BHPのグリーノー氏(中央)

BHP「用船、持続可能性を重視」。新燃料、資源メジャーで協力。ヤラ 「アンモニア必要量 明確化を」。船主・用船者に要請

【APPEC2023】

「従来は主にコストと安全性に着目していたが、今は持続可能性が同等の重みを持っている」――。シンガポールで先月開催された「アジア太平洋石油会議」(APPEC、米S&Pグローバル主催)で登壇した豪資源大手BHPのサラ・グリーノー海事部門責任者は用船の方針をそう語った。一方、ノルウェーのアンモニア生産大手ヤラ・クリーンアンモニアのナタリー・グプタ取締役は船主や用船者に向け「当社のようなサプライヤーとの協議を実り多くするために、脱炭素化へのアンモニア必要量を正確に把握すべきだ」と訴えた。

 BHPは世界最大のドライバルク用船者の一角であり、鉄鉱石年2億5000万トン強、原料炭2900万トン、発電用石炭1400万トン、銅170万トン強、ニッケル8万トンなどを生産している。

 グリーノー氏は「BHPは世界の脱炭素化への準備に対応しようとしている」と発言。同社は、世界のEV(電気自動車)普及に伴い今後30年間でニッケル需要が4倍に拡大すると予測し、銅の生産も倍増を目指す。

 「われわれの株主は当社がこの巨大な量をどう生産していくかに関心を注いでおり、目覚ましい変化として、株主価値と持続可能性が目指すべきポイントの両面として共存している」(グリーノー氏)

■データの民主化
 同氏はBHPの海上輸送の低・脱炭素戦略について「三つの重要な柱で論理的に構成されている」と解説する。

 第1点には「次世代燃料への短期・中期・長期における移行」、第2点には「推進システムと航海最適化ソリューションの継続的な革新」を列挙。

 第3点には「あまり議論されてこなかったが、非常に重要な点」として「チャータリングチョイス」(用船の選別)を挙げ、サステナビリティー(持続可能性)に基づく選別志向を示した。

 その上で「われわれのプラットフォームを活用し、業界に成果を広げていければ、データデモクラシー(データの民主化)がエコシステムにおけるパートナーシップと同様に大きな役割を果たす」と語った。

 BHPは英豪資源リオティント、米穀物大手カーギルとともに、船舶の安全・環境性能評価プラットフォームを運営する豪ライトシップ(本社・メルボルン)に出資し、業界を挙げた船のクオリティー向上を図っている。

■フロントランナー
 次世代燃料への移行を巡って、グリーノー氏は「われわれの戦略は常に先駆的に、今ここから脱炭素を進めようとしている。この観点で当社はLNG(液化天然ガス)2元燃料ニューカッスルマックスを既に就航させており、炭素排出削減と生産目標に貢献している」とフロントランナーの矜持(きょうじ)を示す。

 一方、今後については「短中期戦略として異なるアプローチを取り、ワンショットやワンプロバイダーの手法ではなく、問題解決のためにコンソーシアムを通じて、さまざまな組織と連携する。競合する他の資源会社との協力も重要な手段となり得る」とパートナーシップ重視の方針を語る。

 その上で環境対応により増加するコストを「バリューチェーン全体で共有すること、コスト削減のために作業や需要をまとめていくことが重要」と指摘した。

 具体的な連携策では「今年、われわれは『グリーンコリドー』(緑の回廊)連合の成果として、アンモニアの実現可能性の研究成果をまとめた。船のサイズやバンカリング(船舶燃料供給)最適地、投資への課題、コストなどについて検討を深めている」ことを挙げた。

 グリーンコリドー計画のアンモニア燃料研究にはBHP、リオティント、独船主オルデンドルフ、ギリシャ船主スターバルク、国際海事NPOのグローバルマリタイムフォーラムが参加している。

■ポートフォリオ戦略
 グリーノー氏はアンモニアの燃料供給エリアについて「シンガポールは明らかに重要なバンカリング地域であり、将来的には(西豪州の鉄鉱石産地)ピルバラ地域での可能性もある」と述べた。

 LNG、アンモニア以外の代替燃料については「バイオ燃料も複数の異なるサプライチェーンで活用しており、さまざまなトレードレーンにおいて非常に重要だ。メタノールも短中期的に有力候補になることは間違いない」と発言。

 続けて「当社の戦略としてバイオ燃料やグリッド推進システム、そしてアンモニアなどを注視している。われわれには複雑なサプライチェーンや幅広い商品にまたがる多くのトレードレーンがあり、その特徴に応じてポートフォリオアプローチを取る必要がある」と語り、多様な可能性を探っていく考えを示した。

■50年舶用4割に
 「当社の主な目的は、クリーンプロジェクトを追求することだ。基本的には(化石燃料由来の)『グレーアンモニア』から、製造時のCO2(二酸化炭素)を回収する『ブルーアンモニア』や再生可能エネルギー由来の『グリーンアンモニア』への移行を意味する」

 ヤラ・クリーンアンモニア(YCA)のナタリー・グプタ取締役(船舶燃料供給・バリューチェーンパートナーシップ担当)はアジア太平洋石油会議(APPEC)で、同社のアンモニア事業戦略をそう語った。

