オリックス、三徳船舶を買収。保有67隻・船舶管理事業を承継。

オリックスは15日、船主大手の三徳船舶(本社・大阪市、多賀純一社長)の発行済み株式を全て取得すると発表した。三徳船舶の保有船67隻や、船舶管理事業をはじめ全事業を承継する。

 オリックスは三徳船舶の現株主の創業者一族と株式譲渡契約を締結。3月中をめどに全株式を取得する。

 三徳船舶はバルカーや自動車船、コンテナ船などを67隻保有し、第三者保有船の船舶管理事業も手掛けている。

 オリックスは三徳船舶の買収により、包括的な船舶管理を自社で行うことが可能になり、さらに第三者保有船のアセットマネジメントサービスも手掛けていく方針。

 三徳船舶は1972年に前社長の多賀征志氏が設立。昨年4月に多賀征志氏が亡くなったことで、多賀純一氏が二代目の社長に就任した。

 オリックスは買収にあたり「グループの国内外の営業ネットワークや企業経営ノウハウ、強固な財務基盤などを生かし、三徳船舶と共に収益性向上と事業成長を図る」としている。

引用至《日本海事報》【速報】2024年02月19日

LNG船、船腹需要に影響か。米国輸出許可停止、1億トン分 計画遅延も

米国のバイデン政権が打ち出したLNG(液化天然ガス)輸出許可の一時停止の影響が注目されている。輸出許可済みのLNGプロジェクトは影響を受けず、中東のカタールからの供給拡大も見込まれるため、市場への影響は限定的とみられる。だが、新規プロジェクトの稼働が遅れれば、船腹需要に影響する可能性がある。

 日本エネルギー経済研究所は5日、米国のLNG輸出許可一時停止の影響などをテーマにウェビナーを開催した。

 その中で資源・燃料・エネルギー安全保障ユニットガスグループの柳沢崇文主任研究員は「2026年以降に立ち上がる予定の約1億トン分のLNGプロジェクトが影響を受ける可能性がある」と指摘した。

 影響を受ける可能性があるプロジェクトには、「コモンウェルスLNG」「CP2LNG第1期」など10件(表の 1.、 2.)を挙げた。供給能力は合計で年間1億1300万トン規模に上る。

 「CP2LNG第1期」は、米ベンチャーグローバルLNGが主導するプロジェクト。日本の発電大手のJERAやINPEXが長期購入契約を結んでいる。同プロジェクトについて、柳沢氏は「審査が遅延する可能性が大きい。FID(最終投資決定)が遅れるリスクもある」と述べた。

 JERAとINPEXは同プロジェクトから、それぞれ年100万トンのLNGをFOB(本船渡し)契約で購入する。LNG船の確保も進めているとみられる。引き取り開始時期が遅れれば、海運会社との調整が必要になる可能性もある。

 バイデン大統領は1月26日、エネルギー省(DOE)によるLNG輸出許可の判断を一時停止すると発表した。停止期間は審査基準の見直しが完了するまでとしている。

 米国から自由貿易協定(FTA)を結んでいない国にLNGを輸出する際は、連邦エネルギー規制委員会(FERC)の承認を得た上で、DOEの審査を受ける必要がある。

 今回のDOEによる輸出許可の一時停止は、現行の審査基準は策定から5年近くが経過し、LNG輸出に伴う米国内のエネルギー費用上昇の可能性やGHG(温室効果ガス)排出の影響を十分に考慮できていないことが理由だ。

 DOEも声明を発表。輸出許可済みの年間3・5億トン分のLNGプロジェクトは影響を受けず、欧州やアジアの同盟国への供給能力にも影響はないと説明した。

 輸出許可済みの3・5億トンは、稼働済みの事業が約1億トン、表の 3. 4. 5.の18件のプロジェクトの計約2億トン、メキシコLNG設備経由の輸出が約0・5億トン。

 米国は現在、年間約1億トンのLNG輸出能力を持つ。23年は豪州やカタールを抜き世界最大のLNG輸出国になったとみられる。さらに、建設中のプロジェクトが稼働すると30年までに輸出能力はほぼ2倍になる。

 柳沢氏は今回の輸出許可一時停止を受けて「国内向け政治メッセージの意味合いが強い印象だ」とした上で、「米国のLNGプロジェクト開発の不透明感が増す」と言及。米国産LNG購入の消極化、新規プロジェクトへの投資の停滞などの影響が考えられるとした。

 米国以外のLNGプロジェクトへの影響については、「カナダの案件にアジアの買い主からの需要が増す可能性がある。その他地域のプロジェクト開発にも追い風になる可能性がある」(柳沢氏)。

 LNG市場への影響に関しては、「カタールのLNG増産計画もあり、現時点で市場への影響は限定的」と予測。ただ、「輸出許可の一時停止の期間によって影響は変わってくる」との見方を示した。

