住友商事、船舶海洋に積極投資。洋上風力 重点強化。重量物船保有へ

住友商事は船舶海洋事業への投資を積極化する方針だ。現在の船舶事業部を4月1日付で「船舶海洋SBU(ストラテジック・ビジネス・ユニット)」に改編。昨秋新設した「海洋事業開発チーム」を推進役に、洋上風力発電分野を重点的に強化する。保有船事業ではその一環で、重量物船など洋上風力関連船を船種のポートフォリオに加えていく。中小型バルカーへの投資も再開し、近年の売船でスリム化した保有船隊の拡大を狙う。

 4月1日付で船舶海洋SBU長に就く豊田高徳船舶事業部長が日本海事新聞の取材に応じ、新体制での事業戦略について「船舶トレード事業と造船事業、保有船事業が柱であることは今の船舶事業部と変わらないが、今後は組織名に冠された通り、洋上風力分野を軸に海洋事業も強化していく」との方針を明らかにした。

 その背景に関し、「足元では0・4%に過ぎない世界の発電量に占める洋上風力の割合は、2050年ごろに10%程度まで拡大する可能性があるとも言われている」と、急成長市場の潜在性に言及。

 その上で「船舶用の新燃料についても今後、運航時のCO2(二酸化炭素)排出削減のみならず、製造時にCO2を排出しない再生可能エネルギー由来のグリーン燃料でいかにつくれるか、に焦点が当たるだろう。洋上風力は中長期的に、舶用グリーン燃料を製造するためのグリーン電力としても需要が相当高まるとみており、周辺事業の開発に注力する」と語った。

 船舶事業部は新規事業開発の一環で昨年8月、部内に「海洋事業開発チーム」を新たに設置。着床式洋上風車の基礎部分であるモノパイルや風車を構成するブレード・ナセルなど、洋上風力関連貨物の輸送に対応する重量物船や風力建設支援船などの保有・参画に加えて、浮体式洋上風力の浮体基礎構造物の製造販売および関連サプライチェーンの構築も視野に入れ、洋上風力分野の事業開発を重点的に進めている。

 豊田事業部長は保有船事業については「船種のポートフォリオにマーケット船とは性質の異なる洋上風力関連船を組み入れていくとともに、中小型バルカーの代替新造も再開し、投資拡大に舵を切る」と明言した。

 保有船隊の規模に関しては「隻数の目標は設けないが、市況を見ながら全社の投資基準をクリアする良質なアセットを積み上げていき、短中期的に現在の倍程度にはしたい」との考えを示した。

 住商はここ数年、高齢船の売却を進めた結果、ピーク時に30隻規模を擁していた保有船隊が現在では半数程度にスリム化している。新造船価が高止まりする中、新たな船の仕込みは簡単ではないが、今後は長期的な視点に基づき、中小型バルカーなどマーケット船隊の入れ替えも進める。「保有船事業は今後、再拡大モードに入るということだ」(豊田事業部長)

 住商は4月1日付で、従来の「事業部門」と傘下の「本部」「部」を廃止し、新たに九つの「グループ」と「SBU」「ユニット」を設置する機構改正を実施。従来の「リース・船舶・航空宇宙事業本部」の「船舶事業部」は、「輸送機・建機グループ」の「船舶海洋SBU」となる。

 同社は各SBUについて、「注力事業」「シーディング」「バリューアップ事業」「バリュー実現」の4象限に分類。高い収益性が見込める「注力事業」に重点投資し、アセットの積み増しなどを行う計画。

 住商は21年4月、トレーディング(新造船、中古船、用船の仲介)事業を100%子会社の住商マリン(東井直彦社長)に移管。本体の船舶事業部は新規事業の開発に集中するとともに、トレーディングと並ぶ船舶部門の中核である保有船事業を、子会社の主管業務を通じて手掛けている。