 アンモニアの現在の用途は肥料中心だが、燃焼時にCO2が発生しないゼロエミッション燃料として海運や発電業界から期待の目が注がれている。

 2021年の国際肥料協会の試算によると、脱炭素需要を追い風にアンモニアの市場規模は同年の1億8400万トンから50年には4億7000万トンに拡大し、このうち船舶燃料向けが約4割の1億8200万トンを占める見通し。

 グプタ氏は「移行の初期段階はブルーアンモニアが主流になる。製造時に回収するCO2は、米国や北海などの油井への貯留が有力な選択肢となる」と予測。

 一方、グリーンアンモニアについては「複雑なゲームになる。コストは基本的に再生可能エネルギー関連の設備投資額、電解槽の費用によって決まる。ただ、長期的には市場参入者の増加により、グリーンアンモニアの経済性は向上していくだろう」と見通す。

 国際肥料協会の50年のアンモニア種別割合予測はグリーンアンモニア43%、ブルー27%、グレー30%。

■アセット裏打ち
 ヤラ・グループは現在、アンモニア市場でシェア2割以上を確保し、アンモニア輸送船隊15隻を擁する。

 グプタ氏は「重要ポイントの一つは、われわれの供給がアセットに裏打ちされていることだ」と発言。「本質的にスポット市場で取引される化石燃料とは異なり、アンモニアは製造品であり、生産拠点や生産者の関与が不可欠」と語り、生産能力に根差した強みを強調する。

 次世代燃料としてのアンモニアの優位性は「一つにはコスト」と述べ、「アンモニアは炭素分子を持たないため、炭素分子を含む他の燃料と比較して安価なクリーンエネルギーとなり得る」と語る。

 さらに、同氏は「われわれはアンモニアのオフテイカー(引き取り手)でもある」と述べ、アンモニア需要について「海運だけでなく、他の市場からも必要とされている。当社が追求する市場には電力セクターが含まれ、アジアだけでなく欧州向けに水素キャリアーとしての潜在需要が見込まれる」と期待を込める。

 欧州連合(EU)は30年の目標にクリーン水素の生産1000万トン、輸入1000万トンを設定。グプタ氏によると、現時点で欧州の電解槽ベースのクリーンアンモニア生産能力は30万トンにとどまり、今後の飛躍的な成長が見込まれる。

■中国、舶用に野心
 グプタ氏は需要の伸びを踏まえ、「バンカリング(船舶燃料供給)を含めて、世界が脱炭素化のために必要とするアンモニアの追加量を正確に把握すべきだ」と訴える。

 背景として「アンモニアのプロジェクトは本質的に規模が重要になる。上流だけでなく、供給やバンカリングへの投資の観点からもそうであり、重要ポイントはボリュームを積み上げることだ」と説く。

 ヤラ・グループは数年前から新規生産プロジェクトを始動し、需要エリアや経済性を踏まえながら現在、フェーズ2に入っている。

 「アンモニア対応エンジンが24年末または25年をめどに実用化されれば、ノルウェーでアンモニアのバンカリング試験を短距離航路で開始できる」(グプタ氏)

 質疑応答では中国のアンモニア市場の見通しを問う声が上がり、グプタ氏は「中国は現在、アンモニアの最大の生産国だ。ただ、他の生産国のようにガス由来ではなく、主に石炭由来のグレーアンモニアを生産しているとみられる」と解説。

 その上で、「クリーンアンモニアは、中国経済の脱炭素化に大きな役割を果たすだろう。さらに、中国にはバンカリングを発展させる野心があるようだ」と指摘した。

■臭ったら即行動
 アンモニアの課題には毒性が挙げられる。

 グプタ氏は「私の理解では、トレードコモディティー(貿易商品)としてのアンモニアの安全記録に問題はない。事故原因はほとんどの場合、冷凍・冷蔵状態での貯蔵時のヒューマンファクター(人的要因)だ」との見解を提示。

 その上で、「アンモニアは5ppm(ピーピーエム)以上の濃度で臭いを感じとれるようになり、5000―1万ppmで危険が生じる。つまり、臭いから非常に危険になるまで時間的猶予がある」とし、「担当者や責任者が臭いを嗅いだとき、適切な行動をとらなかったことが事故につながっている」と指摘する。

引用至《日本海事報》2023年10月11日 デイリー版1面  外航全般

https://www.jmd.co.jp/article.php?no=290504

ケミカル船社、集約が進展。持続可能性 高まるか

石油化学製品などを運ぶケミカルタンカー船社の集約が進んでいる。市況低迷の長期化に苦しめられたことに加え、船価高騰や環境対応で船舶投資が困難なことが集約を後押ししている。海運関係者は「ケミカル船業界が持続可能になるための契機になるかが焦点になる」と語る。

商船三井グループのMOLケミカルタンカーズ(MOLCT、本社・シンガポール)は9月12日、米国の複合企業フェアフィールドマックスウェル傘下のフェアフィールドケミカルキャリアーズ(FCC)を買収することで基本合意したと発表した。