エバーグリーン、欧州域内でXプレスと提携。メタノール燃料で環境負荷軽減

台湾船社エバーグリーンマリンと、シンガポールに本社を置くフィーダー輸送大手Xプレスフィーダーズは1日、Xプレスが欧州域内で運航するメタノール燃料対応二元燃料船でエバーグリーンのコンテナを輸送することについて、基本合意書(MOA)を締結したと発表した。代替燃料のメタノールを利用することで、欧州域内での環境負荷を軽減する。

 両社は欧州初となる、グリーンメタノールを燃料とするフィーダーネットワークを構築していく考えだ。

 Xプレスは2024年4―6月期から26年半ばにかけて、二元燃料船14隻の引き渡しを受ける予定で、これらを欧州・地中海エリアで運航する予定だ。温室効果ガス(GHG)排出量を、基準年(08年)比で35年までに20%削減、40年までに50%削減、50年までにネットゼロとするという目標に沿った船隊整備となる。

 Xプレスはエバーグリーンとの提携に先立ち、蘭燃料供給企業OCIグローバルとグリーンメタノールの供給に関して契約を締結。廃棄物・残渣(ざんさ)物など有機物から生成される再生可能エネルギーで、欧州市場でのバイオ燃料を対象とした国際持続可能性カーボン認証(ISCC―EU)も取得しているという。

 Xプレスのフランシス・ゴーCOO(最高執行責任者)は「われわれは二元燃料船運航の先駆者として、GHG排出削減目標達成へ必要な措置を講じていく。今後2社で連携し、港湾、燃料供給企業、物流会社、BCO(実荷主)などに対して、持続可能な輸送に参加するよう呼び掛けていく」とコメントした。

引用至《日本海事報》2024年02月07日 デイリー版3面

商船港運、神戸KICTに重量物上屋。保税施設も移設、構内輸送で大幅効率化

【関西】商船港運(神戸市)は2月、神戸港・ポートアイランドの神戸国際コンテナターミナル(KICT)内に梱包もできる重量物上屋を新設し、供用開始する。併せて同じ敷地内に保税上屋の神戸フレートセンター(KFC)も移設、貨物の梱包からコンテナへのバンニング、ヤード搬入までを一気通貫で行う体制を構築する。未梱包の貨物を搬入すれば、あとは同一敷地内の構内輸送だけとなり、作業の大幅な効率化が実現する。同社によると、オンドックでのこうした仕組みは全国でも珍しいという。

 KICT内に阪神国際港湾会社が建物を新設、親会社の商船三井が借り受けた上で、商船港運が運営する。KICT西側の敷地約2万4970平方メートルに重量物上屋と保税上屋を建設、1月に完工した。うち重量物上屋は延べ床面積2100平方メートル、軒下面積1200平方メートルで、天井クレーン30トン、15トン各1基と、5トン2基を備える。

 一方、KICT内での移設となる新KFCは延べ床面積4200平方メートル、軒下面積2000平方メートル、接車バース16バースで、大小フォークリフトやリーチスタッカー、ベール&ロールクランプ、構内用低床シャーシを取りそろえる。

 梱包もできる重量物上屋とKFCを同じ敷地内に併設する大きなメリットに、貨物の横持ちが不要となる点がある。荷主が未梱包の貨物を搬入後、重量物上屋で梱包し、そのまま構内のKFCでバンニングしてKICTのヤード内に搬入する流れだ。

 敷地がKICT内となることから、ヤード搬入時にターミナルゲートを通る必要はなく、積み付け済みのコンテナを構内ヘッドで本付け場所に直接運ぶことができる。これにより、港湾の効率化や機能強化に貢献する。

 横持ちをなくすことは、とりわけ大型の貨物にメリットが大きいという。オーバーゲージサイズの貨物などは神戸エリア内での横持ちだけでもコストがかさむが、今後同社は自前の低床シャーシを用いた構内輸送だけで対応が可能となる。

 バンニング後のコンテナは輸出通関を経てKICTのヤード内に保管でき、円滑に施設を稼働させて効率を高められるのも特徴だ。輸出貨物がメインとなるが、輸入も対応する。

 同社はKICTでの重量物上屋と新KFCの稼働で、特にプラント関連で潜在的なニーズがあるとみている。プラント物は貨物量が数千トンにも達するため、一気通貫サービスへの親和性が高い。

 新設の重量物上屋の天井クレーンを30トン対応にしたのも、重量物やプラント物への対応力を高める狙いがある。オープントップ、フラットラックといったスペシャルコンテナへの積み込みで用いる。

 これまで顧客層の大半が物流企業からの依頼で、実荷主の割合は約2割だった。KICTでの梱包・積み付け機能集約に伴い、同社はメーカーなど実荷主へのアプローチも強化する方針。