引用至《日本海事報》2024年03月11日 デイリー版1面

三菱重工機械システム、完成車を自動搬送。三河港で実証実験

【中部】三菱重工業(MHI)グループの三菱重工機械システム(MHI―MS)は2月5日から今月1日まで、愛知県の三河港蒲郡地区で、屋外で自律走行する電動の車両搬送ロボットを使った完成車自動搬送の実証実験を行った。港湾における完成車輸送の効率化やデジタル化を図る取り組みで、労働環境の改善や人手不足への対応、カーボンニュートラルポート(CNP)への貢献を目指す。

MHIとMHI―MSは2021年、仏ベンチャー企業スタンレーロボティクス(SR)と、自動車の自動バレーパーキング(駐車スペースまでの往復と駐車を自動で行うサービス)や完成車自動搬送を実現する自動搬送ロボット事業を共同展開することで合意。SRの自動搬送ロボットと、MHIグループの無人システム監視・管理などの技術を組み合わせたサービスの展開を目指している。

自動搬送ロボットは制御用のGPS(衛星利用測位システム)と高性能センサーLiDAR、監視用のカメラを備え、Wi―Fi通信により管理する。伸縮・昇降プラットフォームを車両下部に差し入れた後、プライヤーが四輪をつかんで持ち上げ、ヘッド側の360度回転するタイヤをモーターで駆動して搬送する。最大時速10キロメートル、最大搬送可能重量2・6トンで、充電ドックで自動充電し、夜間や雨天時も使用できる。

実証実験では、自動搬送ロボット2台を用いて、車両2台を並行して入庫・出庫した。ドライバーからロボットへの車両受け渡しエリア、車両保管エリア、仮置きエリアに分け、事前にデジタルマップで作成した入出庫の経路データを読み込ませて搬送した。

制御スペースはパソコンやサーバー類、アンテナを設置し、モニターで監視するほか、ロケーション管理やロボットへの指示を行う。システムは既設の詰め所などにも設置でき、サーバー1台でロボット10台まで制御が可能。現時点で車両情報を管理するRFID(無線タグ)の読み取り作業が必要だが、将来的には受け渡しの自動化も視野に入れる。

具体的な用途はモータープールやターミナルでの完成車の搬送・並び替え、船積み準備、キャリアカー積載準備などを想定する。勾配・段差の走行や通信環境、マッピングの課題があり船積みは想定していない。

実証実験は愛知県の「2023年度新あいち創造研究開発補助金」を活用し、完成車の取り扱いが多い三河港蒲郡地区で行った。期間中には国や自治体、海運・港運事業者、自動車メーカーなどが見学に訪れ、大きな注目を集めたという。

電動ロボットによる自動搬送についてMHI―MSの担当者は「カーボンニュートラルや人手不足などの課題解決に向けた手段になる」と意義を強調。「ドイツの完成車一時保管用モータープールで1年以上前から実際のオペレーションに導入されている。来年度は日本でも完成車用モータープールで、実際のオペレーションを想定した実証実験を進めたい」と話す。

 

 

引用至《日本海事報》2024年03月06日デイリー版1面

サステナブル・シッピング・イニシアチブ部門長 エリザベス・プティ・ゴンザレス氏、アンドレア・ミュー氏。脱炭素鉄鋼で循環型事業へ

3月13―15日、シンガポールで行われる国際海事展「アジア・パシフィック・マリタイム」(APM)。同展は隔年開催で、企業・団体による展示のほか、海事業界が直面する諸課題に対し、関係者らが議論するさまざまなセッションから構成される。これらに登壇予定の、海運業の持続可能性の推進を目的とした国際的なイニシアチブ「サステナブル・シッピング・イニシアチブ」(SSI)のエリザベス・プティ・ゴンザレス部門長(パートナーシップ担当)とアンドレア・ミュー部門長(脱炭素担当)にSSIの取り組みについて聞いた。(神頭久)

――SSIの主要な取り組み、プロジェクト概要は。

「われわれの活動は、海洋、地域社会、人々、透明性、金融、エネルギー―の六つの鍵となる領域を基に策定した『持続可能な海運産業へのロードマップ』に基づく。海運における持続可能性の実現に向け、体系的な見解の下にこれらを推進する」

