IMO、複数の制度を融合へ。GHG減、技術・経済的手法

IMO(国際海事機関)で国際海運からのGHG(温室効果ガス)排出削減の技術的手法と経済的手法に関して、最終的には各国で妥結できる部分・要素を融合していくことになりそうだ。現時点では複数の制度が提案されている。MEPC81(第81回海洋環境保護委員会)では両手法で複数の制度が浮上し、各国間で燃料転換を図るため、燃料GHG強度を段階的に強化していくことにおおむね一致した。だが、「燃料製造過程の排出考慮」「課金の導入」「途上国支援の有無」などについては、国によって意見・立場が異なる。全ての国が賛同する制度が見られない中、来年中に有効な制度がまとまるか注目される。

IMOは昨年改定した「GHG削減戦略」で技術的手法と経済的手法から成る中期対策について、2025年の承認・採択、27年の発効を規定。各国はこのスケジュールに沿って、審議を進めている。

3月のMEPC81には技術的手法で欧州のGFSや、中国、ノルウェー、ブラジル、UAE(アラブ首長国連邦)、アルゼンチン、南アフリカ、ウルグアイなどによるIMSF&Fが提案された。経済的手法では、日本のフィーベートをはじめ5制度が挙がった(別表参照)。

加えて、各提案国が提案内容を反映した海洋汚染等防止条約(MARPOL条約)改正案を作成し、10月の次回会合(MEPC82)に提出することになった。

一方、「全ての国が納得・賛同している制度は現時点ではない。今後は各制度を構成する要素を精査し、合意できる部分を固めていく作業になるのではないか」

日本政府代表を務める国土交通省海事局海洋・環境政策課の塩入隆志環境渉外室長はこう予想する。

大別すると、技術的手法を構成する要素には「GFI(GHG燃料強度)の導入」「柔軟性メカニズム(規制値超過・未達の場合の船舶間の融通)の導入」や、対象となる燃料の範囲を「『WtW』(ウェル・ツー・ウェイク)」とするか「『TtW』(タンク・ツー・ウェイク)」にするか、などが挙げられる。

MEPC参加国の中で、GFIの導入に関しては明確な反対は見られないが、WtWについては一部の途上国が異を唱えている。TtWは欧州や島しょ国が反対姿勢だ。柔軟性メカニズムについては、要否やその内容で意見が分かれているという。

経済的手法を構成する要素では、「GHG排出量への課金」「課金によるゼロエミッション燃料船への支援」「途上国支援の是非やその範囲」などが挙げられる。各国間では、「課金の導入そのものの是非」「課金により集めたお金の使途を海事分野に限定するのか否か」で見解が異なる模様だ。

日本提案のフィーベート(化石燃料船に対して課金〈fee〉し、ゼロエミッション船に対して還付〈rebate〉を行う課金・還付のこと)では、GHG排出量に課金し、ゼロエミ燃料船を整備するファーストムーバー(先行者)への還付を規定している。

日本はMEPC82までに同制度の実現を担保するMARPOL条約改正案を練り上げていく。

並行して、各国で思惑が異なる技術的手法、経済的手法の構成要素について調整し、妥結点を見いだしていく方針。

塩入氏は「各論点について合意できるところを見極め、GHG削減戦略の目標(50年ごろのネットゼロ)の達成にかなう制度の構築を図りたい」と意気込みを語る。

 

 

引用至《日本海事報》2024年05月02日デイリー版1面

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