 また、同社は環境戦略の一環として、コンテナターミナルを含むGHG(温室効果ガス)排出量削減を図るため、保税上屋、重量物上屋および今後新設されるバンプールゲート屋上に、メガワット級(1210キロワット)の太陽光発電施設を設置する方針で調整を進めている。

 神戸港KICTは2025年、既存のPC15―17の3バースに同14を新たに加えて連続4バース化するとともに、共同運営体制も商船三井など4社に加え、六甲アイランドでターミナルを運営してきた川崎汽船も新たに参画することが決定済み。

 25年以降のKICTは神戸港の外貿コンテナの約4割を扱う西日本最大規模のCTに進化する。同時にターミナルを再編し、PC14の日新が隣の同13に移転、KICTとも連携し背後地の共通ゲートを共同利用する。

引用至《日本海事報》2024年02月07日 デイリー版1面

24年コンテナ運賃交渉、2次入札額上昇も。スエズ情勢で市況急変

コンテナ運賃交渉の先行きが不透明だ。2024年は大型コンテナ船の連続竣工などで需給が緩み、荷主優位の交渉となるとみられていたが、昨年末からスエズ運河などの情勢で運賃市場は大きく変化している。製造業など大手実荷主(BCO)は昨年11―12月に、船社やNVOCC(海上利用運送事業者)を招き、1次入札を実施。船社へのフィードバックが順次戻ってきているが、船社側は「1次の応札時とは状況が変わった。航路にもよるが、2次入札では(上方修正した)『出し直し』のような数字を提示せざるを得ない」(アライアンス加盟船社の日本法人)との姿勢を見せる。荷主と船社で市場に対する見方が分かれれば、交渉が長期化する可能性も高い。

 コロナ禍で暴騰したコンテナ運賃は22年半ばから徐々に軟化し、23年半ばまでにはコロナ禍以前の水準に収束した。

 主要航路である北米航路のサービスコントラクト(SC)更改では、23年は40フィート当たり2000ドル台前半で決着したが、24年は大型船の竣工などで、供給が需要を3%程度上回るという予想が多く、船社関係者は23年を下回る水準での妥結も覚悟していたようだ。

 しかし、昨年11月中旬からイエメンの武装勢力フーシ派が紅海・アデン湾を航行する船舶への攻撃を開始したことから事態は急変。12月にはコンテナ船での被害が相次ぎ、主要コンテナ船社がスエズ運河の航行を回避。アジア―欧州・地中海航路の多くが喜望峰経由に変更された。これにより、輸送日数が長期化。さらにスケジュール維持のために追加船腹も投入されることから、世界全体のコンテナ船供給量の5―6%が吸収され、需給引き締めにつながっている。

 実際、コンテナ運賃は昨年12月から上昇傾向にある。喜望峰経由の影響を直接受けた欧州航路だけでなく、アジア発北米向けも1月に入り急騰。スポットでは40フィート型では大手荷主のSC運賃の2―3倍の数字が出ている。

 一部スエズ経由欧州航路とのペンデュラム(振り子配船)サービスが影響を受けていることに加え、パナマ運河の渇水による通航制限から、北米東岸・内陸向けでも北米西岸からの鉄道輸送を選択するケースもあり、急速に需給が引き締まっている。船社はPSS(繁忙期割増料金)などを導入しているが、あまりにSC運賃とスポット運賃の差が開けば、SC貨物の積み残しなども出てくる可能性もある。

 紅海では15日に米国船籍のバルカー、16日にはギリシャ船籍のバルカーが相次ぎ被弾するなど、一般商船への攻撃は収まっていない。

 ある船社関係者は「スエズ運河の情勢が不透明なだけでなく、パナマ運河の渇水や、豪州での港湾ストなどの問題もある。さらに、今年は北米東岸労使交渉も控えており、不確定要素が多い。少なくともPSSなどの外出しは荷主に受け入れてもらわなければならないし、オールインにこだわる荷主に対しては、あらかじめピークを見越したような数字で対応せざるを得ない」と語る。

引用至《日本海事報》2024年01月18日 デイリー版1面

伊予銀行シップファイナンス部長・佐藤浩一氏。星港と連携、バランス重視

伊予銀行(本店・松山市)は、船舶融資の専門部署であるシップファイナンス部を愛媛県今治市内に置く。同社の船舶融資残高は2023年9月末時点で1兆円強まで伸びた。「瀬戸内を中心に東京、シンガポールに拠点を持つ強みを生かして日本の海事産業に貢献していきたい」と話す、シップファイナンス部長の佐藤浩一氏に同行の現状と展望を聞いた。(聞き手 山本裕史)

