのヴィンセント・クラークCEO(最高経営責任者)は「業界は需要の低迷や過去の水準に戻った運賃、インフレ圧力など新たな状況に直面している」と指摘。「組織と業務の合理化を継続的に進めながらターミナル事業とL&S事業での成長機会を追求し、顧客の多様なサプライチェーン・ニーズを満たすという当社の戦略に引き続き専心する」とした。

(右から)福田氏、ライフォード氏、チュア氏、ヨルゲンセン氏

クラブネス・ドライ、デジタル化で市況の荒波超える。重要な運賃の決定も

ノルウェー船社トルバルド・クラブネスのシンガポール事務所に入ると、メインフロアの奥に電子海図が大きくディスプレーされていた。トルバルド・クラブネスの創業は1946年、シンガポール事務所の開設は2006年と、この歴史ある不定期船会社の名前を知らない人はいないだろう。しかし、記者がクラブネスという名前をはっきりと意識するようになったのは、18年10月にミカエル・ヨルゲンセン氏が来日し、クラブネス・デジタルについて取材したときだ。そのとき、記者はこう感じた。「不定期船ビジネスにデジタルは必要なのか?」。あれから5年、当時の疑問は大きく変わった。海運にデジタルは欠かせない―。(山本裕史)

■ドライ船社の自負
 「クラブネスは、持ち株会社の傘下にクラブネス・コンビネーション・キャリアーズ(KCC)、クラブネス・ドライ、クラブネス・デジタルを擁する。シンガポールの社員は、クラブネス・ドライの中で三つの主要事業に注力している。プール、マーケット・マネジャー、そしてクラブネス・チャータリングだ」

 5年ぶりに再会したドライ部門長のミカエル・ヨルゲンセン上級副社長は、シンガポール事務所の役割についてこう説明した。

 クラブネス・ドライは、パナマックスを中心に太平洋とインド洋の用船とフォワーディングを担当している。

 「用船はクラブネス・ドライにとって非常に重要な仕事だ。どのタイミングで船舶を使用し、どのように効率的に貨物を輸送するかが重要だからである」

 用船を担当する太平洋C&T部門副社長のアイヴァン・ライフォード氏は、クラブネス・ドライの用船活動について次のように説明する。

 「クラブネス・ドライの用船事業は、『海運の本質を改善する』というグループのビジョンに基づき、75年にわたる経験とその過程で得た豊富な知識を生かし、年間約450隻の船舶を用船している。われわれは市場の中だけで仕事をするのではなく、24時間365日体制でサービスを提供している」

 われわれは市場の中だけで仕事をしているわけではない―。

 ライフォード氏のこの言葉はどういう意味なのか?

 ヨルゲンセン氏が説明する。

 「例えば、当社は20年には日本の大手商社である丸紅とパナマックスに特化したプールオペレーションを開始した。ドライマーケットは常に不安定である。例えば市場が上昇するとみれば、われわれは船主に電話する。それは相場が下がる前に、向こう3カ月間の用船料を固定したいかと聞きたいからだ。そんなことをするプール・マネジャーはほとんどいない。しかし、われわれは常にオーナーと共にプールを発展させたいと考えている。だから、このような形でコミュニケーションを取っているのだ」。

 丸紅船舶部とクラブネス・ドライは、3年間のパートナーシップを成功させた後、クラブネス・ドライへの丸紅の出資比率を25%に引き上げるなど、協力関係を強めている。

■デジタルは海運の未来
 クラブネス・ドライのもう一つの「武器」は、海運へのデジタル・アプローチである。

 海運業界がデジタル化とまだ距離を置いていた15年、クラブネスは同社の戦略文書でこう述べている。

 「デジタルは海運の未来だ。デジタルは今後、海運にどのような影響を与えるのか」

 ヨルゲンセン氏が話す。

 「最初の3―4年間は、デジタルが何を意味するのかよく分かっていなかった。しかし、15年にデジタルの種がまかれ、7―8年たった今、私たちはその果実を収穫する時期に入ったのだ」

 市場で利用可能なデジタルツールは、航路を最適化し、船舶の位置や針路などの衛星データを一目で把握できるようにするだけではない。

 同社は二つのサービスを提供している。「カーゴ・バリュー」は、産業界の顧客向けに在庫と出庫のクラス最高の管理を行うもので、「マーケット・マネジャー」は、船主、用船者、貿易業者、オペレーター向けに最適化された運賃決定を行うものである。