「直近の3年間では、寿命を終えた船舶の鉄スクラップ、船員の福利厚生、持続可能な船舶燃料、グリーン輸送回廊などのトピックに取り組んでいる」

「鉄スクラップに関しては、利用の最適化のみにとどまらず、グリーンスチール(GHG〈温室効果ガス〉の排出が少ない手法で生産された鉄鋼)の需要部門として機能させ、同時にスコープ3(自社以外のGHG排出量)を削減することで、海運産業の循環型ビジネスモデルへの移行を推進する」

「船員の権利、福利厚生については、船主、運航会社、用船者が、これらの達成度合いを把握できる行動規範および自己評価アンケートの作成を行う」

「船舶燃料の持続可能性については、コスト、供給力、実現可能性に加え、環境、社会、社会経済的基準を基に、燃料に関する議論において考慮すべき15の項目を明らかにすることができた」

「グリーン輸送回廊に関しては、回廊がもたらす社会経済的な利益について、マースクゼロカーボンシッピング研究所(MMMCZCS)、国連グローバル・コンパクト(UNGC)と共同で出版物を発行した。これらの将来性について焦点を当てながら、公正かつ公平な回廊への移行を実証している」

「APMでは、これらの回廊の発展と成功のために、政策と規制の円滑化、技術統合、利害関係者間の協力の必要性について、業界関係者と意見を交わす予定だ」

■日本が重要な役割

――SSIのメンバーになることで創出される価値と、日本のメンバーのメリットは。

「日本の海事産業は国家にとって重要な分野であると同時に、国際貿易の原動力となっている。造船業界の先導者として、日本は高度な技術と高品質な船舶の建造力で知られている。デジタライゼーションにおいては、イノベーションの最前線に位置し、今後数年間は業界における重要な役割を担うだろう」

「日本の企業やステークホルダーがSSIのメンバーとして参加することで、船主、運航会社、用船者、港湾、NGO(非政府組織)など、海事関係者の多様なネットワークとのつながりを通し、イノベーションとコラボレーションを加速させることができるメリットがある。SSIのメンバーは、シンガポール、英国、デンマーク、ドイツ、カナダなどを拠点に、知識の共有と協力のための国際的なコミュニティーを形成している」

■CO2・7億トン削減

――グリーンスチールの採用は、海運業界にどのような影響を与えるか。

「鉄鋼は船舶の重量の75%以上を占め、最も主要な材料だ。しかし、鉄鋼の生産は大量のCO2(二酸化炭素)を排出し、海運業界のスコープ3の主な要因にもなる。船舶燃料など、運航に関わる排出量削減の取り組みに続き、鉄鋼生産におけるCO2削減も脱炭素化への取り組みにおいて焦点となる」

「海運業は鉄鋼の需要部門であるとともに、鉄スクラップの供給部門でもある。鉄スクラップは、鉄鋼の生産において重要な材料でもあり、鉄鋼部門の脱炭素化戦略の一つだ」

「グリーンスチールを採用することで、体化排出量を削減し、海運のスコープ3を削減できるほか、グリーンスチールの鉄スクラップが高価格で取引される見通しから、廃船となった船舶の価値が高まることも期待される。一次資源の採取量が削減できることで、自然景観や生息地の保全、生物多様性の保護にもつながる」

「英船級協会ロイド・レジスターの脱炭素ハブと、英海事系コンサルティング機関UMASによる最近の分析では、国際海運がグリーンスチールを段階的に採用することで、2024年から50年の間に7億7600万トンのCO2累積排出量を削減できることが示された」

「マースクなど一部の海運会社は、すでにグリーンスチールを利用可能にするよう求めている。今治造船からもグリーンスチールを使用した新造船が製造されたことが昨年話題となった。このグリーンスチールは質量バランス法を用いて生産された」