■新燃料船にも対応
 ――最近の船舶融資の特徴は。

 「脱炭素の潮流が強まっていることに伴い環境対応船が増えている。新燃料と併用のデュアル(2元)燃料船は船価が高いが、そうした船舶にはオペレーター(運航船社)の中長期用船が付いているケースが多い。当行では必ずしも用船契約の内容だけをもって審査を行っているわけではないが、高価格船では信用力のある用船者による定期用船契約の有無は審査判断の大きなポイントになる」

 ――用船先の海外と日本の比率はどうか。

 「最近、持ち込まれている案件では、おおよそ海外が8割、日本が2割というところだ。海外船社の用船案件が引き続き多いが、今後は邦船オペレーターの用船案件も増えてくるのではないかと期待している」

 ――新造船価格が高騰している。日本船主の新造船発注にはどう対応しているか。

 「新造船の発注については、日本船主の中にもばらつきがあると思う。企業与信の高い日本船主は26―27年の先物新造船、用船先未定で発注するケースもある。そういうケースでも、自己資金を一定程度まで引き上げてもらえば、融資対象になる。われわれの取引先の日本船主は数隻しか保有しない船主もいれば、相当数の隻数を保有する船主もいる。コーポレート(船主の企業与信)を見る場合も、こうした総合的なバランスを重視することが必要だと思っている」

 ――伊予銀行はS&LB(セール&リースバック、売買後の再用船)案件が少ない印象だ。

 「S&LB案件も数は少ないが融資実績はある。船主がBBC(裸用船)でオペに船舶を貸し出す場合、本船の船舶管理はほとんど全てオペが行うのが通常である。例えば危険地域への配船など、BBCにはリスクがあるというのが一般的な認識だ」

 「しかし、当行はS&LBだからやらない、BBCだからやらない、という考えではない。オペに依拠した契約なので、オペの与信、そして船主の与信、そうしたことを総合的に判断して融資の審査を行っている。大事なのは総合的なバランスではないか」

■星港支店を活用
 ――バランスとは、具体的にどういう意味か。

 「われわれは地域金融なので、まずは地元の産業育成という点から出発している。これは何も地元の船主にしか融資しないというわけではない。シンガポール支店では実際、海外の案件を複数手掛け、現在の融資残高は17億ドルまで積み上がっている」

 「当行が重視するのは、案件が『顧客のためになっているかどうか』という点にある。用船契約内容、自己資金投入率、投資目的など融資審査の要素は多岐にわたるが、必ずしも全ての要素が低リスクに仕上がっていなければならないというものではない。総合的に見て取引先船主の将来にとって有益な投資だと判断できれば融資は可能であるし、逆に顧客にとっての投資妥当性が見いだせなければ融資も難しくなるということだ」

 ――シンガポール支店との連携はどうか。

 「シンガポール支店は16年の開設以来、順調に進んでいるが、課題も多い。今治に拠点を置くシップファイナンス部としては、このシンガポール支店とどう有機的に連携していくかがポイントとなる」

 ――具体的には。

 「人材交流を含め、海外で得た知見をどう日本の船主に還元していくか、という点になる。シンガポール支店で得たノウハウを日本船主の船舶融資へのアドバイス、融資判断にプラスになるように活用していきたい。シンガポール支店で蓄積している経験は当行にとって貴重な財産だ。今後、この財産をどう日本に還元していくか。その点が今後の課題だろう」

 さとう・こういち 93(平成5)年、伊予銀行入行。波止浜支店次長、審査部課長、シップファイナンス部課長、次長を経て21年から現職。52歳。

引用至《日本海事報》2024年01月17日 デイリー版1面

LNGプラントが建設されるカーボデルガド州(写真は州都ペンバ)

モザンビーク、LNG船商談 再開。海運大手、事業拡大に弾み

モザンビークのLNG(液化天然ガス)プロジェクト向けのLNG船商談が再開された模様だ。同プロジェクトの事業主体は新造LNG船17隻を調達する計画で、それらの保有会社に日本の海運大手などを起用することが内定している。プロジェクトの稼働が大幅に後ろ倒しとなり、船価などが変更になったため、それに応じた契約条件の再交渉を進めている。プロジェクト再開が決まれば、海運大手が成長分野に位置付けるLNG船事業の拡大に弾みがつく。

 関係筋によると、モザンビークLNGプロジェクトの再開をにらみ、事業主体は造船所と新造LNG船の納期や船価などを再交渉。新たな船価を基に海運会社と用船料などの交渉を始めた。

 海運会社との交渉期限は1月末に設定されている模様。ただ、期限までに交渉がまとまるかどうかは不透明なようだ。

 モザンビークLNGプロジェクトは、同国北部沖合のエリア1鉱区と呼ばれるガス田を対象とした年産1300万トン規模の大型プロジェクト。2019年6月に最終投資決定し、24年の生産・輸出開始を計画していた。