MOLCTは競争法上の関係当局の承認を条件に、フェアフィールドマックスウェルからFCCの全株式を約4億ドル(約597億円)で取得する。

MOLCTのケミカル船隊は85隻。これにFCCのケミカル船36隻が加わり、MOLCTの船隊は120隻超に拡大する。ケミカル船最大手のノルウェー船社ストルトニールセンを追随する。

ケミカル船社のM&A(買収・合併)としては、2016年のストルトによる同国のJOタンカーズの買収、19年のMOLCTによるデンマーク船社ノルディック・タンカーズの買収に次ぐ案件になる。

事業環境が改善してきた中での今回のMOLCTによるFCCの買収合意を受けて、あるケミカル船関係者は「寝耳に水」と驚きを隠さない。別の関係者は「伏線はあった」と語る。

フェアフィールドマックスウェルの幹部が数年前に、FCCの売却も選択肢という考えを示したという。当時は市況低迷が長引き、ケミカル船社の業績も振るわなかった。

同関係者は「(ケミカル船は)投資先としての魅力が薄れていたのだろう」との見方を示す。

ケミカル船市況を巡っては、リーマン・ショック後も半年間は堅調に推移。関係者の間に金融危機の影響は軽微にとどまるとの安心感が広がったものの、すぐ新造船の大量竣工のあおりで市況悪化が顕在化した。

MOLCTやストルトが主力とするステンレス製のカーゴタンクを備えたケミカル船は、もともと運賃市況のボラティリティー(変動性)が低い。

ステンレス船は腐食に強く、あらゆる液体貨物を積載できる。エチレングリコールやスチレンモノマー、リン酸など多種多様な貨物を組み合わせて運ぶため、高度な専門知識と技術が求められ参入障壁が高いためだ。

だが、海運バブル期にケミカル船分野にも投機マネーが流入。船舶投資ファンドが大量発注した新造船がリーマン後に相次いで就航し、需給バランスが崩れた。石油製品を運ぶプロダクト船が流入したことも市況悪化に拍車をかけた。

ロシアによるウクライナ侵攻を機に、ケミカル船を取り巻く事業環境は一変した。

欧州は石油化学製品の調達先をロシアから北米や中東などにシフト。それにより輸送距離が延び、ケミカル船の船腹需要が押し上げられた。プロダクト船が石油製品輸送に回帰したことも、ケミカル船の需給タイト化を促した。

不況時に船舶投資がストップし新造船の供給が少ないことも相まって、ケミカル船の運賃市況は改善。船社の業績も改善し、船舶投資の再開を検討できるようになった。

ところが、鋼材やステンレス価格の高騰を受け、ケミカル船の新造船価は大幅に上昇した。造船所の船台も26年ごろまではほぼ埋まっている。次世代燃料の見極めも難しい。船社は投資判断が困難な状況にある。

そういった中で、M&Aを通じた成長戦略の実現という選択肢が現実味を帯びてきたようだ。

MOLCTの佐々明CEO(最高経営責任者)は、FCCの買収合意に関するプレスリリースの中で、FCCの魅力ある船隊の獲得が一つの目的だったことを認めている。

ケミカル船社の収益は改善し、市況も健全な水準を維持している。ただ、「高品質で安全な輸送サービスを安定的に提供していくための経営基盤の構築はまだ道半ば」(関係筋)だ。

インフレや環境対応など取り巻く事業環境が大きく変化する中で、ケミカル船業界がサステナブルな業界になれるのか。MOLCTによるFCCの買収は一つの試金石になる。

 

 

日本海事報告,2023 年 10 月 02 日,每日版第 1 頁

化學品航運公司正在整合。 可持續性會提高嗎?日本海事報紙電子版(jmd.co.jp)

コンテナ市況、9月以降軟化、危険水域に。供給増に需要追い付かず

主要航路のコンテナ運賃が、コンテナ船社にとって採算割れの水準まで落ち込みつつある。22日付の北欧州向けコンテナ運賃は20フィートコンテナ当たり623ドルと、今年の最安値を更新した。北欧州向けが700ドルを割り込むのは2019年以来。新造船竣工に伴う供給量の増加で需給が緩んでいるのが原因。当初、市況軟化時にコンテナ船社は過去の経験を踏まえて船腹削減を進めることで大崩れはしないと見られてきた。しかし、今年は新造船竣工量が過去10年間の平均に比べて倍以上と大きいため、船腹削減が追い付かない模様。運賃市況はコンテナ船社にとって危険水域に近づいている。

グラフは、上海航運交易所(SSE)がまとめている上海発北欧州向けコンテナ運賃を、17、18、19、23年の4年間で比較したもの。期間は1月第1週(W1)から9月末(W39)まで。

23年の北欧州向けは年初から緩やかに軟化が進んで700ドル台前半まで落ち込んだものの、8月の船社による値上げで900ドル超まで反発。ただ、値上げ効果も持続せず、9月22日付では年初来の最安値を更新した。

市況が厳しかった19年以前も同様の傾向を示しており、8月までに何度か値上げで上向くものの持続せず、9月末までに大きく値を下げるのが顕著となっている。

アジア発欧州向け(欧州西航)の荷動きは好調に推移しており、7月は前年同月比6%増の約150万TEU。前年割れが続く北米向けとは対照的に好調に推移するなど航路環境は悪くない。