 ヨルゲンセン氏は次のように説明する。

 「18年に日本に行った際、各オペレーターに説明をした。例えば、石炭火力発電所は、石炭の在庫と消費量、船舶による供給量を管理する必要がある。カーゴ・バリューを利用すれば、海上輸送を最適に計画し、在庫レベルを適切なレベルに調整することができる。現在では貨物面だけでなく、マーケット・マネジャーを通じて重要な運賃の決定も行っている」

 クラブネスは世界の不定期船会社の中で最も先進的なデジタル化について、15年時点で既に開始していた。

 同時に、ヨルゲンセン氏は同僚とのコミュニケーションの重要性についても語る。

 「クラブネス・ドライの仲間であるマーケット・マネジャーのハルキ・チュア氏や、丸紅に勤務するシニアマーケティングマネジャーの福田大輔氏の意見に耳を傾けるようにしている。時には聞きたくない意見もある。そういう意見も大事だと思う。誰もがプロフェッショナルを自覚している。だから、同僚が自由に意見を言える雰囲気を作るのが私の仕事だと思っている」

 デジタルスキルとコミュニケーションスキル―。

 次世代の海運会社に求められる重要な要素は何か。クラブネス・シンガポールのオフィスへの取材はその一端を感じる契機となった。

引用至《日本海事報》2023年10月30日 デイリー版1面
https://www.jmd.co.jp/article.php?no=290943

スエズ運河

スエズ運河、通航料 来年1月値上げ。5―15%。一部コンテナ船は除外

スエズ運河庁(SCA)は先週発表した声明の中で、船舶の通航料を5―15%引き上げることを決定した。適用は2024年1月15日から。タンカー、ドライバルク船などほぼ全船種が対象になる。欧州北西部から直接極東に向かうコンテナ船は値上げの対象にならないとしている。

 エジプト政府にとって、スエズ運河通航料は外貨収入源の重要な手段の一つである。

 スエズ運河は23年初めから値上げを実施した。同国政府によると「(スエズ運河通航料の値上げにより)7億ドル(約1000億円)の収入増になる」と説明していた。

 エジプトは貿易収支の赤字幅が縮小しているものの、依然として外貨収入獲得としてスエズ運河の重要性を指摘している。

 24年1月15日以降の値上げで15%増加するのは、原油、石油製品、液化石油ガス(LPG)、液化天然ガス(LNG)、化学物質(ケミカル)、その他の液体物質を輸送するタンカー、コンテナ船、自動車船、旅客船、特殊浮体式ユニットなどの各船舶。

 SCAによると、ドライバルク貨物船、一般貨物船、RORO船、その他については、通常の通航料が5%値上げされる。

 ただし、北西欧州港から直接来て、極東港に直接向かうコンテナ船は、23年通達8に規定されているように、上記の増加が免除される。

 スエズ運河庁は23年初めからの通航料値上げに関する方針ついて、オサマ・ラビー長官が船舶会社の収益力(運賃)向上が最大の理由と説明した。

 コンテナ船、原油タンカーなどの用船料が上昇し、世界的に海運各社の業績が好調であることにも触れた。

 原油価格の高値基調が続く中、他の代替ルートと比べて、スエズ運河を通る場合の効率性を強調していた。

 今回の値上げのその目的について、当局から具体的な説明の言及はない。燃料費の高騰が続く中、スエズ運河の優位性を強調し、外貨獲得につなげる思惑があるとみられる。

引用至《日本海事報》2023年10月24日 デイリー版1面
https://www.jmd.co.jp/article.php?no=290794

MOUを締結した

エバーグリーン、CIPと提携。船舶用合成燃料 開発へ

台湾船社エバーグリーンは20日、デンマークのコペンハーゲン・インフラストラクチャー・パートナーズ(CIP)と共同で水素ベースの船舶用燃料に関する共同研究を行うと発表した。CIPは再エネ投資に特化した投資会社で、台湾国内で複数の洋上風力発電所の建設を手掛けている。今後、エバーグリーンと共同でカーボンニュートラルな合成燃料(e―fuel)の製造と利用に向けた検討を進めていく。

 両者が締結したMOU(覚書)では洋上風力を活用した台湾での合成燃料の生産やeアンモニアやeメタノールなどのグリーン燃料の供給など幅広い側面で協力していくことが盛り込まれた。