 事業主体にはプロジェクトを主導する仏トタルエナジーズが26・5%を出資。日本からも三井物産とエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)との合弁会社が20%を出資している。

 生産されるLNGの3割は日本が引き取るほか、欧州、中国、台湾、タイ、インドネシア、インドの電力・ガス会社や英シェルが長期契約で引き取ることになっている。

 ところが、LNGプラントが立地するカーボデルガド州の町がイスラム武装勢力に襲撃されるなど現地の治安が悪化。トタルは21年4月にフォースマジュール(不可抗力)を宣言し、建設作業を中断した。

 モザンビーク政府などの尽力により、現地の治安は改善。23年11月にはモザンビークの外相が来日し、日本の政府関係者やパートナーに治安の改善・維持に注力する意向を伝えた。

 プロジェクトの事業主体は20年末までに、LNG船17隻を建造する韓国の二つの造船所を選定。17隻を保有する海運会社4グループも選定したが、最終契約を結ぶ前にプロジェクトが中断されていた。

 17万立方メートル級の新造船の建造ヤードには、HD現代重工とサムスン重工業を起用。保有・管理会社は日本郵船、商船三井、川崎汽船、ギリシャ船社マランガス・マリタイムが起用されるとみられる。

 海運大手は1社当たり4―5隻の長期用船契約を事業主体と結ぶ予定とされる。海運大手の中にはパートナーとコンソーシアムを組み、商談に参加したところもある。

 日本の海運大手はLNG船事業を重点投資分野の一つに位置付けている。長期安定収益が見込まれるLNG船事業の拡大を通じて、全社的な収益の安定化を図る狙いだ。

 商船三井のLNG船の関与船(23年9月末時点)は97隻で、150隻規模への拡大を視野に入れる。日本郵船は86隻から120隻超へ、川崎汽船も45隻から75隻超へそれぞれ拡大させる計画だ。

引用至《日本海事報》2024年01月12日 デイリー版1面

コンテナ船、スエズ回避で運賃続騰。マースク、年末にも運航船被害

コンテナ船社のスエズ運河通航回避の動きを背景に、運賃の高騰が続く。上海航運交易所(SSE)のまとめによると、昨年12月29日付のアジア発地中海向け運賃は、20フィートコンテナ当たり3491ドルと、前週の1497ドルから実に2000ドル近くも急騰した。地中海向けのコンテナ運賃が1週間で1000ドル以上も値上がりするのは、SSEが運賃取りまとめを開始した2009年10月以来で初めて。北欧州向けや北米東岸向けも同様の上げ幅となった。主要船社ではマースクが早期のスエズ航行再開を打ち出していたが、昨年末に同社運航船が攻撃を受けたことで方針を転換したことも、市況に影響しそうだ。

 SSEがまとめるSCFI(上海発運賃指標)は12月29日付で1051ポイントとなり、22年11月以来の1000ポイント台となった。

 12月中旬まで地中海向けの運賃は1000ドル台半ばから上昇傾向にあったが、22日付で一気に2000ドルを突破。イエメンの親イラン武装組織フーシ派による一般商船への攻撃を受け、過去に例のない幅で高騰した。

 地中海向け以外では、北欧州向けが20フィート型当たり2694ドル(前週比1197ドル増)、北米西岸向けが40フィート型当たり2553ドル(同577ドル増)、北米東岸向けは同3559ドル(同1006ドル増)。紅海・スエズ運河をルートとしていた地中海・北欧州・北米東岸向けの3ルートに加え、その余波によって北米西岸向けも大きく値上がりした。

■12月だけで7隻
 フーシ派によるコンテナ船への攻撃は未遂も含めて昨年12月だけで7隻に及んだ。

 米中央軍によると、12月31日早朝、紅海を航行中の「MAERSK HANGZHOU」からフーシ派の小型船4隻からの攻撃を受けているという救難信号を受信。米軍はヘリコプターにより反撃し、3隻が沈没。1隻が逃走したという。

 「MAERSK HANGZHOU」(1万5200TEU型、シンガポール)はマースクグループの保有船。2Mのアジア―地中海航路AE12・フェニックスに就航し、北アジアからスエズ運河に向けて航行中だった。

 マースクは今回の襲撃を受け、1月2日時点で紅海の航行を当面見合わせる判断を下した模様。マースクがまとめた、欧州航路、北米東岸航路など2Mのスエズ経由サービスの迂回(うかい)状況を見ると、5日時点では一部中東航路がスエズ経由となっていることを除き、喜望峰経由ないしTBA(未定)としている。