「将来、グリーンスチールに興味を示す造船所や、ゼロエミッション船のみならずグリーンスチールを採用した船舶に関心を持つ船主が増えることを期待している」

「APMでは、グリーンスチールの利用による船舶建造時の排出量削減と、海運業における循環型のビジネスモデルの達成に向け、立ちはだかるさまざまな障壁について掘り下げる予定だ」

「日本は鋼鉄、造船、船主業など全ての分野において重要な国であり、このトピックにおいて大きな影響力を持つ。日本企業と協力し、知識を共有し、将来の船舶にグリーンスチールの普及が実現することを願っている」

――25年6月から発効するシップリサイクル条約について。

「同条約は、船舶にインベントリー(IHM)の保持を義務付けている。IHMは、船舶の構造物や部品に含まれる危険物質のリストを記録した文書であり、船舶の寿命が始まってから解体されるまで保持されなければならない」

「これは、船主、取引場所に関係なく保持することが求められる。船舶が運航する20―30年の間に追跡可能なことを示すものであり、より多くの循環性を確保する上で重要な一歩だ」

「同条約が起草された09年当時は、まだ循環性の原則について議論されることが少なかった。このため条約の発効後、この分野の進展を検証し、循環原則をどのように業界に組み込むかを検討するための改正プロセスが着手されることを期待する」

 

 

引用至《日本海事報》 2024年03月06日デイリー版1面

国内船主、船価高・円安で売船。ドライ好況 買い需要増。4―6月成約拡大へ

国内船主が保有バルカーの売船に動き出した。年初から上げ足を速めていた中古バルカーの船価相場は足元、年末比で最大4割高まで急騰。これを受け、高齢船売却のタイミングをうかがっていた船主が円安局面のうちに利益を確定させる売船を志向し、中古船市場に日本勢の売り物が増えてきた。一方、買い手側は1―3月の閑散期にドライ市況が上昇局面に入ったことで、用船マーケットの先高観から購入意欲を高めており、「増えた売り玉(売却候補船)を買い需要が上回っている」(商社関係者)。売買成約は4―6月に向けて増えていくとの見方が強い。

「中古バルカーの売買船の成約件数は昨年まで、主要な売り主である国内船主が売船を手控えてきたことで低調に推移してきた。しかし今年に入り、日本船主の船齢10歳強の売り物が目立って増えており、用船契約の更改が多い4―6月に相当数が成約に至る公算が大きい」(商社船舶部)

売買船市場関係者の間でこうした見方が強まっている。

国内の専業船主がここにきて売船意欲を高めている背景には、中古バルカーの船価相場が年初から急騰していることがある。

英クラークソンズ・リサーチの統計によると、3月初め時点の船齢10年の中古船価は、ケープサイズが4300万ドル(昨年末比1200万ドル〈39%〉高)、カムサマックスが2750万ドル(同350万ドル〈15%〉高)、ウルトラマックスが2700万ドル(同750万ドル〈38%〉高)、ハンディサイズが2000万ドル(同300万ドル〈18%〉高)と、全船型が短期間で値を上げている。

複数の市場関係者によるとバルカー中古船価の騰勢は、中国・旧正月(春節)の連休が明けた2月後半から一段と強まっているようだ。

「中古バルカーのアセットバリュー(資産価値)の上がり方は旧正月明け以降、一段とシャープになった。中でも昨年導入されたCII(燃費実績格付け制度)が意識され、2013年以降に建造されたME(電子制御)エンジン搭載船に対する需要が明確に高まっている」(別の商社船舶部)

「新造船は船台が27年の先物まで埋まり、今後主流になる新燃料も定まらない中、ギリシャなど海外船主の投資資金が中古船に向かっている。一方、売り手もここ数年のドライ好況で手元資金が厚くなっており、投げ売りはしないため、中古船価の上昇が続いている」(海運ブローカー)

国内船主の間では、22年前半まで続いたドライ市況高騰下、中長期の用船契約満了後の保有バルカーを半年から1年程度の短期貸船でつなぎ、運航益を最大化する動きが広がった。