荷動き好調でも市況が下落傾向にある原因について日本海事センターでは、「新造船竣工による供給量増が大きすぎ、需要(荷動き)が追い付いていない」(同センターの松田琢磨客員研究員)と説明する。

各調査機関のリポートによると、23年4月以降のコンテナ運航船腹量は月平均19万TEU以上のハイペースで増加。過去1カ月間では実に21万TEUの新造船が竣工した。

過去10年間で世界のコンテナ船隊増加量は年平均で100万TEU。23年は平均の2倍となる220万TEUの竣工が予想されるという。単年の竣工量が最も多かったのは15年の170万TEUだった。また24年の竣工量は300万TEUという試算もある。

英クラークソンがまとめた23年1月時点の世界のコンテナ船腹量は2575万TEU。23―24年の2年間で2割近い船腹量の増加が見込まれることになる。

10月からの中国国慶節休みに備えてコンテナ船各社は欠便などの船腹削減計画を実施する予定だ。当初予定よりも削減幅を上積みしているが、現状ではそれで間に合うか疑問の声もある。

北欧州以外の運賃動向(9月22日付)をみると、北米西岸向けが40フィートコンテナ当たり1790ドル。西岸向けは2000ドルを割り込むと採算が厳しいとみられており、船社にとっては正念場となっている。

 

引用至《日本海事報》2023年09月28日デイリー版1面

 

コンテナ市況、9月以降軟化、危険水域に。供給増に需要追い付かず|日本海事新聞 電子版 (jmd.co.jp)

〈欧米メジャー LNG市場展望〉長期売買契約を再評価、舶用燃料化にも期待。アジア新市場開拓、ガス低炭素に注力

シンガポールで今月上旬に開催された世界最大の天然ガス・エネルギー国際会議「ガステック」で、欧米エネルギー大手のキーパーソンらからLNG(液化天然ガス)の長期売買契約の重要性を再評価する声が相次いだ。ウクライナ危機後のLNG価格のボラティリティー(変動)増大を機に、これまで進行していたLNGのコモディティー(一般商品)化からの反動が鮮明となりつつある。一方、需要面ではLNGの舶用燃料化への期待の声も上がった。

「欧州における過去1年半を振り返ると、天然ガスの役割が浮き彫りになり、長期で多様なLNG購入契約による供給確保の重要性がはっきりと再認識された」

米エクソンモービルのピーター・クラーク上席副社長はパネルディスカッションの冒頭にそう語った。

「ロシアの輸出急減に伴い、欧州各国がガスのスポット購入に追い込まれ、エネルギー価格全体の高騰につながった。再生可能エネルギーはその需給ギャップを埋める機能を果たさず、各国は石炭などの高炭素燃料への回帰を強いられた」(クラーク氏)

英シェル・エナジーのスティーブ・ヒル上級副社長も「地政学リスクとエネルギー転換に伴うボラティリティー増大は依然として続いており、LNG業界における長期契約の重要性が強化されている」と指摘。

その上で「昨年の価格高騰において、スポット市場にほぼ完全に依存していた欧州のバイヤーに比べて、長期契約が調達の8―9割を占めるアジアのバイヤーへの影響ははるかに小さかった」と述べた。

欧州トレーダー大手ビトールのラッセル・ハーディCEO(最高経営責任者)は「昨夏、欧州のガス価格はMMBtu(百万英国熱量単位)当たり約100ドルに達し、供給危機への恐怖が高騰を引き起こした。背景にはわれわれが特定のガス源に大きく依存していたことがあり、今後は多様な独自戦略が求められてくる」と語り、ソース多様化の方向性を示す。

 

■米VG社を非難

LNG市場では2000年代後半以降、仕向け地制限のない米シェールガス輸出拡大に伴いトレーディングが活発化。LNGのスポット市場拡大とコモディティー化により、LNG船の用船契約の短期化にもつながっていた。

しかし、ここにきてエネルギー各社が長期売買契約を再評価していることで、用船契約にも中長期化への揺り戻しが起きつつある。

シェル・エナジーのヒル氏はコモディティー化に関し「LNGには二つの市場が存在する。一つは世界のガス市場のバランスを取る上で効果的なスポット市場。もう一つは長期市場であり、プロジェクトを立ち上げ、顧客とLNGビジネスに供給の確実性と価格の予測可能性をもたらす上で非常に効果的だ」と長期、スポットそれぞれの利点を解説する。

さらにヒル氏は長期売買契約の信頼性を巡り、米国のLNG生産会社ベンチャーグローバルLNG(本社・バージニア州)が試運転期間を理由に供給責任を十分に果たしていないと強く批判した。

「ベンチャーグローバルの欺瞞(ぎまん)的行為が業界に損害を与え、危険な存在となっている。これは業界への警鐘だ。LNGビジネスは長期契約の順守と信頼によって成り立っている。プロジェクトの実現を支えてきた信頼あるバイヤーに貨物を供給しないのであれば、現在の価格環境において誰もその企業を信じなくなる」(ヒル氏)

 