■さらに上昇の可能性
 年末にかけて急騰したコンテナ運賃は、スエズ運河回避の長期化により、さらに上昇する可能性もある。

 CMA―CGMは2日までに、15日からのアジア発地中海向けFAK(品目無差別運賃)を公表した。金額は東地中海向けが40フィートコンテナ当たり6200ドル、西地中海向けが6200ドル。12月上旬に公表した1月1日からのFAKレートは東地中海3200ドル、西地中海3000ドルだった。船社の配船次第では、運賃市況はさらに上昇する可能性もありそうだ。

引用至《日本海事報》2024年01月09日 デイリー版1面

新春インタビュー 日本港運協会・久保昌三会長。日本港湾2023―24:回顧と展望。港の強化 全力で推進

『競争力強化』を3本柱とする国際コンテナ戦略港湾政策については、京浜港・阪神港を10年に選定して以来、戦略港湾への貨物集中や港湾運営会社の設立、港湾機能の高度化といった諸施策を総合的に展開し、北米、欧州方面に直航する国際基幹航路の日本寄港維持・拡大に取り組んできた。23年には一時途絶えていた北米東岸航路で2年ぶりに日本寄港が復活するなどの成果もあった」

 「とはいえ、単に戦略港湾を選ぶだけでは十分ではない。国土交通省ではいま『新しい国際コンテナ戦略港湾政策の進め方検討委員会』を設置しているが、将来に向けた一手の議論は正しいものの、いまやるべきことは既存の戦略港湾政策をもっと深掘りし、その成果を上げていくことだろう。地方港から戦略港湾に貨物を集める『集貨』、企業誘致や保税区などの設置による『創貨』、これらは国策であることをしっかり留意しながら取り組むことが大切だ」

 「地方港から戦略港湾への集貨の要である国際フィーダー網の充実だが、課題だった日本海側のネットワーク拡充も21年末の神戸港から敦賀、舞鶴、境港へのサービス開始を皮切りに、22年の北九州・ひびきコンテナターミナル経由での秋田・新潟への寄港など着実に地歩を固めてきた。さらに大半が250TEU型以下だったわが国の国際フィーダー航路の船型も、京浜―苫小牧航路に1000TEU型が就航するなど大型化している」

 「こうした諸施策の積み重ねもあり、22年度の内航フィーダーコンテナ輸送量は12%増の90万TEUと、過去最高だった18年度と同水準となった。伸び率では韓国・釜山フィーダーを上回っているほか、輸送量の差も縮小傾向にある」

 「こうした国際フィーダーの奮闘は非常に喜ばしいが、内航船社など民の努力だけでは限界がある。また国際フィーダーの寄港が地方港にとってメリットを享受できるような補助・支援制度もさらに必要だろう。また海外港湾の事例にあるように、特別保税区を組み合わせることも、アジアからの広域集荷に資することになるのではないか。集貨への取り組みを進められるような仕組み作りを、国主導で引き続き進めてもらいたい」

■最新技術で人材確保を
 ――港湾の脱炭素化に向けた取り組みは。

 「社会のあらゆる分野で同時進行的に進む『脱炭素化』の流れに、ひとり港湾が取り残されることがあってはならない。国、地方自治体が全国各港で進めているカーボンニュートラルポート(CNP)形成に向けた取り組みには、業界としても積極的に対応していく必要がある」

 「しかしながら、中小事業者の割合が9割近い港運業界は、多くの事業者の経営基盤が脆弱(ぜいじゃく)であり、脱炭素化のため荷役機械を一気に環境対応型に切り替えることは現実的ではないので、より効果的で長期的な視点に立った支援制度の充実を引き続き求めたい」

 「全国の港でCNP形成の取り組みが進むなか、23年11月から港湾ターミナルでの脱炭素化の取り組みを客観的に評価する認証制度『CNP認証(コンテナターミナル)』の試行が行われている。試行に当たっては国内の主要港から六つのターミナルを選び、評価基準に必要な情報を提供してもらい、基準の妥当性や体制などを検討すると聞いており、港湾の脱炭素化を国内外でリードしていくことに資する取り組みとして期待している」

 ――物流の「2024年問題」が本格化し、運輸の各分野においても人材確保が喫緊の課題となる。港湾運送での対応は。

 「少子高齢化が進む日本においてはどの産業も人手不足で苦労しているが、港湾運送においても例外ではなく、ギャング(荷役作業チーム)のシフトが組みにくくなっているとの声が聞こえてくる」

 「国では一昨年『港湾労働者不足対策アクションプラン』を策定・公表し、総合的な施策メニューを示しつつ官民で取り組みを進めているところだ。若い人に興味を持ってもらい、魅力とやりがいを実感できる職場作りこそが、本当の意味での人手不足対策になるだろう」

 「そのためには、港湾現場におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や荷役機器の遠隔操作など最新技術の導入が不可欠となる。遠隔操作RTG(タイヤ式トランスファークレーン)の導入やAI(人工知能)ターミナル形成、サイバーポートの普及による港湾物流効率化は、これからの港湾の生産性向上と職場環境の改善でどれも不可欠な施策である」