バルカーの用船市況と中古船価相場が軟化した同年半ば以降は、両マーケットの回復をにらみながら、当該船の売却のタイミングをうかがっていた船主が少なくない。

こうした船主は当該船の老齢化が徐々に進んで高レートの用船契約が付きにくくなる中、中古船価相場の上昇を受けて「足元の円安局面を逃さず利益を確定させようと、複数社が売船に踏み切り始めた」(商社船舶部)。

一方、買い手側はバルカーの用船市況の先高観に後押しされ、手元資金が潤沢なギリシャなどの海外船主が船腹確保の意欲を強めている。

ギリシャ勢は昨秋まで、ドライ市況の軟調が続く中で中古船価のレベル感に神経質になっていた。しかし、バルカーの用船市況が旧正月の連休が明けた2月第4週から騰勢を強めていることを受け、「(売り手の)国内船主が提示する一段高い船価を許容する姿勢に転じている」(同)という。

この結果、「売り玉は増えているが、買い需要がそれを上回っており、品薄感が強まっている」(同)。これに伴い、足元の船価は「新造船供給が少ないケープサイズに特に高値が付いており、中小型バルカー3船型とも下値が切り上がっている」(同)ようだ。

こうした売買船案件について、市場関係者は「4―6月期に向けて成約が増えていくだろう」(同)と口をそろえる。足元で売り物となっている国内船主の短期契約投入船は、ドライ荷動きの閑散期が終わった第2四半期に契約更改となるケースが多いからだ。中古売買船はMOA(売買船契約書)の締結後、3カ月以内に本船を引き渡すのが一般的。このため、売買船商談のピークは今月末からになりそうだ。

 

引用至《日本海事報》2024年03月05日デイリー版1面

OA、提携5年延長。2032年まで、4社協調を維持

仏CMA―CGM、中国COSCO、台湾エバーグリーン、香港OOCLの4社で構成する定航アライアンス「オーシャンアライアンス(OA)」は27日、提携期間を5年間延長して2032年までとすると発表した。現行の契約では27年までとなっていた。コンテナ船社のアライアンスを巡っては25年1月末で2Mが解体する一方、独ハパックロイドがザ・アライアンス(TA)を抜けてマースクと新アライアンス「ジェミニ」を結成することが決まっている。動向が注目されていたOAは発足当初のメンバーで32年まで続くことになる。

OAは16年4月に現行の4社で結成を発表。17年4月からアジア―北米、欧州、大西洋など主要7航路を提携範囲としてサービスを開始した。発足時点での契約期間は17年からの5年間に、オプションとして5年延長可というものだったが、19年に5年延長を決定。27年までの契約延長が確認されていた。

OAメンバーの一社であるCMA―CGMのルドルフ・サーデCEO(最高経営責任者)は、「今回の5年延長の決定は、われわれが顧客ニーズに応え、信頼性の高いサプライチェーンを提供していくということを約束するものである」とコメントしている。

ハパックロイドの25年1月末でのTA離脱が決まったことで、業界内ではOAメンバー船社とTAによる提携も一時、うわさされていた。しかし、今回の延長決定でOAの4社体制は継続することとなり、25年以降も3大アライアンスの中で発足当時の構成メンバーが変わらない唯一のグループとなる。

一方、ハパックロイド離脱後のTAについては、英海事調査機関ドゥルーリーは「北米航路ではワンハイラインズが、欧州航路ではMSCがTAの提携相手になるのでは」との見方を示している。その一方、ハパックロイド離脱後のTAについては、北米西岸航路では引き続き豊富なネットワークを維持できるものの、大西洋航路の維持が厳しくなると指摘している。

 

引用至《日本海事報》2024年02月29日デイリー版1面

三光汽船、海運業90年の歴史に幕。後任確保・新規投資 難しく

三光汽船(本社・東京都港区、田端仁一社長)が海運業の歴史に幕を下ろす。年内に最後の保有船「Sanko Hawking」(8万2500重量トン、2021年に常石造船で竣工)を売却する。同社は14年に2回目となる更生手続きを終了し、通常会社として復帰していた。近年は黒字転換していたが、社長の後任人事が難航。後継者不足や新規投資が難しくなり事業の継続が困難になった。「海運業界の風雲児」として波乱の歴史をたどった三光汽船は創業から90年で海運業から撤退する。