■船舶向け拡大へ

ディスカッションの後半にはLNGの舶用燃料需要にも話題が及んだ。

ビトールのハーディ氏は「今後数年間でLNGバンカリング(船舶燃料供給)市場は大きく成長し、道路輸送においてもLNG使用が大幅に増加するだろう」と期待感を口にする。

「50年のネットゼロは全産業の巨大な課題だが、現時点で明確な解決策が見いだされていない領域がある。その一つがバンカー(船舶燃料)だ。年約4億トンの船舶燃料が燃焼され、われわれのモノやエネルギーが世界中に運ばれている。現段階の新造船の選択肢は、LNGと重油の2元燃料を志向していることは確かだ」(ハーディ氏)

シェル・エナジーのヒル氏も「(船舶燃料のLNG転換は)今まさに起こり始めている。われわれはシンガポールで2隻目のLNG燃料供給船を導入したところだ。2元燃料仕様を備えた新造船は大型船で約3分の1に達し、巨大な潜在需要が存在する」と指摘する。

ハーディ氏は今後の見通しについて「ガス供給拡大によりLNG価格が少しでも安くなり、供給インフラも整備されると、巨大なLNGバンカー市場が出現する。船舶燃料は今後10年でLNGに大幅に転換されるだろう。この推移を興味深く見守っている」と話す。

 

■再ガス化1億トン

米エクソンモービルのピーター・クラーク上席副社長はLNG(液化天然ガス)市場の今後の展開について、米国積みを中心とした欧州向けトレード伸長シナリオを示す。

「複数のアナリストが欧州で2027年までに約1億トンの再ガス化能力が必要になると予測しており、対応プロジェクトが急速に提案されていくだろう。世界各地からLNGが供給され、特に米国ガルフが重要な役割を果たす」

エクソンも来年、米ガルフの新規プロジェクト「ゴールデンパスLNG」で年1800万トン規模の液化設備の稼働を予定している。

欧州トレーダー大手ビトールのラッセル・ハーディCEO(最高経営責任者)は「ガス不足は解消されておらず、今年はLNG5000万トンが欧州に向かう見通しだ。ロシアからのガスは依然として止まっており、われわれは『輸入LNG』と『需要減』という二つのメカニズムで問題を解決している」と分析する。

同氏は続けて「価格にもよるが、今年はおそらくLNG換算約2000万―3000万トンの需要減により需給ギャップを埋めなければならない。推奨したいのは、より柔軟なビジネスモデルを開発し、サプライ&トレーディングビジネスに適応することで、ボラティリティー(変動)の犠牲者ではなく、利用者になることだ」と訴える。

 

■ストレージ投資へ

伊エネルギー大手Eniのクリスティアン・シグノレット取締役は「ボラティリティーの一因には天然ガスとLNGの貯蔵キャパシティーが非常に少ない事実が挙げられる。われわれの投資はまだ完了しておらず、ストレージが次の投資の波だと思う」と見通す。

米シェブロンのコリン・E・パーフィット中流部門担当プレジデントは「米国ではこれからLNGプラント導入が加速し、まずは欧州向け、長期的にはアジア市場への輸出が進んでいく。過去20年間、米国と欧州では石炭火力からガスへのシフトがCO2(二酸化炭素)削減につながっており、今後はアジアでこうした転換の機会が生まれてくる」と予測。

さらに、同氏は「私はエネルギー分野で約40年間働いてきたが、今が最もエキサイティングな時代の一つだ。伝統的なエネルギーをどう転換するかという大きなチャレンジが目の前にある」と語り、変革期に意欲をのぞかせる。

 

■CCSに熱視線

LNGは石炭よりもGHG(温室効果ガス)排出量は少ないが、化石燃料であることには変わりない。さらなる排出削減への努力が需要拡大の鍵を握る。

「米国のガス市場における長期的役割を促進する一つの要素が、ガス生産の上流でのGHG削減策だ」

エクソンのクラーク氏はそう言い切る。

エクソンは米国有数のシェールガス生産地「パーミアン盆地」における30年までのネットゼロ目標を設定。クラーク氏は「当社を含めた多くの開発企業がCCS(CO2回収・貯留)設備を調査している」と明かす。

シェブロンのパーフィット氏も「石油・ガス事業の成長と同時に、炭素強度の大幅削減にも取り組む」と決意を語り、「フレアリング(余剰ガスの焼却処分)停止やLNGプラントでのメタンスリップ(メタン漏えい)対策を取らなければならない」と課題を挙げる。

一方、ガス価格高騰により、経済的に余裕のない国々が石炭に回帰している傾向も指摘された。

ビトールのハーディ氏は「今冬もガス価格が上昇すると、パキスタンやインド、中国などはLNGを受け入れず、他の燃料を使用する傾向が今後も続く。アジアは依然として19―21年の消費レベルまで戻っていない。一方、欧州はガスを必要としており、上昇した価格を支払うことになる」と分析する。

 

■独越比に供給開始

シェル・エナジーのスティーブ・ヒル上級副社長は新たな輸入国増加への期待感を口にする。

「われわれはマーケットの驚異的な成長を目にし、過去1年で新たにドイツ、ベトナム、フィリピンの3カ国への供給を手掛けた。LNG業界が過去10―15年間協議し続けてきた市場がついに現実になり、インフラが整備されている。最初のカーゴが届けられ、LNG導入の課題を大きく打ち破り、大きな成長の可能性が生まれている」