■官民連携で持続可能な港へ
 ――施策の推進で見えてくる港の将来像とは。

 「サイバーポートやDXの推進によって港湾現場の効率性が向上して労働環境を大きく改善すれば、女性や高齢者などより幅広い人々に港の業務に携わってもらうことが可能となる。すでに現在の港湾現場で働く作業員は荷役機器を操作したり情報端末を駆使したりと、かなり高度な働き方を求められている。現在の港湾現場は、人海戦術で肉体を酷使せざるを得なかった昔とは様変わりしているが、残念ながら現状が必ずしもきちんと認識されているとは言い難い」

 「遠隔操作RTGの導入やAIターミナルの実現などにより、世界の趨勢(すうせい)に劣後しない効率的な港湾の構築に取り組むことが大切だ。それが、ひいては若い人を引きつけて人材の確保につながり、日本の港湾の持続可能性につながるものと信じている」

 ――最後に、24年の展望を。

 「冒頭申し上げた通り、国際情勢は厳しさを増し、地政学的なリスクが高まっている。また、脱炭素化の流れについても、大枠では揺るがないものの、より現実的な解を求める動きも出てきている。そして、国内に目を転じれば、人手不足の問題は日本社会全体の構造的なものであるため、その解決は一筋縄ではいかない」

 「これら内外を取り巻く課題に対処していくためには、事業者の知恵を取り入れながら官民連携しつつ一歩一歩進めていく姿勢が重要である。港湾運送は業種によって立ち位置が異なるし、労働組合との関係もある。それでも、港湾の持続可能性を確かなものにしていくためには、おのおのが小異を留保しつつ、大局的な視点で処方箋を考えていく必要があると考える。関係者が手を携えながら、『昇り龍』のごとく上昇気流に乗っていく。24年の日本港湾がそのような気概で進んでいけるよう努力したい」

 くぼ・まさみ 63(昭和38)年上組合資会社(現上組)入社。常務、専務などを経て04年社長に就任。12年代表取締役会長・経営責任者・取締役会議長、23年6月から名誉相談役。93年日本港運協会理事、96年常任理事、04年6月副会長、09年6月から会長。兵庫県出身、81歳。

引用至《日本海事報》2024年01月05日 デイリー版2面

今年の新造船市場予想、先物納期 にらみ合い。受注1割減、船価は微増

今年の新造船市場予想、先物納期 にらみ合い。受注1割減、船価は微増

2024年の新造船マーケットは、主要造船所の線表が海運ブーム期以来の先物まで進んだことで新造商談が減速し、日本造船所の受注量は前年比で1割程度減少するとの見方が大勢だ。船価を巡っては、インフレによるコスト増加分を転嫁したい造船所と、海運市況の先行き不透明感から価格のレベル感に神経質になっている船主のにらみ合いが継続。新造船価は横ばいか微増で推移するとの予想が多い。

■線表ブーム期並み
 今年の日本造船所の新造船受注動向を占う上で、ポイントは大きく二つある。

 一つは、造船所の線表が近年なかった先物まで進んでいる点だ。

 日本造船主要各社はドライ市況が急回復した昨春、国内外の船主から主力の中小型バルカーを集中的に受注。過半が26年船台を完売し、先行勢は複数社が27年半ばまでの工事にめどを付けた。

 さらに、夏場の商談停滞を経て、秋口に再開した新造商談〝秋の陣〟で線表をじわりと伸ばし、各社が26年船台をほぼ完売。艤装期間が長いLNG(液化天然ガス)などの新燃料船を連続建造するヤードなど、内定を含めて線表確定が28年まで進んだ工場も出てきた。

 つまり、主要日本造船所は新しい年が明けた今の時点で、3年超の潤沢な手持ち工事を確保しているところが多く、00年代後半の海運・造船ブーム期以来、線表を4年先まで進めた工場もある状況だ。

 このため、造船所は受注を急ぐ必要はなく、「24年は採算重視で案件を選別する姿勢を強め、年末までに27年船台1年分を売り切る程度に受注ペースを落とす公算が大きい」(商社船舶部)。

■高止まりで様子見
 もう一つのポイントが、今年は新造船価の高止まりがほぼ確実視されていることだ。

 造船所は線表を先物まで進めたことで、船価を下げてまで受注に動く局面ではない。加えて、世界的なインフレの影響で、鋼材・舶用機器などの材料費のほか人件費、電気料金などが軒並み高騰。コスト全般の上昇による「採算悪化を為替の円安効果で何とか吸収しているのが現状」(国内造船所関係者)で、船価を下げる選択肢は年間を通じてないだろう。