 

三光汽船は1934年に大阪で創業。ほどなく元衆議院議員の故河本敏夫氏が社長に就任すると、戦後の復興に合わせ船隊規模を増加させた。

同社は63年の海運集約に参加せず、「一匹狼」「自主独立」を標榜(ひょうぼう)する。

71年に時価発行増資と第三者割当増資で資金調達を拡大。これを新造船の大量発注の資金に回すと同時に72年にはジャパンライン(当時)株を買い占め、「三光商法」ともいわれた。

一方、石油ショックで不況に直面すると大量の新造船が不採算船となり85年に当時として戦後最大の5200億円の負債を抱え倒産、1回目の会社更生法適用を申請した。

98年に1回目の更生手続きの終結に伴い、00年には同社生え抜きの松井毅氏が社長に就任した。

リーマン・ショック前の07―08年には売上高2293億円、経常利益797億円の過去最高の業績を記録。売上高経常利益率は35%と当時の日本の海運業界でもトップの利益率を誇った。

三光汽船はリーマン・ショック前の好景気に大量の中型バルカーを発注。保有船35隻に対し用船150隻という「過度なレバレッジ経営」(他人資本=船主に頼る経営)に傾注していく。

くしくも85年の倒産と同様に、過度な投資後の不況が同社を直撃する。

中型バルカーだけでなく、オフショア支援船を数十隻規模で発注したことも経営悪化に拍車を掛けた。

12年7月に負債1558億円、用船料の支払い債務4056億円を抱え東京地裁に2回目となる会社更生法適用を申請、13年10月に更生計画の認可を受けた。

再建に向けスポンサー探しに難航するが、13年に米投資金融のエリオットが投融資枠の設定を含め50億円の支援でスポンサー契約を締結。

同社から田端氏が管財人兼社長として就任すると更生計画時点で44隻だった船隊を28隻までスリム化した。海運市況の上昇もあり、わずか1年後の14年12月に更生手続きを終結させ通常会社に戻った。

更生手続き終了後、バルカー、LPG(液化石油ガス)船、アフラマックス、オフショア船、ケミカル(石油化学製品)船などを運航していたが、15―16年にかけ円高で業績が不振に陥る。

段階的に保有船を縮小してきたが、ここにきて11年間、社長を務めた田端氏の健康問題に伴う後継者不足、新造船への投資が難しくなった。

現在、最後の保有船1隻について売却先の選定に入っている。数々の時代の荒波を乗り越えた三光汽船の海運業の歴史に幕が下りることになる。

 

引用至《日本海事報》2024年02月26日デイリー版1面

WSC、従来燃料にフィー課徴を。MEPCに提案、新燃料と価格差埋める

主要コンテナ船社などによる国際海運団体世界海運評議会(WSC)は15日、クリーン燃料の利用促進のための新たな仕組み「グリーンバランスメカニズム」(GBM)を3月に開催される国際海事機関(IMO)・海洋環境保護委員会(MEPC81)に提案すると発表した。MEPCで議論されてきたフィーベート・メカニズムの一種で、化石燃料に対して料金(フィー)を課徴し、クリーン燃料に配分することで、両者の価格差を埋め、コストの平均化を目指す。ウェル・ツー・ウェイク(生産から船上使用までの全工程)でGHG(温室効果ガス)削減量が大きければ大きいほど、割り当てられる分配金も増加する仕組みだという。

IMOでは2050年ごろまでに海運からの排出量ネットゼロを達成するという目標を掲げる。この目標達成へ、一部のコンテナ船社、自動車船社は環境負荷の低い新燃料に対応する船舶を建造・運航しているが、これら新燃料の価格は従来型燃料の3―4倍と高いことに加え、供給量が少ないため、燃料転換が進んでいない。