Eniのシグノレット氏も「当社はガスとLNGが未来を創ると信じており、30年までにトータル生産に占めるガス比率を6割、50年には9割とする大きなミッションを定めている。LNGビジネスの持続可能性には規模が鍵を握り、欧州だけでなく、最も成長の見込まれるアジアの顧客にもリーチしたい」と意気込む。

引用至《日本海事報》2023年09月27日デイリー版1面  

【ガステック2023】〈欧米メジャー LNG市場展望〉長期売買契約を再評価、舶用燃料化にも期待。アジア新市場開拓、ガス低炭素に注力|日本海事新聞 電子版 (jmd.co.jp)

パナマ運河、「過去100年で最悪の干ばつ」。コンテナ船など船腹タイトに

パナマ運河の渇水が深刻化しており、「過去100年で最悪の干ばつ」と評されている。2月以降、段階的に同運河では水不足を理由に通航する船舶の隻数、喫水ともに制限されてきた。パナマ運河の通航制限による滞船でコンテナ船やドライ船、タンカー、ガス船など船腹需給のタイト化に拍車が掛かる可能性がある。

米有力紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は8月18日、「パナマ運河の両端の入り口の船舶の滞船は200隻に達している」と報じた。パナマ運河庁(ACP)は今月5日、船舶の滞船が減少していると発表。滞船は108隻と前週の135隻から20%減少し、「この時期としては平年並み」とコメントした。

しかし、パナマ運河の渇水に対する危機感は拭い切れていないようだ。

パナマ運河は淡水で運営されており、これは世界の主要な水路と異なっている。パナマ運河の水源となるガトゥン湖は淡水の人造湖だ。

ガトゥン湖から太平洋、大西洋へと続く水門(ロック)と水門で区切ったスペースの閘室(こうしつ)の中に水を閉じ込める。そのスペース内の水量を増減することで水位を上下させ船舶を通航させる。

「パナマ運河のエレベーターと呼ばれる通航段階用の水として海水を利用することは、設備の不具合を起こす可能性もあり使用できない」(日本の海運会社)

パナマ運河庁の関係者は、「過去20年、降水量は減少し続けている。干ばつはパナマ運河だけでなく、パナマ全体にも広がっている」と説明している。

パナマ運河は既に毎日の通航隻数を36隻から32隻に減少させているほか、喫水制限も実施。

パナマ運河の喫水が1フィート下がるごとに、コンテナ船は300から350個のコンテナを船から降ろさなくてはならないという。

降ろされたコンテナは、パナマ運河の反対側まで鉄道輸送されるケースもある。

パナマ運河の通航料も値上げされており、WSJによると、早期通航のためにドライバルク船が通常支払う40万ドルに比べ、オークションの実施などで90万ドル相当まで料金が値上げされているケースもあるとみられる。

パナマ運河の通航制限は既に海運市場に影響を与え始めている。

北米の穀物輸送では、パナマ運河を通航する前に積み込まれるミシシッピ川流域でもバージの滞船が発生している。

南米産穀物の輸送にも使われるパナマックス市況は22日のロンドン市場で1日当たり1万3828ドルと採算ラインの1万2000ドルを上回った。中型バルカーのスープラマックスも同1万4908ドルと続伸している。

ガス船はさらに船腹タイトな状況だ。

米国はシェールガス由来のLNG(液化天然ガス)をメキシコ湾沿岸や米西岸の基地から出荷。ロシアのウクライナ侵略で欧州ではこれから冬場にかけ天然ガスの不足が懸念されている。

英クラークソンズ・リサーチによると、今月1日付の17万4000立方メートル型2ストローク船のスポット市況は前週比31%高の21万ドルへ急騰。8日付では22万ドルへ続伸した。採算ラインの8万―9万ドルの倍以上の値がついている。

LPG(液化石油ガス)を輸送するVLGC(大型LPG船)のスポット運賃も急騰。VLGCは世界に現存船が340―350隻と少なく、滞船などの影響を受けやすい。北米―アジア間を中心に用船料は1日当たり13万ドルと損益分岐点の5倍に達している。

外務省経済局によると、2022年度の通航量は1万3003隻。パナマ運河を利用する日本発着の貨物は全体の13%で、米国、中国に次いで第3位。AFP通信によると、パナマ政府の年間歳入は25億ドル(約3675億円)に上った。

今後、コンテナ船の滞船が続けば、コンテナ船の需給タイト化につながる可能性もありそうだ。

 

引用至《日本海事報》2023年09月26日デイリー版1面

パナマ運河、「過去100年で最悪の干ばつ」。コンテナ船など船腹タイトに|日本海事新聞 電子版 (jmd.co.jp)