 資機材の中で特に価格上昇圧力が強まっているのがエンジンだ。主機の価格は近年受注が急増した小型バルカー向けの需給逼迫(ひっぱく)もあり、「コロナ前からこれまでの値上げ幅は5割以上に達している」(同)。

 他の舶用機器も同2―3割の値上げが進んだとの声が多い。21年から右肩上がりの上昇が続いた鋼材価格は天井感が一時出ていたが、昨年末に値上げ圧力が再び高まるなど、日本ではなお史上最高値の水準で推移。人件費は23年に一段と高騰した。

 こうした状況下、造船所関係者の間では「24年の船価は前年水準の維持を最低ラインとして、インフレによるコスト増加分の転嫁で前年比数%の微増を期待する」との声が多い。

 日本造船各社は業績が厳しい中、鋼材価格の高騰が始まった21年初めからの急激なコスト増をカバーするため、船価の引き上げを強い姿勢で進めてきた。

 これが24年の船価予想では「最低でも現状維持」(同)などと若干弱気に映るのは、今の事業環境で船価水準をもう一段引き上げれば「船主に許容されないレベルに達してしまう」(同)との感触を得ているからとみられる。

 ギリシャなどの海外勢を含め、船隊刷新に向けた新造整備を探っている船主は年末時点で少なくなく、造船所への引き合いも増えていた。一方、船主を取り巻く事業環境は良好とは言えない。

 「中国経済の減速懸念やコロナ後の滞船解消、地政学リスクなどが意識される中、24年の海運マーケットが急回復する材料は少ない。加えて、ドル金利高で資金調達コストが大きく膨らんでおり、船価がこれ以上上がれば多くの船主が本格的に様子見に入り、受発注が停滞する公算が大きい」(商社船舶部)

 好市況なら期先成約も

■商談スローダウン
 潤沢な手持ち工事を確保した造船所と、船価の高止まりで発注に様子見姿勢の船主。24年は両者のにらみ合いが続くとみられる中、日本造船所の新造船受注量はどう推移するだろうか。

 「24年の日本の受注量は、年間竣工量と同程度の900万総トン前後になると予測している」

 国内造船所と商社船舶部の見立ては、この内容でほぼ一致している。

 日本船舶輸出組合のまとめによると、23年の日本の輸出船受注量は1―10月累計で前年同期比16%減の811万総トン。このペースを維持すれば、通年では1000万総トン程度に着地する見通しだ。

 船価回復で受注が急増した21年とその勢いを前半まで維持した22年の実績は下回るが、海運市況が大底だった16年以降で見れば、両年と18年に次ぐ水準となる。

 24年の受注量がそこから1割程度減少するとの予測が多いのは、造船所と船主のにらみ合いが長期化し、新造商談がスローダウンすることを織り込んでいるからだ。

■上振れのシナリオ
 ただし、以上のシナリオは海運市況が平年並みに推移することが前提。ドライバルクを中心に用船マーケットが本格的な上昇局面に入れば、船主と造船所の膠着(こうちゃく)状態が崩れ、新造発注が異例の期先納期までさらに進む可能性もある。

 「24年は新造商談がスローダウンし、受注量が年間竣工量と同程度に落ち着くのが現実的な予想だ。しかし、海運マーケットが想定以上に好調に推移し、為替相場も23年の円安水準が維持され、新造案件が先物納期でも増えてくるなら、日本造船所は採算が合う限り28―29年船台まで受注を進めるのではないか」(同)

 特に各社が主力とする中小型バルカーは現時点では、重油焚(だ)きの最新鋭船が最も環境性能に優れたデザインと考えられている。だが、環境規制の行方次第では、新燃料船が新造整備の主流にいつ躍り出ても不思議ではない。

 こうした中、造船所には新燃料船より工期が短く、連続建造でコストも抑えられる重油焚きバルカーで、「好採算の案件があれば極力先物まで受注したいとの心理が働く」(同)との見立てだ。

 その兆しは昨年末、かすかながら見え始めていた。

 バルカーの主要航路平均スポット用船料は12月初め現在、ケープサイズが5万ドル台、パナマックスが2万ドル台、スープラマックスが1万6000ドル台、ハンディサイズが1万4000ドル台。全船型で一般的な新造船の損益分岐点を大幅に上回って推移している。

 これを受けて船主心理は急速に改善しており、「27年前半や同年半ば前後の先物納期でも、発注を具体的に検討する船主が国内外で一定数出てきた」(国内造船所関係者)。

 24年は、ドライ市況が年初の軟化から例年復調する中国の旧正月(春節)が明けるのは2月半ば。この時期に新造商談がどこまで活発化するかが、今年の新造船マーケットの最初の焦点になりそうだ。

引用至《日本海事報》2024年01月01日 デイリー版6面
https://www.jmd.co.jp/article.php?no=292397

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