 エバーグリーンは2050年ネットゼロを目標に環境対応を進めており、今年7月には1万6000TEU型のメタノール燃料コンテナ船24隻の発注を決定。これらを合わせた現時点での発注残は71隻・82万TEUとなっている。

 本船運航の脱炭素化に向けてグリーン燃料の調達が必要となる中、同社は「CIPとの協力は二酸化炭素(CO2)削減目標を達成するための戦略においてさらなるステップとなる」と説明。「このパートナーシップは当社が必要とする低炭素燃料ソリューションの開発を支援するものだ」としている。

引用至《日本海事報》2023年10月24日 デイリー版1面 
https://www.jmd.co.jp/article.php?no=290797

邦船オペ向け長期用船満了でケープサイズの退役が本格化

国内船主、退役ケープ代替難航。用船契約短期化。小型船2隻に分散も

国内船主は海運ブーム期に発注したケープサイズバルカーの退役が本格化するのを前に、次の投資先に頭を悩ませている。同船型は邦船オペレーター(運航船社)の期間15年程度の長期用船を裏付けに当時、大量の新造整備が進展。その竣工が2008年の金融危機直後に集中しており、用船期間を満了した高齢船の売船が今後相次ぐ見通しだ。ケープサイズは船価が高額で市況のボラティリティー(変動性)も高い上、用船期間の短期化が鮮明。こうした中、保有船主の間では「全船の代替発注は困難で、小型船2隻の保有に切り替えるのが現実的」との声が多く出ている。

 「ケープサイズの船隊規模が今後縮小していくのは、多くの日本船主にとって既定路線だろう」(今治船主)

 邦船オペとの長期用船契約が今後数年で満了するケープサイズを保有している国内船主関係者は、こう口をそろえる。

 邦船オペ各社は未曽有のドライ好況が続いた03―08年の海運ブーム期、国内船主との期間15年程度の長期用船契約を積極活用し、ケープサイズを大量に新造整備した。

 その新造船の竣工が特に集中したのが、リーマン・ショック直後の09―11年ごろ。これらの船舶が用船契約を満了する24―26年は、各社が100隻規模を持つ大手邦船オペのケープサイズ船隊のリプレース需要がピークを迎えるとみられている。

 大手邦船オペは同船型ではいずれも、LNG(液化天然ガス)燃料船を自社で整備する一方、高齢船の退役が続く中で船隊規模を維持するため、最新鋭の重油焚(だ)き船を新造用船で一定数確保したい考え。

 しかし、邦船オペ向けにケープサイズを長期貸船する国内船主の多くは、既存船の用船期間満了後、邦船オペに代替の新造用船需要があったとしても「退役船と同じ隻数の新造船を整備するのは難しい」(同)との考えを示す。

■発注ハードル高く
 リーマン・ショック以前と比べ、ケープサイズを国内船主が新造整備するハードルが格段に上がっているからだ。特に鉄鋼原料のコモディティー(一般商品)化と共に輸送契約が短期化したことに伴い、かつて10年以上が主流だったケープサイズの新造用船期間が短期化したことが大きい。

 「邦船オペから提示されるケープサイズの新造用船期間は、最近では5年が主流だ。既存のケープサイズはいずれもブーム期直後から邦船オペに期間15年で新造貸船しているが、船価も高騰した今、用船市況が乱高下する同船型を5年の短期で新造貸船することは当社の財務体力では難しい。退役するケープサイズの売船益を元手に、他船型への投資を検討する」(同)

 国内のケープサイズ船主の間では、こうした声が多く上がっている。

■5年新造用船も
 一方、邦船オペ向けに期間5年の新造用船を決めた船主も一部いる。

 「EEDI(エネルギー効率設計指標)フェーズ3対応の最新鋭の新造船であれば、竣工後の用船期間が5年でも、契約延長の可能性が高いと判断し、船価上昇前に一部発注した」(別の今治船主)