邦船大手、ケープ刷新に障壁。既発注船枯渇。重油焚き新造用船停滞

邦船大手3社(日本郵船、商船三井、川崎汽船)のケープサイズバルカーの船隊刷新が、新造用船の停滞という障壁に直面している。各社は同船型ではLNG(液化天然ガス)燃料船を自社で整備する一方、高齢船の退役が続く中で船隊規模を維持するため、最新鋭の重油焚(だ)き船を新造用船で一定数確保したい考え。実際、複数社が今年前半まで重油焚きケープサイズの新造用船を進めてきた。だが足元では、その対象だった船価上昇前の日本造船所への既発注船がほぼ枯渇。船価の高止まりで新規発注も見込みづらく、新造用船は当面様子見せざるを得ない状況だ。

 

「ケープサイズ船隊の刷新に向け、LNG燃料船の自社整備に加えて、EEDI(エネルギー効率設計指標)フェーズ3対応の燃費性能に優れた重油焚き船を一定数、新造用船で確保する必要がある」

大手邦船オペレーター(運航船社)3社の幹部はこう口をそろえる。

実際、複数社が今年半ばまでに、ギリシャ船主大手が日本造船所で建造したケープサイズを3隻ずつ新造用船した模様。同船主は当該船について、日本海事新聞の取材に対し「期間平均5年、日建て約2万ドルの用船契約に投入する」と回答した。

このほか郵船は昨夏、米船主フォアモスト・グループから、名村造船所が建造するEEDIフェーズ3対応のケープサイズ2隻の新造用船を決めたことが表面化。同2隻は用船期間が7年で、用船料はインデックス・リンク(市況連動)。2024年ごろの竣工を予定する。

邦船大手はこれ以外にも昨年から今年前半までに、日本建造の重油焚きケープサイズの新造用船を国内外の船主と水面下で進めてきた。

邦船社が新造用船の対象として特に検討しやすかったのは、「船価上昇前に海外船主が日本造船所での整備を決めた用船フリーの既発注船」(邦船大手幹部)だ。

ケープサイズの新造船価は21年初めから上げ基調に入ったが、前出のギリシャ船主の発注船のように23年前半納期の新造船はまだ上昇途上だったため、用船料も「採算の合う範囲に収まった」(同)。

海外船主からの新造用船が増えている背景には、邦船社が志向する「用船期間の短期化に柔軟に対応できるプレーヤーが多い」(同)との評価があるようだ。

邦船大手の間では、重油焚きケープサイズの新造用船期間について「3年前後などの短期が理想だが、信頼関係のある国内船主の起用を軸に検討していることもあり、5―7年程度が現実的」(同)との声が昨年までは多かった。

しかし、ケープサイズは足元の新造船価が18万重量トン型で7000万ドル弱、21万重量トン型で7000万ドル台後半と、20年の底値から4割弱も上昇。この過程で、国内船主は邦船社の想定以上に長期貸船志向を強めた。

国内船主には船価が高額なケープサイズではかねて、10年以上の定期貸船を志向する声が根強かった。これがさらなる値上がりを受け、「今の船価で10年以上の長期用船を付けずに発注すれば、会社が傾く痛手を被りかねない」(四国船主)との認識が強まった。

一方、海外船主に対しては、「船価に応じたコストベースの用船期間・用船料を提示する国内船主とは異なり、ケープサイズでも竣工時から1―2年の短期用船に応じるなど、マーケットベースの条件提示を柔軟に行うプレーヤーが多い」(同)との評価が用船者側には根強い。

このため邦船オペの間では、「期間5年未満のケープサイズの新造用船は海外船主と話をせざるを得ない」(同)との声が多く、実際ここ1―2年で決まった新造用船は用船元が海外になっているケースが多いようだ。

■船価高で新規案件減

しかし今後は当面、邦船社の重油焚きケープサイズの新造用船は停滞する公算が大きい。

各社がターゲットとしてきた海外船主の日本造船所への既発注船は「ほぼ底をついており、用船フリーで残っている数隻は条件が合わない」(同)。

これまで同船型を用船フリーで日本に発注してきたギリシャ勢についても、「船価の高止まりでさすがに様子見姿勢のようで、新規の新造案件は当面出てきそうにない」(同)。今年前半に日本造船所に発注されたケープサイズは、大部分が国内船主の海外オペ向け案件とみられている。

各社が100隻規模を運航する大手邦船オペのケープサイズ船隊は、リーマン・ショック前後の07―09年に新造船竣工が集中した経緯があり、船齢15歳弱の高齢船の退役が今後相次ぐ見通し。

全船を重油焚き船より船価が20億円程度高いLNG燃料船に入れ替えるのは現実的でなく、用船の対象となる重油焚き新造船も発注停滞が続く中、各社はケープサイズの船隊刷新で難しい舵取りを迫られそうだ。

 

引用至《日本海事報》2023年09月20日デイリー版1面

邦船大手、ケープ刷新に障壁。既発注船枯渇。重油焚き新造用船停滞|日本海事新聞 電子版 (jmd.co.jp)

液化CO2船 55隻必要。30年末までに。9000万トン輸送需要創出

ノルウェーのエネルギー調査会社ライスタッド・エナジー(本社・オスロ)は2030年までに液化CO2(二酸化炭素)輸送船が55隻必要になるとの見通しを公表した。同社によると、計画中のCO2回収プロジェクトを前提とした場合、10年後に9000万トンの輸送需要が創出されるとしている。ガスの輸出入を処理するためのターミナルは48カ所が必要になる。