WSCでは、クリーン燃料での運航や、燃料供給業者の生産への投資を促進するために、グローバルな規制が必要と説明。GBMでは、化石由来燃料とクリーン燃料の価格を、最低限のコストで埋めるためのGHG価格設定に新たなアプローチで取り組むとしている。

GBMにより、就航済みおよび今後竣工する二元燃料船は、新燃料が経済的に利用可能な段階を待つことなく、(割当金により)クリーン燃料を利用することができる。WSCでは、規模の経済によりクリーン燃料の生産拡大にもつながり、経済効率の高い方法で、クリーン燃料のコストを低減できるとしている。

WSCのジョン・バトラー議長兼CEO(最高経営責任者)は今回の新提案の狙いについて「世界貿易の原動力を化石燃料からグリーンエネルギーに切り替えるには時間がかかり、民間・公共の巨額投資が必要となる。世界経済に対するコストを最小限に抑え、気候変動のニーズに確実に対応することがわれわれの共通の責任だ」と説明する。

 

引用至《日本海事報》024年02月20日デイリー版1面

ONE、北米西岸 新サービス。1.3万TEU型7隻、ワンハイと協調

オーシャンネットワークエクスプレス(ONE)は15日、アジアと北米西岸を結ぶ新サービス「AP1」を開始すると発表した。台湾船社ワンハイラインズと共同で運航し、1万3000TEU型のコンテナ船計7隻を投入。開始時期は規制当局の承認を経て、4月末から5月ごろを予定している。アジア―米国西岸航路ではパナマ運河の通航制限や紅海情勢の悪化に加え、北米東岸労使交渉も控えており、今後需要の増加が見込まれている。こうした中、ONEは加盟する「ザ・アライアンス(TA)」外のワンハイと新サービスで手を組むことを決めた。

 「AP1」は台北や蛇口と米国西海岸を直航で結ぶ太平洋横断サービス。寄港ローテーションは、ハイフォン▽カイメップ▽蛇口▽厦門▽台北▽寧波▽上海▽ロサンゼルス▽オークランド▽蛇口▽ハイフォン。運航船はONEが2隻、ワンハイが5隻投入する。

 米国西岸港からベトナム・ハイフォンまでは19日、カイメップまでは22日で接続し、競争力のあるトランジットタイムを提供する。

 ワンハイは既存の北米西岸サービス「AA3」を改編し、「AP1」にアップグレード。ONEはアジアから米国西岸への貨物量の持続的な増加を背景に需要に対応する新サービスの開設を決めた。

 ONEの栗本裕マネージングディレクターは「AP1の導入は、この重要な貿易レーンに対するONEの揺るぎないコミットメントを強調するものだ」とコメントしている。

 マースクとハパックロイドによる「ジェミニ」結成の発表を受け、TAの今後の動向が注目を集めている。船腹量では最大のハパックロイドが離脱することで、別の船社やアライアンスと提携するのではとの見方も出ており、海外報道ではその候補としてワンハイラインズも挙げられていた。新サービスの開設はTAの今後の戦略においてさらなる憶測を呼びそうだ。

引用至《日本海事報》2024/02/19 每日版

オリックス、三徳船舶を買収。保有67隻・船舶管理事業を承継。

オリックスは15日、船主大手の三徳船舶(本社・大阪市、多賀純一社長)の発行済み株式を全て取得すると発表した。三徳船舶の保有船67隻や、船舶管理事業をはじめ全事業を承継する。

 オリックスは三徳船舶の現株主の創業者一族と株式譲渡契約を締結。3月中をめどに全株式を取得する。

 三徳船舶はバルカーや自動車船、コンテナ船などを67隻保有し、第三者保有船の船舶管理事業も手掛けている。

 オリックスは三徳船舶の買収により、包括的な船舶管理を自社で行うことが可能になり、さらに第三者保有船のアセットマネジメントサービスも手掛けていく方針。

 三徳船舶は1972年に前社長の多賀征志氏が設立。昨年4月に多賀征志氏が亡くなったことで、多賀純一氏が二代目の社長に就任した。

 オリックスは買収にあたり「グループの国内外の営業ネットワークや企業経営ノウハウ、強固な財務基盤などを生かし、三徳船舶と共に収益性向上と事業成長を図る」としている。