 しかしケープサイズの代替発注は今のところ、船価上昇前の一部の新造船にとどまっており、今後の売船・退役分の隻数を大きく下回る見通しだ。

 今治船主が続ける。

 「当社では27年までに邦船オペとの長期用船が切れるケープサイズが相当数あり、新造船に入れ替えられるのは一部にとどまる。ケープサイズ船隊は縮小傾向だ」

 同様に、ケープサイズの保有隻数は今後減っていく、と見通す国内船主は少なくない。

 彼らが代替の投資先に挙げるのが、小型バルカーだ。

■逆張り投資妙味
 海運ブーム初期に発注したケープサイズ複数隻を売船した船主は、次の投資先についてこう話す。

 「長期用船がないなら、スポット市況がボラタイル(不安定)なケープサイズ1隻と同じ投資額で、市況が比較的安定しているハンディサイズバルカー2隻を発注する方が得策だと考えている」(四国船主)

 「ケープサイズは足元の新造船価が18万重量トン型で7000万ドル弱、21万重量トン型で7000万ドル台後半と、20年の底値から4割弱上昇した。今の船価で長期用船を付けずに発注すれば、会社が傾く痛手を被りかねない。ケープサイズ1隻が退役する分、小型バルカー2隻を発注するのが現実的だ」(今治船主)

 一方で一部船主は、用船期間短期化と船価高騰で発注できるプレーヤーが限られる今を、発注の好機と見ている節がある。

 今治船主が逆張り投資の意向を示唆した。

 「ケープサイズは26―27年に代替需要がピークを迎えるのがほぼ確実で、発注残は世界的に少ない。手掛けられる船主が限られてくる中、リスクさえ取れるなら、投資妙味は増す」

引用至《日本海事報》2023年10月20日 デイリー版1面
https://www.jmd.co.jp/article.php?no=290743

EU―ETS、サーチャージで転嫁。主要コンテナ船社、推定値を公表

欧州の排出量取引制度EU―ETSの海運への適用を来年に控える中、主要コンテナ船社は新たに導入するサーチャージの推定値を公表した。極東発北欧州向けの場合、MSCはドライコンテナ1TEU当たり22ユーロ(1ユーロ=約157円)の追加チャージが発生すると試算。同条件でハパックロイドは12ユーロ、マースクは1FEU当たり70ユーロとしている。算定の基準となる排出枠(EUA)の価格に変動性があることから推定値には差があるが、荷主にとってコスト増は避けられない状況だ。

 EU―ETSは来年から海運分野にも適用される。これにより船会社は排出量に応じた排出枠を購入する必要がある。

 同制度の対象となるのは5000総トン以上の船舶がEU(欧州連合)・EEA(欧州経済領域)域内の港湾間の航海、停泊で実際に排出したGHG(温室効果ガス)の全て。域外港湾との航海では排出量の50%が対象で、いずれも段階的に適用していく。

 新制度の適用を控える中、欧州の主要コンテナ船社は新たなサーチャージの導入で価格転嫁を進めることを明らかにしている。

 マースクは顧客向けの案内で「EU―ETS順守のためのコストは莫大(ばくだい)なものとなり、増加の一途をたどることが予想される」と説明。同コストの対象となるサービスのブッキング時「エミッションズ・サーチャージ」を適用するとしている。

 このほど示したチャージの推定値では極東発北欧州向けがドライコンテナ1FEU当たり70ユーロ(リーファーコンテナの場合105ユーロ)、同南欧州向けが20ユーロ(30ユーロ)、北欧州発極東向けが46ユーロ(69ユーロ)などとした。同社は遅くとも適用の30日前に正確な料率を公表するとしている。

 MSCも同様に新たにサーチャージを導入する方針で、極東発北欧州向けが1TEU当たり22ユーロ(33ユーロ)、同地中海向けが18ユーロ(27ユーロ)、北欧州発極東向けが13ユーロ(20ユーロ)、地中海発極東向け14ユーロ(21ユーロ)との目安を示した。既存・新規を問わず、全てのスポット・長期契約に適用する。

 CMA―CGMはアジア発北欧州向けのサーチャージが1TEU当たり25ユーロ(40ユーロ)、同地中海向けで20ユーロ(30ユーロ)となると試算。正式な金額は来月中旬に発表するとしている。

 このほかにもハパックロイドは東アジア発北欧州向けで1TEU当たり12ユーロ(31ユーロ)、同南欧州向けで7ユーロ(16ユーロ)との推定値を公表。金額はEUAの価格に合わせて四半期ごとに更新される見通しだ。

引用至《日本海事報》2023年10月17日 デイリー版1面
https://www.jmd.co.jp/article.php?no=290626

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