ライスタッドは4日、液化CO2輸送見通しについてのリポートを発表した。

世界的にCO2の削減、処理が喫緊の課題となっている。

具体的には50年のカーボンニュートラルを目指すため、「CCS(CO2回収・貯留)」や「CCUS(CO2回収・再利用・貯留)」の導入が検討されている。

工場などで排出されたCO2は分離・回収地で再利用および圧入して貯留され、陸上や洋上の適地まで船で輸送し地中へ貯留される。

海運業界では大量輸送可能な大型の液化CO2輸送船が注目されている。

ライスタッドによると、世界的にCCUS市場が拡大する中、重要な点はインフラと説明。「(課題は)プロジェクトに利用可能な輸送、貯留ネットワークの不足である」と指摘している。

その上で、30年までに330のパイプラインが稼働する予定であり、「パイプラインを通じ陸上の貯蔵場所や沿岸ターミナルに大量のCO2を輸送することが理想」とした。

液化CO2輸送は、「低コストで二酸化炭素を長距離輸送するための最も柔軟なソリューション」との見解を示している。

地域的には北海が液化CO2輸送の急増の中心的な地域になる。

ノルウェーは既に発表済みのプロジェクトなどを前提に30年までに年間2600万トンの輸送需要が発生する。「世界全体のCO2輸送量の約30%を占めることになる」。次いでオランダが年間2300万トン、英国が同2000万トンと予想する。

日本企業も参画するノルウェーのノーザンライツ・プロジェクトについては、「25年初頭には最初の液化CO2輸送、貯蔵ネットワークになる。同プロジェクトは国内輸送されたCO2と北西ヨーロッパからの輸送量をターミナルで受け入れ、その後、海底にガスを配管し貯蔵する」と説明した。

ノーザンライツは、ノルウェーのエネルギー大手エクイノール、石油・ガスメジャーの英シェル、仏トタルエナジーズの3社が出資するCCS事業会社。

同社は21年10月、液化CO2輸送船2隻を24年半ばの納期で発注。川崎汽船が長期の裸用船契約と定期用船契約を結んでいる。

これ以外でノーザンライツは1日、中国船舶集団(CSSC)傘下の大連船舶重工(DSIC)と、液化CO2輸送船1隻の建造契約を締結したと発表。同社の液化CO2輸送船発注は3隻目で、建造中の姉妹船と同じく、7500立方メートル型、LNG(液化天然ガス)燃料対応となる。

ライスタッドは液化CO2輸送船の他の地域の需要としては、太平洋地域では豪州について言及。「国内プロジェクトや日本を含む近隣アジア太平洋諸国からCO2を輸送、貯蔵する世界市場の重要なプレーヤーになる」と指摘した。

 

引用至《日本海事報》2023年09月07日デイリー版1面
液化CO2船 55隻必要。30年末までに。9000万トン輸送需要創出|日本海事新聞 電子版 (jmd.co.jp)

需要が低迷し、海運業は旺季不況に陥る

成衣から電子機器まで、さまざまな業界で在庫が過剰な状況が続いているため、海運需要が低迷しています。その結果、港湾で船舶が滞留する事態が発生し、業界全体が旺季不況に陥っています。

7月には、アジアと欧州間の海運便が13便が欠航または遅延しました。

年末のホリデーシーズンに向けて、海運需要は通常、この時期にピークを迎えますが、期待は薄れつつあります。アナリストは、この傾向が今後数か月間続くと予測しています。

世界最大のコンテナ船運航会社である地中海海運は、先週、アジアから欧州北部への航路でMSC Deilaコンテナ船の運航をキャンセルしました。同社は、この航路の需要が減速したことを理由に挙げています。

MSCによると、この船は14,000TEUのコンテナを運ぶことができる。同社は、代替サービスを提供するための対応策を検討していると述べています。MSCは7月下旬にも1便の運航をキャンセルしています。

貨物代理会社のFlexportの海運・航空部門の責任者であるSanne Manders氏は、「コンテナ船会社は、船舶を係留する形で『生産能力の調整』を行っています。シンガポールに行けば、港外に多くの船舶が停泊しているのを見ることができます。これらの船舶は、より良い運賃を待っています」と述べています。

欠航が頻発していることで、大手海運会社の収益が打撃を受けています。フランスのCMA CGMは、第2四半期のEBITDA(税引前利益)が前年比73%減の26億ドルだったと発表しました。ドイツのHapag-Lloydは、上半期のEBITDAが前年同期比96%減の38億ドルでした。デンマークのA.P. モラー・マースクは、第2四半期のEBITDAが前年比71%減の29.1億ドルでした。

Manders氏は、「今後数か月間、海運量はさらに増加するでしょう。これにより、運賃は圧迫されるでしょう」と述べています。

バルチック海国際海運協会のチーフ海運アナリストであるNiels Rasmussen氏は、遠東から北欧への海運費率が過去1年間で圧力を受けており、上海航運取引所の3月から5月のコンテナ即期運賃が前年比90%以上減少したと述べています。

航運コンサルタント会社のDrewryの資料によると、7月のアジアから欧州への航路では、13便が空航(欠航)となりました。8月と9月も同様の状況になると予想されています。

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