引用至《日本海事報》【速報】2024年02月19日

LNG船、船腹需要に影響か。米国輸出許可停止、1億トン分 計画遅延も

米国のバイデン政権が打ち出したLNG(液化天然ガス)輸出許可の一時停止の影響が注目されている。輸出許可済みのLNGプロジェクトは影響を受けず、中東のカタールからの供給拡大も見込まれるため、市場への影響は限定的とみられる。だが、新規プロジェクトの稼働が遅れれば、船腹需要に影響する可能性がある。

 日本エネルギー経済研究所は5日、米国のLNG輸出許可一時停止の影響などをテーマにウェビナーを開催した。

 その中で資源・燃料・エネルギー安全保障ユニットガスグループの柳沢崇文主任研究員は「2026年以降に立ち上がる予定の約1億トン分のLNGプロジェクトが影響を受ける可能性がある」と指摘した。

 影響を受ける可能性があるプロジェクトには、「コモンウェルスLNG」「CP2LNG第1期」など10件(表の 1.、 2.)を挙げた。供給能力は合計で年間1億1300万トン規模に上る。

 「CP2LNG第1期」は、米ベンチャーグローバルLNGが主導するプロジェクト。日本の発電大手のJERAやINPEXが長期購入契約を結んでいる。同プロジェクトについて、柳沢氏は「審査が遅延する可能性が大きい。FID(最終投資決定)が遅れるリスクもある」と述べた。

 JERAとINPEXは同プロジェクトから、それぞれ年100万トンのLNGをFOB(本船渡し)契約で購入する。LNG船の確保も進めているとみられる。引き取り開始時期が遅れれば、海運会社との調整が必要になる可能性もある。

 バイデン大統領は1月26日、エネルギー省(DOE)によるLNG輸出許可の判断を一時停止すると発表した。停止期間は審査基準の見直しが完了するまでとしている。

 米国から自由貿易協定(FTA)を結んでいない国にLNGを輸出する際は、連邦エネルギー規制委員会(FERC)の承認を得た上で、DOEの審査を受ける必要がある。

 今回のDOEによる輸出許可の一時停止は、現行の審査基準は策定から5年近くが経過し、LNG輸出に伴う米国内のエネルギー費用上昇の可能性やGHG(温室効果ガス)排出の影響を十分に考慮できていないことが理由だ。

 DOEも声明を発表。輸出許可済みの年間3・5億トン分のLNGプロジェクトは影響を受けず、欧州やアジアの同盟国への供給能力にも影響はないと説明した。

 輸出許可済みの3・5億トンは、稼働済みの事業が約1億トン、表の 3. 4. 5.の18件のプロジェクトの計約2億トン、メキシコLNG設備経由の輸出が約0・5億トン。

 米国は現在、年間約1億トンのLNG輸出能力を持つ。23年は豪州やカタールを抜き世界最大のLNG輸出国になったとみられる。さらに、建設中のプロジェクトが稼働すると30年までに輸出能力はほぼ2倍になる。

 柳沢氏は今回の輸出許可一時停止を受けて「国内向け政治メッセージの意味合いが強い印象だ」とした上で、「米国のLNGプロジェクト開発の不透明感が増す」と言及。米国産LNG購入の消極化、新規プロジェクトへの投資の停滞などの影響が考えられるとした。

 米国以外のLNGプロジェクトへの影響については、「カナダの案件にアジアの買い主からの需要が増す可能性がある。その他地域のプロジェクト開発にも追い風になる可能性がある」(柳沢氏)。

 LNG市場への影響に関しては、「カタールのLNG増産計画もあり、現時点で市場への影響は限定的」と予測。ただ、「輸出許可の一時停止の期間によって影響は変わってくる」との見方を示した。

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